第5話 魔術
それから、三年の月日が流れた。
パレット、ニーナ、ドリュー、メロディの4人は、すっかり仲良しになった。
クラスも別にはならない。割とどうでもいいらしく、適当に一緒にしてもらえるようだ。
「さあ、みんな座って~」
女性の先生が言う。
しかしなかなか座らない生徒たち。すっかり慣れちゃってなめられているのだ。
「むう。よーし!」
先生は怒った。
「《氷の精霊》よ! 《ブリザード》!」
先生が魔術を詠唱した。
凄まじい吹雪が教室に巻き起こった。
「ひいいいいいいいいいいいい!」
「きゃあああああああああああ!」
「寒いいいいいいいいいいいいい!」
悲鳴を上げまくる生徒たち。
「これが『魔術』よ。今日から教えるから、ちゃんと座りなさい」
そういう先生。
渋々座る生徒たち。従わないと殺されそうだ。
(魔術か……)
パレットは感慨を持っていた。ここは異世界。とはいえ、魔術を見るのは初めてだ。
(使えるのかな? うーん、わかんないな……)
パレットはもちろん魔法の知識などない。何もわからない。
「いい? 魔術を覚えるには、精霊との契約を果たす必要があります。精霊はどこにでもいるから、いつでも契約できるわ。ただし、そう簡単にはいかないの。人間には特性があって、特定の精霊にしか契約できないわ。そして、一度契約すると他の精霊とは契約できなくなるわね」
先生は言った。
「精霊とは誰でも契約できるんですか?」
聞くドリュー。
「誰でもとはいかないわ。生まれつき魔力の高い人間で無いとそもそも無理よ。どちらかと言えば、女性の方が魔力が高い傾向があるわね」
先生は言った。
「えー、なんだそりゃ。きたねえじゃん」
ドリューは言った。
「別に汚くはないでしょ。男の子のほうが力は強くなるんだしさ」
メロディは言った。
「二つ以上の精霊と契約することはできないんですか?」
聞くパレット。
「ほぼ不可能ね。とはいえ、そう言う例もあるわ。たくさんの精霊と契約した例もあるわよ。ただし、そんなことをできる人は一握りだし、それがベストかどうかも難しい所ね。基本的には、一種類と契約すると思った方が良いわ」
先生は言った。
「契約にデメリットは?」
ニーナが聞いた。
「ほぼ無いわよ。ただあまり多くの精霊と契約すると体に負担がかかるかもね。まあ、一種類なら問題ないわよ」
先生は言った。
先生は不思議な器具を取り出した。魔法陣の上に様々な色が付けてある。
「『試しの魔法陣』よ。この上に手を出して、魔力を込めなさい」
そう言って、先生は手を出し、魔力を込めた。
水色に光り、キーン! という音を出した。
「氷の精霊だとこうなるわね。さ、順番にどうぞ」
魔法陣を回していく先生。
みんなでワイワイと力を試していく。
「お、俺は炎だな」
「私は森だって」
「あれ? 反応しねえぞ」
ドリューには反応してくれない。
「ドリュー君には魔術の才能がないみたいね」
先生は言った。
「ひでえ! くそお!」
叫ぶドリュー。
「まあいいじゃん。純粋に剣を磨けばいいよ、ドリュー」
そんなことを言うメロディ。彼女が手を出すと、青色に強く輝き、ゴポゴポと音がした。
「あら、メロディちゃんは《水の精霊》みたいね。しかもかなり強い魔力ね。もう開発しているの?」
聞く先生。
「まあ、少しは」
メロディは言った。
「そうですか。では次へどうぞ」
先生は言った。
そして一人、また一人と続けていく。
ニーナが手を出すと、白く輝いた。こちらもかなり強い光だ。
「ニーナさんは《光の精霊》ね。じゃ、残りはパレットちゃんだけね」
先生は言った。
パレットが手をかざすと……。
全ての色が輝き、キラキラと光った。
「ん!? これは……」
驚く先生。
「どうなんですか? これ」
パレットは言った。
「んー、パレットちゃんはまだ属性が定まってないみたいね。どんな精霊とも契約できそうね」
先生は言った。
「はあ? なんだそりゃ。ずるいじゃねえか」
ドリューは言った。
「ただ、本当に全部契約するのは無理なのよね。パレットちゃんは何か好きな精霊とかある?」
聞く先生。
「いや、そう言われましても。そもそもどんな精霊が?」
聞くパレット。
「んー、まあ説明しても良いけど、教科書も渡すからそれで学びなさいな。どの精霊と契約するかはよく考えて決めてね」
先生は言った。
授業が終わった後。
ニーナと二人になったパレット。
「ところでさニーナ。私の魔術関連ってどうなってるわけ?」
聞くパレット。
「ああ、そこ気になりますよね。ていうか、パレットさんって、能力全然使いませんよね。何でです?」
聞くニーナ。
「いや、能力で勝つとかつまんないじゃん。私は自分の力でどうにかしたいんだよ」
パレットは言った。
「縛りプレイというわけですか? まあそれもいいですけどね。ちなみに、魔術に関しては『パレット』で宣言すれば使えますよ。普通に精霊と契約しても良いですけどね。パレットさんなら、全ての精霊と契約しても全然問題ないので」
ニーナは言った。
「……やっぱり色々とチートではあるんだね。まあ良いけどさ」
パレットは言った。
「好きなだけ俺ツエーを楽しんでもらっても良いんですけどね。まあ、その辺はパレットさんに任せますよ」
ニーナはそう言った。