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万色のパレット  作者: 秀一
二周目 家出少女パレット
35/99

第34話 繋がる想い

「パレット。せめて一言言ってから出て行ってほしいものだな」

 ブラック王子は苦言を呈した。

 

 聞けば、ブラック達は旅立とうとしたが、パレットとマリアがいないので探していたようだ。

 

「ごめんなさい。ただ、病気の人を放っておけなくて」

 パレットは言った。

「気持ちはわからないではないがな。病気の人なんてたくさんいるだろう」

 ブラックはそう言う。

「そうだけど、悪い状態みたいだったから放っておけなくてさ」

 パレットはそう言った。

 

「まあいいじゃん。パレットちゃんが責められることでは無いよ」

 ターヴィは庇った。

「そうだぞ。優しいじゃねえか」

 コンラートは言った。

「まあ、そこまで急ぐ旅では無いでしょう? 王子」

 シオーネはそう言った。

 

「急ぐ旅ではあるんだがなあ。まあとにかく、このまま放っておくわけにもいくまい。その母娘のところに案内してくれ」

 ブラックは言った。

 

 6人は母娘のところへと行った。

 

「あ、お姉ちゃん!」

 女の子が叫び、こちらへ来た。

「お母さんの調子は?」

 パレットが聞いた。

「大分良くなったよ。ありがとう! お姉ちゃん!」

 少女はそう言った。

 

 母親の部屋に行くと、彼女は本を読んでいた。

 ぞろぞろと入っていく6人。

 

「あら。ありがとうね、お嬢ちゃん」

 母親は言った。

「体は大丈夫ですか?」

 パレットが聞く。

「ええ。大分楽になったわ」

 母親は言った。

 

「こうして見ると、そんなに悪そうには見えないですが」

 ターヴィは言った。

「とんでもない。さっきまで死にかけてたんですよ。この子の薬のお陰です」

 母親は言った。

 

「でもまだ完全に治ったとは言えないと思うんですよね。薬をたくさん作ったので、飲んでください」

 そう言って、パレットは薬が大量に詰まった薬瓶を5、6個置いた。一つに100以上はありそうだ。

 

「まあ!? こ、こんなにたくさん。でも申し訳ないですが、私はお金が……」

 落ち込む母親。

「お金なんて良いですよ。ただの人助けですので」

 パレットは言った。

 

「ありがとうございます。しかし、何故助けていただけるので?」

 聞く母親。

「私も何だかんだ色んな人に迷惑かけてきましたし。世の中持ちつ持たれつ、お互い様ですから」

 パレットは言った。

「へえ? そうなんだ。変わった人ね。ありがとう。この御恩は忘れません……、あ、そうだ」

 母親は言った。

 

 そして本を差し出す。

 

「大したものでは無いけど、これを貰ってくれないかしら」

 母親は言った。

「これは?」

 パレットは聞く。

 

「私が書いた薬百科事典よ。私は元々、西部で薬剤師をしていたのよ」

 母親が言った。

「そうなんですか? しかし、そのように貴重なものを……」

 マリアはそう言った。

 

「良いんですよ。どうせ死んだら使えませんし。今回のお礼です。少しは、役に立てると嬉しいのですが」

 母親は言った。

「いえ。知識は何より貴重なものですからね。ありがとうございます。大切にしますね」

 パレットは言った。

「ありがとう。あなたのような人にこの本を渡せて、私も少しは世の中の役に立てたかもね……」

 そう言って母親は、また眠りに落ちた。

 


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