第9話 置いていかないで
パレットは旅立った。
北へと向かう。ゆっくりと歩いていく。
うららかに晴れた草原。穏やかな感じだが。
ドドド、と3体の狼がやってきた。
グルル…… と唸る狼たち。
「穏やかに見えても、とことん物騒だよね」
パレットはそうつぶやいた。
襲い掛かる狼たち。パレットはひらりとかわし、剣で切り裂いた。
一体が血を流し、倒れる。
もちろん狼たちは激怒し、激しく襲ってきた。
パレットはかわし切れず、攻撃を食らう。
牙で腕に噛み付かれた。
「うぐ!」
鎧があるので致命傷ではない。しかし、痛みがある。
(手加減はできない、か)
パレットはそう考える。しかし。
「はああああああ!」
突然、背後からの奇襲。狼を切り裂く。
ドリューだ。
「ドリュー! どうして?」
聞くパレット。
「どうしてもこうしてもあるか! 何故勝手に出て行く!」
叫ぶドリュー。
「いや、司令官の命令だったし」
パレットは言った。
「そんなものは知らない! どうして俺を置いていくんだ! 何も言わずに!」
叫ぶドリュー。
グアアアア! と飛び来る狼。
「来るな! 《風の精霊》よ《ウィンドカッター》!」
風の刃を生み出し、パレットの魔術で狼はバラバラになった。
「ごめんパレット。俺は無理を言って出てきた。お前が拒絶するなら、帰る……」
ドリューはそう言った。
「拒絶なんてしないけどさ。ドリューはそれでいいの?」
そう聞くパレット。
「もちろん」
ドリューは言った。
「なら一緒に行こうよ。私達は、もっと世界を知る必要がある」
パレットは言った。
「世界を?」
ドリューは聞いた。
「私は知りたい。いや、知らなければいけない。それが私の運命だから」
パレットは言った。
「……お前ってさ。あんまり普通の女の子じゃないよな。それは前から思ってた。俺なんかに付き合わせて申し訳ないと思ってる……。でも、もっと色々話してくれよ。教えてくれよ、お前の事を」
ドリューは言った。
「そうだね。お互い、まだまだ知らなくちゃいけない事があるよ」
パレットはそう言った。