第84話 吸血鬼の館
次の日。
「うー、頭痛いー」
そんな情けない声を出すタバサ。
「お酒の飲み過ぎは良くないですよ。気をつけてください」
パレットはそう言った。
「あはは、そうだね。結構言われる事多いんだけどね……」
タバサはそう言って、恥ずかしがった。
「アマリアよ、本当に行くのか?」
長老は不安そうだ。
「はい長老。私も旅に出てみたいと思いまして」
アマリアはそう言った。
「このお二人ならばまあ、安心だが。パレットさんとタバサさん、よろしいので?」
長老は聞いた。
「私は良いですが」「私も良いですよ」
パレット、タバサはそう答えた。
「ふむ、まあそういうことなら。アマリア、お二人に迷惑かけるんじゃないぞ」
長老はそう言った。
「ええ」
アマリアはそう答えた。
「そろそろ行きましょうか」
パレットはそう言った。
「ちなみに、どこへ行くんですか?」
アマリアは聞いた。
「とりあえずはカヤだね。行ったことある?」
タバサは聞いた。
「そりゃありますよ、近所ですし。馬鹿にしないでください!」
ふくれっ面になるアマリア。
「ハハハ、カヤならアマリアのほうが詳しいでしょうな。それではお元気で」
長老は言った。
パレット、タバサ、アマリアの三人は、山を下り始めた。
険しい所もあるが、アマリアはこの山に慣れている。的確に下れるところを選んでいく。アマリアの案内があれば大した問題はない。
山も下るにつれて険しさが緩和され、穏やかな緑の世界へと変わっていく。たくさんの木々、川のせせらぎが聞こえる自然豊かな土地だ。
「へえ、良い所だね」
タバサはそう言った。
「そうですよね。このあたりは好きですよ、私」
アマリアは言った。
その時天気が急変し、雨となった。空が暗くなる。
ザー、と降る雨。雷も鳴っている。
「ひい、雨か……。まあ、山の天気は変わりやすいと言うからね」
タバサはそう言った。
「おかしいですね。今日は晴れるって長老様も言っておられたのに」
アマリアは不思議そうにしている。
「あそこに家があるみたいだよ。雨宿りさせてもらおうか」
パレットはそう言った。
家に入った。家は大きく、館という感じか。大きな扉を中へ。
陰鬱な感じがある。嫌な予感がする。
『調査』
パレットは能力を使った。
調査結果:アンデット族『ゾンビ』の住む館です。速やかに脱出すべきです。
「逃げた方が良さそうだね」
パレットは言った。
「扉が開かないぞ!」
叫ぶタバサ。ガンガンと扉を叩くが、開きそうにはない。
もの凄い数のゾンビが現れた。肉体がドロドロに溶けている気味の悪い姿だ。ウーウーと声を上げている。
「ひああああああ! もう駄目えええええええ! こんな所で終わりだなんてええええええ!」
狂乱し泣きわめくアマリア。
「あー、落ち着いて……。《光の精霊》よ! 《ディスペル》!」
パレットは魔術を使った。たくさんのゾンビが浄化され、消滅する。
それでも、まだゾンビの数は多い。
「どうってことはないさ。《光の精霊》よ! 《ホーリーライト》!」
強烈な聖なる光がタバサから放たれ、ゾンビたちは消滅した。
「す、凄いですね。お二人は。神官なのですか?」
聞くアマリア。
「違うけど」「違いますね」
タバサとパレットは言った。
「へえ、そうなんですか。それにしても」
アマリアはそう言ったが。
キルキルキル、と気味の悪い笑い声が聞こえた。
バサバサバサ、という羽の音。
「な、何なんですか? どうなってるんですか?」
混乱するアマリア。
その時、蝙蝠たちが集まり、美しい男が現れた。
「ようこそ、我が館へ」
優雅に挨拶する男性。
「素敵な方ですが、何者なのですか?」
アマリアは聞いた。
「ここは私の館。私はヴァンパイア。ピエールと申します。以後お見知りおきを……」
ピエールはそう言った。
「わざわざご苦労なこった。名前なんてどうでもいいじゃん。どうせ敵なんだし」
タバサは警戒している。剣を抜いた。
「御心配には及びません。私は女性には優しくする主義でね」
笑う吸血鬼。
「まあそうなんでしょうけどね……」
パレットは魔剣を抜いた。
「ヴァンパイアさんの奴隷に……! それはそれでちょっと楽しいかも」
わりとドМなアマリア。
「お二人は反抗的なようですね。抵抗できないように痛めつけてあげましょう」
そう言ってヴァンパイアは、たくさんのゾンビを召喚した。
また現れるゾンビたち。キリが無い。
「《炎と風の精霊》よ! 《ファイアストーム》!」
タバサは魔術で、ゾンビを一掃する。
「たあ!」
パレットはヴァンパイアに突撃。魔剣で斬りつけた。
「ぐああああああああ!」
叫ぶヴァンパイア。
「ば、馬鹿な!? 肉体を持たないこの私が……!?」
驚く吸血鬼。
「まあ、私は魂そのものを激しく損傷させるからな。ヴァンパイアなんぞすぐに殺せるぞ」
魔剣フレイヤはそう言った。
「お、おのれ! 《闇の精霊》よ!」
叫ぶヴァンパイア。
「おっと。死んでもらいます」
そのまま激しく斬りつけまくるパレット。
「ぐう! 《ダークストーム》!」
何とか魔術を放つヴァンパイア。闇の嵐が巻き起こり、パレットは吹き飛ばされた。
「くう……」
態勢を立て直すパレット。
「やっぱり、悪い人なんですね。《風の精霊》よ! 《ウィンドカッター》!」
風の刃を放つアマリア。ヴァンパイアに命中する。
しかしヴァンパイアは、たくさんの蝙蝠となって飛び、離れた場所でまた人間のような形態に戻った。
「死ね! 愚か者どもよ! 《ポイズンアロー》! 《デス・レイ》!」
凄まじい破壊力の魔術を連発する吸血鬼。
パレットが何とか防ぐが、このままでは持たない。
「私の力を引き出せパレット。《魔剣開口》だ」
フレイヤは言った。
「……《魔剣・開口》」
パレットは言った。
フレイヤは刃の部分が分かれていき、パレットの腕にグサグサと突き刺さっていく。
「うあああああああ!」
凄まじい痛みに叫ぶパレット。
そして魔剣と腕は同化した。
「う、その魔剣、まさか、冥府の王の!?」
驚く吸血鬼。
「冥府の底へと、還れ!」
パレットは巨大な鎌を作り出し、吸血鬼の首を刎ねた。
その時館は崩れ、消えていき。
空が晴れた。




