第34話 繋がる想い
「パレット。せめて一言言ってから出て行ってほしいものだな」
ブラック王子は苦言を呈した。
聞けば、ブラック達は旅立とうとしたが、パレットとマリアがいないので探していたようだ。
「ごめんなさい。ただ、病気の人を放っておけなくて」
パレットは言った。
「気持ちはわからないではないがな。病気の人なんてたくさんいるだろう」
ブラックはそう言う。
「そうだけど、悪い状態みたいだったから放っておけなくてさ」
パレットはそう言った。
「まあいいじゃん。パレットちゃんが責められることでは無いよ」
ターヴィは庇った。
「そうだぞ。優しいじゃねえか」
コンラートは言った。
「まあ、そこまで急ぐ旅では無いでしょう? 王子」
シオーネはそう言った。
「急ぐ旅ではあるんだがなあ。まあとにかく、このまま放っておくわけにもいくまい。その母娘のところに案内してくれ」
ブラックは言った。
6人は母娘のところへと行った。
「あ、お姉ちゃん!」
女の子が叫び、こちらへ来た。
「お母さんの調子は?」
パレットが聞いた。
「大分良くなったよ。ありがとう! お姉ちゃん!」
少女はそう言った。
母親の部屋に行くと、彼女は本を読んでいた。
ぞろぞろと入っていく6人。
「あら。ありがとうね、お嬢ちゃん」
母親は言った。
「体は大丈夫ですか?」
パレットが聞く。
「ええ。大分楽になったわ」
母親は言った。
「こうして見ると、そんなに悪そうには見えないですが」
ターヴィは言った。
「とんでもない。さっきまで死にかけてたんですよ。この子の薬のお陰です」
母親は言った。
「でもまだ完全に治ったとは言えないと思うんですよね。薬をたくさん作ったので、飲んでください」
そう言って、パレットは薬が大量に詰まった薬瓶を5、6個置いた。一つに100以上はありそうだ。
「まあ!? こ、こんなにたくさん。でも申し訳ないですが、私はお金が……」
落ち込む母親。
「お金なんて良いですよ。ただの人助けですので」
パレットは言った。
「ありがとうございます。しかし、何故助けていただけるので?」
聞く母親。
「私も何だかんだ色んな人に迷惑かけてきましたし。世の中持ちつ持たれつ、お互い様ですから」
パレットは言った。
「へえ? そうなんだ。変わった人ね。ありがとう。この御恩は忘れません……、あ、そうだ」
母親は言った。
そして本を差し出す。
「大したものでは無いけど、これを貰ってくれないかしら」
母親は言った。
「これは?」
パレットは聞く。
「私が書いた薬百科事典よ。私は元々、西部で薬剤師をしていたのよ」
母親が言った。
「そうなんですか? しかし、そのように貴重なものを……」
マリアはそう言った。
「良いんですよ。どうせ死んだら使えませんし。今回のお礼です。少しは、役に立てると嬉しいのですが」
母親は言った。
「いえ。知識は何より貴重なものですからね。ありがとうございます。大切にしますね」
パレットは言った。
「ありがとう。あなたのような人にこの本を渡せて、私も少しは世の中の役に立てたかもね……」
そう言って母親は、また眠りに落ちた。