第29話 雨と話し合い
その後、パレット達は小人たちの洞窟に泊まった。
次の日は豪雨だった。とても旅立てない。
「この雨では無理ですな。ゆっくりしていってくだされ」
老人は言った。
小人たちの洞窟は狭いが、非常に複雑に精巧に作られている。
しかしパレット達は暇になった。
「フレイヤ、何か面白い話してよ」
パレットは言った。
「あなたねえ。私を何だと思ってるの? まあ、多少の知識はあるけどね。どんな話が良いの?」
フレイヤは言った。
「何か美しい話でもないものかしら」
シオーネが聞いた。
「そんなものはないわ。醜い話ならたくさん知ってるけどね。世の中なんて醜いものよ」
フレイヤは言った。
「つまんないわねえ……。王子は何か楽しい話ないんですか?」
シオーネは聞いた。
「そう言われてもなあ。俺だって、綺麗な物ばかり見てきたわけでは無いからな」
ブラックは言った。
「ううん、そっかあ……」
シオーネはつぶやいた。
「綺麗かどうかはわかりませんが、グァーサに関しての事なら」
マリアは言った。
「あ、それも気になる所よね。どんなところなわけ?」
シオーネは聞いた。
「とにかく大きい街ですよ。色々豪華絢爛で、楽しいものもたくさんありますね。美味しいものもたくさんありますよ」
マリアはそう言った。
「いいじゃない。そうでなくちゃね」
シオーネは言った。
「王様はどんな方ですか?」
ターヴィが聞いた。
「ああ、それは違うんですよ。グァーサに王様は居ません」
マリアが言った。
「はあ? それはないでしょう。どうやって国を治めているんですか?」
ターヴィが聞いた。
「商人たちが合議制で決めてるんですよ。『民主主義』とも言うらしいですけど」
マリアが言った。
「へえ、民主主義ですか。そんな言葉を聞くとは思いませんでしたよ」
パレットは言った。
「ん? パレットは民主主義について知っているのか?」
ブラックは聞いた。
「まあね。前世の知識ですけどね……」
パレットは言った。
「あら、もしかしてマスターは『転生者』なわけ?」
フレイヤは聞いた。
「そうですね」
パレットは言った。
「へえ、なるほどね。そういうことだったのね」
シオーネは言った。
「それなら私を手にしたのも納得ね。女神に頼まれたのかしら?」
フレイヤは聞いた。
「魔剣については何も教えてもらってないですけどね」
パレットは言った。