第30話 花の街グァーサ
次の日は晴れたので、パレット達は北へと向かった。
山岳地帯を抜け、平野に出た。ここまでくれば、道はたやすい。
平野を歩き、グァーサの街へとたどり着いた。
そこは港町で、海と巨大な城壁と深い堀に囲まれている。正に鉄壁。
門の前には門番が居る。
「すいませんー」
パレットは話しかけた。
「冒険者の方ですか?」
門番は聞いた。
「ええ。入れていただけます?」
パレットは聞く。
「では、身分証明書を」
門番は言った。
「ああ、そういうのはちょっと。魔法学園の学生証ならありますが」
パレットが言った。
「お話になりませんな。お帰り下さい」
冷たい門番。
「ごめんなさい。私は地元民で」
マリアが言った。
「地元民? どちらの?」
聞く門番。
「リアトリス商会ですわ。聞いていただければわかります」
マリアは言った。
「まさか! ふむ、少々お待ちください」
門番は横の門番に何かを伝えた。その門番は内部へ走っていく。
「ここだと王子の威光も通じないんですかね」
パレットは言った。
「まあな。ここは自治都市だしな」
ブラックは言った。
しばらくすると、門番は男を連れて来た。その男がマリアを見た。
「お姉ちゃん。よくお戻りで」
男は言った。
「あらシェル。久しぶりね」
マリアは言った。
「本当にリアトリスの方でしたか。まさかグァーサ最大の商会の方とは……」
門番が言った。
「それで、入れていただけますよね?」
マリアが聞いた。
「もちろんです。ただ念のため、他の方々の身元も書いておいていただけますかな」
門番は言った。
パレット達は身元を書いていく。名前、住所、職業等。
「それにしても厳重だな」
コンラートが言った。
「民主主義である以上、自分の身は自分で守らねばなりませんからね」
マリアは言った。
手続きは終わり、6人はシェルと共に街へと入った。街の中はとても華やかだ。色とりどりの花が咲き乱れ、見たこともないような布や絨毯が所狭しと飾られ、様々な食品が売られ、かぐわしい香りに満ちている。
「ふわー、こりゃ凄いね」
驚くターヴィ。
「皆様はここは初めてで?」
シェルが聞いた。
「少なくとも、私はそうですね」
パレットは言った。
「左様ですか。ところでお姉ちゃんはどうしたの?」
シェルは聞いた。
「たまには実家に顔見せようと思ってね。まあ、ブラック王子と冒険するのも悪くないだろうけどね」
マリアは言った。
「へえ、王子様で?」
シェルはブラックに聞いた。
「一応な」
ブラックは言った。
リアトリス商会は、巨大な建造物だった。この館自体が城塞のようだ。実際、堀もある。もちろん、正面部分は一応店になっているようだが。
「凄い所ですね。ていうかこれで商売になるんですか?」
パレットは聞いた。
「ここは私達の住むところで、商売をするところでは無いんですよ」
シェルは言った。
「ふえー」
驚くターヴィ。
マリア達は商会へと入った。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
中のおっさんたちがマリアにそう言った。
「ただいま」
マリアはそう言った。