第12話 家出のパレット
パレットは、また生を受けた。
3歳になると、記憶が戻って来る。それと共に、戦略を組みなおす。
(まずは……。家出するか)
そう決めるパレット。親には申し訳ないが、仕方ない。世界の危機みたいだし。大体、何で世界が危機に陥っているのかとかさっぱりわからない。何がどうなっているのか?
『衣服生成』
パレットはまず、自身の服を生成した。チュニックにズボン、活動的な服装だ。親はそういう服をくれないから仕方ない。
『飛行』
窓から空を飛んで飛び出す。自由自在、高速に飛び回る。あっという間に、空高くに舞い上がった。
風が強い。吹き飛ばされそうだ。
「ふう」
それでも、その風に相対し、それを逆用して飛ぶ。慣れてくれば問題ない。
高速で空を飛ぶパレット。思い出の小学校が見える。よく行った、マーゼルの街並みも見える。
「こうして見ると、ここも故郷だよね」
パレットはそう言った。
北部へと飛ぶパレット。飛んでいると、モンスターに襲われることも無いようだ。鳥は飛んでいるが、強力なモンスターは飛んでいない。
山岳地帯が見える。複雑だが、パレットはそこをよく覚えている。
「ラックだね」
幸運の地、ラック。ドリューと過ごした地。
そんな思い出を思い出しながら、更に北部へと飛んでいくパレット。
見えるのはべアールの城塞。堀に囲まれ、複雑な櫓を持つ堅牢な城だ。
べアール城についても知らないわけではない。パレットは一週目で、手続きやら何やらでこの城に来たこともあるからだ。
「さてと」
パレットは目立たない場所に降り立った。そこから、べアールの城下町を目指す。
城下町に入った。3歳の女の子は珍しいが、いないわけではない。べアールの街にはなんでもある。
とりあえず酒場に入るパレット。
「いらっしゃい……、っておい。ずいぶんと可愛い客だな」
マスターが言った。
「すいません。情報を買いたいのですが」
パレットは言った。
「わけありか? あんまりそういうのは感心しねえなあ」
マスターは言った。
『資金生成』
パレットはこっそりと金貨や銀貨を生成した。
「魔法学園について教えて欲しいのですが」
パレットは聞いた。
「うーん。まあ、隠すような事じゃねえけど。べアールの北にあるぞ。郊外だな。王子も噛んでるって噂だ」
マスターは言った。
「入学するには?」
聞くパレット。
「魔術の才能さえありゃオールオーケーだとよ。お嬢ちゃん、自信があるのかい? 何なら俺が口利いてやってもいいぜ」
マスターが言った。
「そりゃありがたいですが……。いいので?」
聞くパレット。
「流石にタダでとはいかねえが。いくら出せるんだ?」
聞くマスター。
「とりあえず、これでどうでしょう」
そう言って、銀貨3枚を出すパレット。
「おいおい。これじゃ多すぎだぞ。金持ちなのか? お嬢ちゃん」
そう聞くマスター。
「まあ、気持ちという事で」
そんなことを言うパレット。
「へえ。まあ太っ腹なのはいいけどね。んじゃ遠慮なく頂いておくぜ」
マスターは言った。