第10話 幸運の地、ラック
パレットとドリューの二人は、山岳地帯へと入った。
ベアール国南部、ラックと呼ばれる地域だ。ここは田舎だが、重要な地域とも言われる。というのも、この地域は水源が多く、農業がやりやすい。故に、極めて豊かな土地だ。
ベアールとマーゼルの間で戦争になったこともある。もちろん、この地域を争ったのだ。結局、べアールが勝利し、この地域を支配している。
とりあえず、宿屋で休む二人。
「やあ、旅の人かい?」
そう聞く宿屋のおばちゃん。
「まあそうですね。何か?」
ドリューは答えた。
「ああ、今ここでは入植者を募集していてね。良かったら、応募してみたらどうだい?」
そういうおばちゃん。
見ると、本当に入植者を募集しているようだ。べアール国が色々面倒見てくれるらしい。
「こりゃ良いな。なあパレット、もうここで暮らさないか」
そんな風に提案するドリュー。
「えー、任務とかはどうするの?」
聞くパレット。
「もういいじゃん。気にすることは無いって」
割と適当なドリュー。
結局、結婚してここで暮らすことにした二人。
こうして二人は、いつまでも幸せに過ごしましたとさ。
めでたしめでたし。
というわけにもいかず。
パレットが20歳になった時、突如、もの凄い数の巨大なゴーレムが襲ってきた。
「あれは……」
パレットはそうつぶやいた。そう言えば、この世界は破滅の危機に瀕してるんだっけ。とか、思い出したパレット。忘れてた。
「何だ!?」
驚くドリュー。
凄い大きさのゴーレムたち。迫って来る。家が破壊された。
「ちい!」
ドリューは斬りかかる。しかしキイン! と弾かれた。
そして踏みつぶされるドリュー。
「ぎゃああああああ!」
ドリューは、死んだ。
「……!」
パレットは、怒った。
「《炎の精霊》よ、《ノヴァ》!」
凄まじい爆発。
しかし、ゴーレムには全く効いていない。
無表情でこちらに向かってくる。
「魔術が通じない……!?」
パレットは、逃げる。
ただ、逃げる。ドーン! ドーン! と様々な物が踏みつぶされていく。
村が、街が、潰されていく。悲鳴が上がる。断末魔が上がる。
パレットは、逃げる。しかし、疲れる。
いつまでも逃げ続けるわけにはいかない。
無表情で全てを破壊していくゴーレムたち。
『怪力』『怪力』『怪力』『怪力』
パレットは能力を発動させ。
「あああああああああ!」
バキイ! と殴るパレット。ゴーレム一体に傷をつける。
しかし他のゴーレムたちに殴られる。バキイ!
「がっ……!」
倒れるパレット。
ゴーレムたちは襲い掛かる。グシャ! と足を踏みつぶされた。
「うぎゃあああああああ!」
叫ぶパレット。そして。
パレットは全身を破壊され、死んだ。