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恋愛短編まとめ

箱を開ければ、震えてずっと泣いている。

作者: 甘宮るい

ツイッターにもUPしました。こっちにも。


 今回も駄目だった。

 愛の告白は人生で両手に収まる数よりもたくさん聞いた。私への愛を聞いた。100本の薔薇も萎れるような数、私はその人たちから別れを告げられた。付き合ってはいない。そういった関係になる前に、まるで恐れをなしたかのように彼らは消える。

「殺してほしいだなんて言うんじゃなかった」

 愛ゆえに殺されたいなんて気持ちも、自分を愛せない自分も隠しておけば、彼は私を好いていてくれたかもしれない。それでも。

「結局、見えている綺麗なところが好きなだけだ」

 今の私をすべて愛してくれる人はいなかった。

 偽って、また他の腕に抱かれる。この人の愛が欲しいわけではない、あの人でも多分違った。そう思いたい。あぁ、私は誰の愛が欲しかったのだろうか。代わりばかり作って情けない、本当は誰にわかってほしいのだろう。

「好きじゃなかった」

 好きになってたまるか。私のすべてが好きじゃないくせに。それは私の理想にすぎない、私すら見ていないくせに、そんな最低な人を好きになってたまるか。

「好きだった」

 酷くされると、傷つけられると、量れないような安堵を得る。それが幸せだと思い始めたのはいつだったか。本当は違うのだ、殺されたいわけでもないのだ。愛されたいだけなのに。それが簡単に口にできなくなったのはいつだろう。

「私じゃなくてもいいのね」

 綺麗なものなんてこの世界には何一つない。すべてが汚い欲望で理由付けられる世界だ。

 今日私を傷つけた彼は、今頃何をしているのだろう。

 一番欲しい言葉を、一番聞きたい人から言ってほしいのに。どうせ、みんな私を嫌うのだ。私のことが嫌いだ。

 変わらなければならないだろうか。今の私を、否定しつつ愛されたいと願うのはこれが本物の私だからではないのだろうか。変わってしまえば、そうなってしまえばきっと愛されるだろう。きっと愛されるけれどそれは愛されていると言い切れるのか。

 水晶体に彼の表情が焼き付いて離れない。三半規管も鼓膜もなくなってしまえば、もうあの言葉を思い出さなくなるだろうか。忘れてしまいたい。死んでしまいたい、覚えているから死んでしまいたい。

 苦しい。

 結局のところ、彼も私だけでは何も埋められないどころか奪われた被害者だ。

「好きだった好きだった好きだった好きだった」

 好きじゃなくなった。嫌いになった。好きだった好きだった好きだった。

「一番にして」

 二番でもいい。

「二番でもいい」

 離れていかないで。

 この暗い空の唯一の月に手を伸ばしてそのまま一歩、踏み出してしまえたら私は死ぬのに。

「まだ生きていたい」

 少し普通と違うだけ。少し、臆病なだけ。少し、世界に罪を背負わされただけ。少しだけだ、少しだけ。

 本当は、中身は、ただの怖がりで寂しがりやな私なのに。

 口では言えずとも、謝られてしまえば許せるのに。貴方の悪いところもいいところも、罪も罰もすべて背負って見せるのに、どうして私という存在を理解してはくれないのだろう。いっそ壊れてしまいたい。なんでこんなにも私の心は丈夫なのだろう。大丈夫ではもうとっくにないのに。死んでしまいたい。

 誰かに好きと言われたあの瞬間に、消え去ってしまいたい。

 私の全てを好きと言われたら、きっとその時は死んでしまう。

「幸せで、幸せで死んでしまう」

 現れないのだろう。私の全てを知る人は現れないのだろう。私ですら知らないのだ。

 頬に当たる冷たい風は、昨日までの暖かい手を思い出させる。この体ですら、呪われている。彼らの言った愛は、偽物だ。彼らは、彼は、今回も私を捨てる。

「一番じゃないってことは」

 一番と比べればどうでもいいということだ。

「こんな関係じゃないほうがよかった」

 口を噤んでしまいたい。こうはなりたくなかったなんて、望んだのはどっちだったか。

 死とかそんなものよりも、愛も恋も重いのに。それは自分が二つになるかのように大事な無視できないものが増えることなのに。それでいて、自分より大切で自分を傷つけてもその人の傷を治したくなるようなものなのに。

「あーあ」

 いつものその酷い言葉を聞くまでの、長い時間をずっと繰り返していたい。幸せになるその先なんて訪れないのなら、いっそなくなってしまえ。


お久しぶりです、死んでます。感想よければください、更新頻度上がります。

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