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万色のパレット  作者: 秀一
二周目 家出少女パレット
36/99

第35話 対岸の都市 シーベルエンダ

 花の街グァーサの対岸には、シーベルエンダという街がある。

 その距離はわずかだ。つまり、海峡になっている。有事には、海峡を鎖でつないで船が入れなくすることもできる。

 

 もちろん、グァーサとシーベルエンダは古くからの同盟関係だ。ただし、グァーサが民主主義なのに対して、シーベルエンダは一応、王制を採っている。と言っても、それほど威圧的な政治を行っているわけではない。古くはセラの騎士の一族がシーベルエンダの先端にある岬に住み着き、城塞を築いたことに始まる。

 

 つまりグァーサもシーベルエンダも、その城塞に守られているわけである。城塞はこの2つの街に支えられている。持ちつ持たれつというわけだ。

 

「さて、ひとまずシーベルエンダの城塞に行かねばなるまい」

 ブラック王子は言った。

 

「そうですね。面倒をおかけして申し訳ありません」

 パレットは謝った。

「気にするな。ただ、ラーシュ殿も向こうに我々の事を伝えてくださったようだ。迅速に行こう」

 ブラックは言った。

「そうですね。急ぎましょうか」

 パレットは言った。

 

 そんなわけで、6人は船に乗った。

 船は大型のキャラベル船だ。立派な船。世界の果てまで行けそうだ。

 

「出航だ!」

 船乗りが言った。

 

 船長や操舵士、航海士なども居る。船の航海に必要なメンバーは揃っているようだ。

 もちろん船は帆と風の力で進んでいく。

 

 シーベルエンダはすぐそこだ。別に船なんかなくても泳いで行ける距離だ。

 

「到着ですよ。これじゃあ、航海になんねえけどな!」

 船長が言った。

 

 シーベルエンダ港へと上陸する。城塞へはすぐだ。

 

「すぐに城塞に行きます?」

 シオーネが聞いた。

「寄り道してる暇はない。行くぞ」

 ブラックは言った。

 

 城塞に辿り着く6人。門の前で、ラーシュが待っていた。

 

「おお、ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」

 ラーシュは言った。

「わざわざお待ちいただいたので?」

 ブラックが聞いた。

「まあな。中で待つのも暇だったしな」

 ラーシュは言った。

 

 全員、すぐさま城塞へと入った。城塞の中は狭く、それほど複雑な構造はしていない。城塞は普通、複雑であるべきだが、この城塞はスペースが不足しているのだ。

 

 玉座へとたどりつく7人。そこには、女性が居た。

 

「やっと来たのか。余は待ちくたびれたぞ」

 女性はそう言った。20代ぐらいだろうか。銀色の髪に鈍く輝く瞳。これまでパレットが見てきた人とはまた違う美しさだ。種々の宝石で美しく飾られた緑色のドレスを着ている。

 

「申し訳ありません女王陛下。色々トラブルがございまして」

 ブラックは言った。

「ふむ。まあ良い。それで何用じゃ?」

 女王は聞いた。

「今や北部からの脅威は現実のものとなっております。今すぐにも軍事同盟の締結を」

 ブラックは言った。

 

「もちろんそれは構わんよ。しかし、我々が危機となればべアールは救援を出してくれるのであろうな?」

 女王は聞いた。

「もちろんです。明らかにそういう話ですので」

 ブラックは言った。

「ならば良い。むしろ、こちらから何も出来ずすまないな」

 女王は言った。

 

「ありがとうございます。それでは、文書を」

 ブラックは文書を取り出した。

「うむ」

 女王はそれにサインをしていく。

 

「確かに。それではこれで……」

 ブラックは下がろうとするが。

「ああ、待て待て」

 女王は止めた。

「何か?」

 ブラックは聞いた。

 

「私は暇なのだ。退屈なのだ。何か面白い話を聞かせろ」

 無茶を言う女王陛下。

「そんな無茶な……」

 ブラックは困った。

 

「面白いかどうかはわかりませんが、今回遅れた理由の話ならば」

 パレットは言った。

「ほう? それは確かに興味があるな。少女よ、聞かせてみよ」

 女王は言った。

 

 そんなわけで、病気の母親を治した話を聞かせるパレット。

 女王は興味津々だった。

 

「へえ、大したものだな。そういうことなら、遅れたことも当然だな」

 女王は納得した。

「ありがとうございます。わかってもらえて良かったです」

 パレットは言った。

 

「私もできれば、こんな城塞の防御なんかじゃなくて、冒険に出たいんだけどなー」

 そんなことを言う女王陛下。

 しかし周りの大臣や騎士たちは首を振りまくる。

「やれやれ。そうもいかないようだ。お前、名は?」

 聞く女王。

「パレットです」

 パレットは言った。

 

「良い名だ。パレットよ、そのゴーレムとかを倒したらまたここに来てくれんか。話を聞かせて欲しい」

 女王は言った。

「喜んで」

 パレットは言った。

 



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