第49話 ドワーフの丘 アイジール
パレット達は、アイジールへと辿り着いた。
そこは丘地帯で、たくさんの洞穴がある。ドワーフたちは、そこで採掘や鍛冶、もしくは宝石細工なんかを行って生計を立てている。
一応、葡萄や柿のような果物栽培も行われているが、アイジールは丘地帯が多く、農業に適さない場所が多い。だからドワーフたちは、セプテッタやカヤの人間と交易し、食料を輸入しているのだ。
「どうも、旅の方」
入口でドワーフに話しかけられた。アイジールは大きく、城壁などは無いが、警備はされている。
「どうも。アイジールへの入国をしたいのですが」
ブラックは言った。
「何の用です?」
ドワーフは聞いた。
「王にお目通り願いたい。重要な外交交渉がある」
ブラックは言った。
横のドワーフと相談するドワーフ。
「何の外交交渉です?」
警戒感を露わにするドワーフ。
「同盟ですよ。べアール王国とね」
ブラックは言った。
「ふうむ……」
悩むドワーフ。
「まあ、そう言う事なら、王も喜んでお会いになられるとは思いますが……」
他のドワーフが言った。
「とりあえず、王城までご案内しましょう。面倒事を起こさないでくださいよ」
ドワーフは言った。
アイジールは大半が洞穴の中にある。その中に、都市としてのあらゆる機能が備わっている。食料品店、鍛冶屋、酒場。宝石屋、アクセサリー屋、駄菓子屋。
目移りするが、今は構っていられない。
「ここから王城になります」
門番のドワーフは言った。王城には、更に屈強なドワーフが構えていた。
「俺はガルム。何用か」
ガルムは聞いた。
「ガルムさんよ、王にお目通り願いてえんだが」
コンラートが言った。
「コンラートか。はぐれ者が何の用だ」
ガルムは言った。
「俺じゃねえよ。ここの王子様が会いたいんだとさ」
コンラートは言った。
「王に会いたい。ゴーレムの事もある。この国はどういう認識なのか?」
ブラックはそう聞いた。
「ゴーレムか。確かに、セプテッタの連中は慌ててたな。まあ、どちらにせよ俺じゃわからん。王に伝えてこよう」
そう言ってガルムは、のっしのっしと歩いていった。
後は他のドワーフが固める。
「あのガルムさんってのは強いんですか?」
パレットは聞いた。
「ああ。最強のドワーフだ。王以上のな」
コンラートはそう言った。
「確かに、凄い筋肉だったな」
ブラックは言った。
「筋肉は良いけどさ、頼りになるの?」
シオーネは聞いた。
「俺は知らんぞ」
コンラートはそう言った。
しばらくすると、ガルムが戻ってきた。
「王が会われる。ブラック王子、護衛を二人連れてこい」
ガルムはそう言った。
「わかった。パレット、コンラート、頼むぞ」
ブラックは言った。
「はい」「おう」
ブラック、パレット、コンラートの三人は奥へと進んだ。
中は狭くはない。壁もところどころ飾られている。
奥地には、王が居た。玉座に座る王。甲冑で身を固め、様々な武器を置いている。いかにも強そうだ。
「テメエがべアールの王子か。ひょろそうだな」
王はそう言った。
「すいませんね。王よ、速やかに同盟を結びたいのだが」
ブラックは言った。
「おっと。慌てるんじゃねえ。まあ、同盟は結ぶさ。別にデメリットはねえしな。ただ、メリットがあるのかは怪しいねえ」
王は言った。
「と、言いますと?」
ブラックは聞いた。
「単純な話だろうが。べアールは助けてくれるのか? 無理だろう。遠いしな。軍勢を用意するには金も時間もかかる。今からミングスに行っても間に合わねえぞ」
王はそう言った。
「ミングスの状況はそれほど深刻なのですか?」
パレットは聞いた。
「ああん? なんだこの小娘は」
王は言った。
「パレットは中々優秀な魔術師ですよ。王よ、ミングスはまずい状況なので?」
ブラックは聞いた。
「まずいなんてもんじゃねえ。しきりに救援を求めてはいるがな。うちも先遣隊を出したがほぼ全滅した。あのゴーレムはつええ。俺たちでもとてもかなわん。人間にどうなる相手では無いぞ」
王はそう言った。
「残念だが、魔術も通じねえみたいだしな」
ガルムはそう言った。
「そうですか……。では、我々はどうすればいいでしょうか?」
ブラックは聞いた。
「知らねえよ。でも、ひとまずセプテッタに行こうと思ってる」
王は言った。
「王自ら行かれるのですか?」
コンラートは聞いた。
「そうだ。このままではどうしようもない。ひとまず俺が行って、できれば活路を開きたいんだ」
王は言った。
「危険ではないですか?」
パレットは聞いた。
「危険は承知の上だよ、お嬢ちゃん。お前らはさっさとべアールにでも帰って、軍勢の準備でもするんだな。間に合わねえだろうけどさ」
王はそう言った。
「そう言う事なら、我々も同行させては頂けませんか」
ブラック王子は言った。
「何だと? それこそ危険だろう」
王は言った。
「そりゃそうですけどね。軍勢を出すにしても、セプテッタの許可が無いと話にならんでしょう。侵略しに来るわけじゃないんだから」
ブラック王子はそう言った。
「ま、そりゃそうだな。しかし俺たちはテメエらの面倒なんざ見ねえぞ」
王は言った。
「構いませんよ。パレットもそれで良いよな?」
王子は聞いた。
「もちろん」
パレットは答えた。
「変わり者だな。まあそういうのは嫌いじゃねえ。それじゃあ、俺たちと共に行くか」
王は言った。
「ただ、危なくなれば我々は逃げますよ。ドワーフの為に死ぬというのは流石にね」
ブラックは言った。
「まあ、そりゃそうだわな。気にするな。自分の身は自分で守らねえとな」
王はそう言った。




