第14話 第二王子ブラック
パレットはもちろん次の日、時間通りに魔法学園へと行った。
そこには多くの生徒が並んでいた。パレットもそこに並ぶ。
その時、耳の長い人が話しかけてきた。
「やあ、あなたも合格者だったわね。可愛い魔術師ちゃん」
その女性はそう言った。
彼女も信じ難いほどの美人だ。女神にも負けていない。黄金色の長髪と翠色の瞳が輝く。背も非常に高く、スタイル抜群だ。
「パレットと申します。あなたは?」
聞くパレット。
「良い子ね。私はシオーネ。エルフよ」
シオーネは言った。
「エルフですか。エルフを見るのは初めてです」
パレットは言った。
「そうなの? まあそうかもね。最近は数も少なくなったしね」
シオーネは言った。
「シオーネさんは、魔術に自信がおありで?」
そう聞くパレット。
「まあね。剣術にも自信はあるわよ。もちろん弓矢もね。ていうか、あなたのほうが魔力の値が優れていた気もするんだけど」
そういうシオーネ。
「まあそれだけが取り柄ですので。剣も弓矢もできませんよ、私」
謙遜するパレット。
「へえ、気に入ったわ。仲良くしましょう? パレットちゃん」
シオーネは言った。
「ぜひ、お願いしますよ、シオーネさん」
パレットは言った。
「静粛に!」
その時、兵士が叫んだ。
一斉に視線が集まる。
「これより、第二王子ブラック様よりお言葉を頂く! 各自、粗相の無い様にせよ!」
兵士は叫んだ。
大勢の兵士に囲まれ、黒いマントを着た男がやってきた。
まだ少年だろうか。あどけなさを残す。気品はあまり感じられないが、難しい顔をしている。
「やあ、諸君」
王子はそう言った。
「我が国のため、ここに来てくれてありがとう。まあ、我が国のためでなくても良いけどな。とにかく、魔術を極める仲間が増えるのは嬉しい限りだ」
王子は続ける。
「王子、そのような余計な事は……」
たしなめる兵士。
「いいじゃん。黙ってろよ」
そういう王子。
「はあ……」
兵士は黙った。
「昨今の世界情勢は複雑だ。我が国も危機的状況にある。迅速に有能な魔術師を集めねばならぬ。……ところで、今回の検査で魔力値10000以上を出したものが居るとか」
王子は聞いた。
「誰だ! 名乗り出よ!」
叫ぶ兵士。
「私ですが」
パレットは言った。
「お、お前か!? ずいぶんと小さいじゃないか」
そういう王子。
「まあ、3歳ですからね」
パレットは言った。
「3歳だと!? ははは、そりゃ凄いな」
笑う王子。
「お嬢ちゃん。この人は偉い人なんだよ。もう少し敬意というものをだな……」
兵士は言った。
「ああ、そんなのはどうでも良いよ。どうかなお嬢ちゃん。ちょっとお兄ちゃんとお話ししないか?」
そういう王子。
「それは構いませんが……」
パレットは言った。
「それじゃあ後でな」
王子は言った。
「あー、とにかく、みんな一生懸命魔術の研鑽を積んでくれたまえ。じゃ、これで演説は終わりだ」
王子はそう言った。