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万色のパレット  作者: 秀一
一周目 始まりのパレット
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第2話 剣士の少年、恋する少女

 零次は生まれ変わった。

 赤ん坊になった。そこから3歳になり、前世の記憶も少しずつ蘇ってきた。

 そして零次からツッコミたいことが一つ。

 

「あれ? 俺女の子になってる……」


 何故か女の子になっちゃった零次。

 

「パレット、ご飯よ~」

 母が声をかけてくれた。

「はーい」

 パレットは答えた。

 

 食事はパン。それからサラダ。稀に肉や魚が付くが、本当に稀だ。

 それでも下層階級というわけでもないらしい。普通の農家ってところ。

 

「パレットは可愛いなあ」

 そう言って可愛がってくれる父。とりあえず愛されてはいるらしい。頭をなでてくれた。別に悪い気はしない。

 

「ねえパパ、私も狩りに出てみたいんだけど」

 思い切っていうパレット。

「冗談じゃないぞ。狩りはとても危険だし、男の仕事だ。お父さんに任せなさい」

 父はそう言った。

「ちぇ~」

 一応可愛い子ぶるパレット。悔しそうにした。

 

「パレットは良い子ね。でも、私達も心配してるからね?」

 そういう母。

「お前はまだ子供なんだし、甘えて良いんだぞ」

 父はそう言った。

 

 どうやらこの両親はパレットを割と溺愛しているらしい。あんまり家から出してもくれなかった。

 

 6歳になった。こうなると、小学校に行かないといけない。と言っても、別に行く義務とかがあるわけではないんだけど。貧しい家も多く、小学校なんて無理という子も少なくないからだ。

 

「パレット、小学校に行きたいかい?」

 聞く父。

「行きたーい!」

 パレットはそう言った。

 

 毎日毎日暇なのだ。この世界の文字すらよくわからない。日本語とはかなり違うようだ。この世界の歴史や文化、常識についても学んでおかないといけないだろう。

 

 当日。パレットはチュニックとスカートでそれなりに着飾って、小学校へと出かけた。

 

 小学校はそんなに遠くは無い。でもパレットにとってはちょっときつかった。運動不足だ。

 

「ううん、鍛えないとな……」

 そうつぶやくパレット。

「やあ! お嬢ちゃん」

 突然話しかける男の子。

 

「どなたですか?」

 聞くパレット。

「俺はドリュー! この世界最強の剣士になる男さ!」

 そんなことを言うドリュー君。

 

 適当な感じに着たチュニックにズボン、どっからどうみてもやんちゃ坊主という感じだ。ちなみにこの世界の人間は概ね金髪碧眼らしい。パレットもそうだし、ドリューもそうだ。

 

「世界最強の剣士ですか。それは素晴らしいですね」

 パレットはあんまり興味無さそうに言った。

「だろ!? わかってるじゃねえか。何なら俺の舎弟にしてやってもいいぜ!」

 そういうドリュー。

「遠慮しときます」

 パレットは冷めた目で言った。

「そっか。んじゃまたな!」

 そう言ってドリュー君は走って行った。速い。

 

 そういえば、とパレットは考える。

 考えてみれば、女の子になっちゃったわけだし、恋愛とかして男の子とラブラブになったりするのもありえなくはないのだろうか?

 いや、それはマジで勘弁してほしいなあ、とか考えるパレット。零次は、女の子は大好きだが男は大嫌いなのだ。それは女の子になっちゃってもあんまり変わっていなかった。

 

 学校に着くと、入学式が始まろうとしていた。

 

 見ると、ドリュー君が女の子と談笑していた。

 黒髪長髪に碧眼。この世界だとちょっと珍しい。いかにもお嬢様という感じ。

「ねえドリュー君。『白い花に黄色い蝶が止まる……』っていう情景、素敵だと思わない?」

 そんなことを聞く少女。

「いや、そんなこと言われても。そういうのはよくわかんねえな」

 つまらなそうに言うドリュー。

「もう、ドリュー君ったら。もっと芸術を理解しないと……」

 少女はそう言った。

 

 少年少女達が一カ所へと歩いていく。しかしこの二人は気付いていないっぽい。

 たまらずパレットは話しかけた。

 

「お二人さん。入学式に行かなくて良いので?」

 パレットはそう聞いた。

 驚く少女。ドリューはパレットに気付いた。

 

「ああ、さっきの。そうだな、メロディ。もう行かないと」

 ドリューは言った。

「ちょっとドリュー君! 誰なのこの娘!」

 叫ぶメロディ。

「はあ? さっき道で会ったやつだけど」

 そういうドリュー。

 

「ふうん、そっか。で、あなた、名前は?」

 そう聞くメロディ。

「パレットです」

 パレットは答えた。

「あら、お洒落な名前ね。ご両親に付けていただいたのかしら?」

 メロディは聞いた。

「はい」

 本当はよくわからないが、まあそういう設定だ。

「私はメロディよ。仲良くしましょうね、パレットちゃん」

 メロディはそう言って手を差し出した。

「ええ」

 握手する二人。

 


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