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万色のパレット  作者: 秀一
三周目 空飛ぶパレット
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第68話 工業都市 ボリッドメント

 山岳地帯を抜け、パレット達は、山と海に囲まれた国へと入った。

 

 工業都市、ボリッドメント。この世界では、中心部に位置する重要な都市国家だ。

 

 この都市は人間の都市だが、ドワーフも多い。共存している。しかし非常に戦闘的な国家でもあり、しょっちゅうそこいらじゅうと戦争することから、周辺国家からはとても嫌われている。

 

 この都市に城壁は無い。来るもの拒まず。しかしスラム街も多く危険な場所で、わざわざ訪れる旅人は少ない。

 

「さて、どうしたものかな」

 グラシアはそう言った。

 

「ここはあまりいい街ではないですからね。どうするんですか? パレットちゃん」

 エステルが聞いた。

 

「まあ何はともあれ、宿を見つけましょう。まさかスラム街で寝るわけにもいかないでしょう?」

 パレットはそう言った。

 

 ……まあ、最悪スラム街で寝ることもできなくはないだろうが、身ぐるみはがされるだけならまだマシな方だろう。常識的に考えてそれはありえない。凄く強いとは言っても女性三人なのだ。

 

 パレット達はスラム街を抜け、高級住宅街へと入った。大分様相が変わって来る。ここまで来ると警備の私兵などもおり、治安も良い。その代わり、貧乏人では暮らせない。

 

「格差都市というわけですね……」

 パレットはそう言った。

「まあな」

 グラシアは答えた。

 

 ほっつき歩く三人。そこらじゅうからじろじろと見られている。警戒されているようだ。

 

「こんな所をうろうろしても仕方ないですね。どこか気分の良くなるところはありませんかね?」

 パレットは言った。

 

「お前は銃とか大砲とかが欲しかったんだろ? ドワーフ街へ行こうぜ」

 グラシアは言った。

「ん? そりゃ何故?」

 パレットは聞き返す。

 

「はあ? そういうのを作ってるのはドワーフなんだよ。人間はそんなもの作らないぞ」

 グラシアは言った。

「へえ? そうなんですか。そりゃちょっと意外です」

 パレットはそう言った。

 

「ドワーフって、結構不思議な物も作りますからね」

 エステルは言った。

「ふーん、ドワーフというのも面白い人たちですね」

 パレットはそう言った。

 

 ドワーフ街は西にある。湾をぐるっと回って、西へ。

 海には島がいくつか見える。

 

 ドワーフ街へついた。大分雰囲気は変わり、鍛冶屋ばかりだ。カン! カン! と剣を鍛える音が聞こえる。

 

 グラシアはそのうちの一軒に入った。

「どうも、ご無沙汰してるね」

 グラシアは言った。

「おや、グラシアさん。どうしたんです?」

 ドワーフの一人が手を止めていった。

 

「ああ、悪いね。この娘が、銃とか大砲に興味があるっていうからさ」

 グラシアは言った。

「それなら、谷底の兄妹が作ってるけど。あんなもん糞の役にも立たないぞ」

 ドワーフは言った。

「ありがとさん」

 グラシアは言った。

 

「谷底ですか」

 パレットは言った。

「あまりいい場所とは言えませんね」

 エステルはそう言った。

 

 果たして谷底にその工房はあった。海が近く、波がかぶれば沈みそうだ。

 

「ごめんくださーい」

 挨拶するパレット。

 

「はい?」

 現れたのはドワーフの少女。小さい。可愛いけど。

 栗毛を巻いて小さな顔だ。汚れたエプロンを着ている。

 

「銃とか大砲に興味があるんですが」

 パレットは言った。

 

「へえ、珍しい方ですね。どうぞどうぞ」

 少女はそう言って、案内してくれた。

 

 奥に行くと、さらに大砲やら銃やら、得体のしれない人形やらもあった。どれもデカイ。

 

 そこには、ドワーフの男が寝ていた。

 

「お兄ちゃん、お客さんだよ」

 少女は言った。

「ふえ? 客? 珍しいな……」

 若いドワーフはそう言って目を覚ました。寝てたこともあるが栗毛の髪もぼさぼさで生命力に欠ける感じのドワーフだ。

 

「頼りなさそうな奴だな。コーヒーでも飲んだらどうだ?」

 グラシアは言った。

「そんな高価なものは飲めねえよ。金がねえんだ金が」

 ドワーフの男は言った。

「もう、お兄ちゃんが研究に使うからだよ! 結局銃も大砲も全然売れないじゃん」

 少女は言った。

「うるせえ! くそ、何でこんなことになっちゃったかなあ……」

 落ち込む男。

 

「銃とか大砲って凄く強い気がするんですが、何か駄目なんですか?」

 聞くパレット。

「うーん、なんていうか、弾が真っすぐ飛ばないし、すぐ壊れちゃうんだよね」

 少女は言った。

「そこが問題なんだよな……」

 男は言った。

 

「見せてもらっても?」

 パレットは聞いた。

「ああ、好きにしな」

 男は言った。

 

 パレットは銃を観察した。筒の後背部が安定していないようだ。

 

「これ、ちゃんと後ろが締まってないんじゃないですか」

 パレットは言った。

「そうなんだよね。どうすれば良いかな?」

 少女は聞く。

「ネジで締めれば良いと思うんですけど」

 パレットは言った。

「ネジ? 何それ?」

 聞く少女。

 

「ネジ?」「ネジ?」「ネジ?」

 ネジを知らない人たち。

 

「こう、ぐるぐるって螺旋を描く感じの構造ですね。ライフリングとかにも通じるんですけど」

 パレットは言った。

「ライフリング??」

 混乱するドワーフ。

 

『ネジの生成』

 パレットは能力を使った。

 

 果たしてネジが登場した。

 

「これに対応するように内部に切れ込みを入れればいいんですよ」

 パレットは言った。

「な、なるほど。そうすりゃしっかりロックできるわけか」

 ドワーフは言った。

「そんな手があったんだね。全く気付かなかったよ」

 少女は言った。

 

「パレットはどうしてそんな技術を?」

 グラシアは聞いた。

「技術って言うか……。まあ、技術なのかな? 前世の技術だね」

 パレットは言った。

「パレットちゃんの前世ってもしかして凄いの?」

 エステルは聞く。

「凄いかは知らないけど。魔法とかありませんでしたし」

 パレットはそう言った。

 

「ありがてえんだが、俺たちは資金不足が極まっていてな。銃の開発ばかりはしてられねえんだよ」

 ドワーフの男は言った。


「あ、それなら資金上げますよ。はい」

 そう言って金貨を5枚ほどあげるパレット。


「は?」「は?」

 混乱するドワーフ二人。

 

「いやおかしいでしょ! 金貨ってのは一枚でも家が買えるぐらいの価値があるんだよ!」

 少女は言った。

「そ、そうだぞ! 俺たちお前らに何もしてねえだろ! 何かの陰謀か!?」

 混乱する男。

 

「いやいや。銃とかを研究してくれたら、魔王との戦いに役に立ちますしね。ていうか、今夜の宿が無いんで泊めてもらえません?」

 パレットは言った。

 

「まあ、ボリッドメントは物騒ですからね。こんなところでいいなら何日でも泊めてあげますけど……」

 少女は言った。

「か、変わった奴だな。まあ、宿に貸すぐらいなら構わねえけどよ。ちょっと汚れてるかもしれんけどな」

 男は言った。

 


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