第54話 魔王パヴリナ
「私の妹は、本当に良い子でした……」
エステルは語り始めた。
エステルの妹の名前はパヴリナ。明るく元気、美しく、誰とでも仲良くなる。
絵に描いたようなお姫様。誰もが彼女を愛し、そして彼女もまた、全ての人を愛した。
ある時パヴリナは恋をした。相手はセラの騎士。二人は愛し合った。
しかしパヴリナは湖の国へと政略結婚に出された。二人は別れざるを得なかった。
……そして。
もう誰も、彼女を愛してはくれなかった。湖の国の政治状況は複雑で、彼女は邪魔者として扱われた。拷問もされた。
不遇の日々。そこから抜け出すこともできなかった。
彼女は絶望した。
彼女には特技があった。薬の作成。そして、毒の作成。
自殺するため、たくさんの毒を作った。そして彼女は思った。この毒で殺そうと。自分を痛めつける人たちを、許せない人たちを殺してやろうと。
そして彼女は実行した。
みずからの夫を。そしてライバルたちを。
一人ずつ確実に。目立たぬように。
たくさんの人が死に、パヴリナは湖の国の支配者となった。
しかし彼女は満足しなかった。もっとたくさん殺したい。この世界を滅ぼしたい。
その彼女の願いに応えるように、湖の国の北、エンドポイントには呪われし力があった。
魔剣。
その力を手にしたものは、世界を滅ぼす力を得る。
そして彼女は手にした。
決して手にしてはいけない力を。
そして彼女は魔王となり、ゴーレムたちを率い、世界に宣戦布告したのだ。




