七頁目 「冬の終わり」
こんばんわ。
残すところ、今年もあとわずかとなりました。
みなさん、今年はどうでしたか?
楽しんで読んで頂けたら幸いです!
「それで、一体どうしてこんなに人が居るの?」
ようやく子供たちから開放された冬の女王様は、まだ遊んでいる子供たちを眺めながらウィリーに聞きました。
「簡単だよ。みんなに冬の良さを教えたからさ。」
ウィリーは話しました。
夏の女王様に言われて、冬には氷と雪という冬にしかないものがあると気づきました。
なら、その氷と雪を使って遊べば、きっとみんな冬の良さに気づいてくれる。
思い立ったウィリーは、早速雪ん子たちといっしょに街の子供たちを、雪遊びに誘いました。
「だけど、よく大人が外へ出る事を許したわね?どうやったの?」
ウィリーの話を聞いていた冬の女王様が、ウィリーに聞きました。
「それはね、」
ウィリーは話を続けました。
もちろん、大人たちは反対して、ウィリーを叱りました。
寒い冬の外へ出るなんて、と。
しかし、ウィリーは言いました。
冬は確かに寒いよ。でも、雪の中は、本当はあったかいんだよ、と。
その証拠に、雪ん子が作ったカマクラは、とても温かく、子供たちが入ったり、おしくら饅頭を教えてもらった子供たちは、笑いながらお互いを押し合って楽しそうでした。
しかし、大人たちはまだ言いました。
氷の上は危ないだろう。と。
ウィリーはスノーマンと顔を見合わせて笑いました。
その心配も、必要ないよ。と。
そう言って、ウィリーは凍っている地面に向かって飛びました。
「だ、大丈夫だったの!?」
冬の女王様は慌ててウィリーを見ました。
しかし、ウィリーはケロッとしていて、怪我の一つもしていないようでした。
「大丈夫さ。なんたって、スノーマンが居るからね。」
ウィリーの隣で、スノーマンが胸を張りました。
「任せてください。硬い氷の上に転んでも、私たち雪ん子なら、柔らかい雪をすぐに出せますから。怪我の心配はありませんよ。」
その言葉に、冬の女王様はホッと息を吐きました。
「よかったぁ。」
冬の女王様はそう言って、微笑みました。
その時、ウィリーと冬の女王様の前に、影ができました。
「冬の女王様。」
二人が顔を上げると、そこにはウィリーのお父さんや、お母さん、街の大人たちがいました。
「冬の女王様、申し訳ありませんでした。」
ウィリーのお父さんの言葉を合図に、大人たちは、みんな冬の女王様に向かって、頭を下げました。
「み、みなさん?」
それに困ったのは冬の女王様。
初めて声を掛けられた上に、いきなり謝られたため、訳が分からないのです。
しかし、大人たちは続けます。
「今まで、あなたの事を冷たい人だと、勝手に言ったり、子供たちにも、外へ出てはいけないなど、言っていました。ですが、今日、ウィリーに教えられました。」
顔を上げた大人たちは真剣な顔をしていました。
「人を、簡単にこんな人だと決めつけてはいけないと。どうか、こんなばかな私たちを許してはいただけませんか?」
そして、もう一度頭を下げました。
ようやく意味が分かった冬の女王様は慌てました。
「そんな、許すだなんて!私は、みんなと遊べるだけで充分です!どうか、顔を上げてください。私は、そんなこと、もう気にしていませんよ。」
その言葉に、大人たちは笑いました。
「本当だ。冬の女王様はお優しい方だったんだ!」
「ね、僕の言う通りだったでしょ。」
「そうだな、ウィリー。」
「えぇ、あなたの言う通りだったわ。」
ウィリーはお父さんとお母さんの言葉に、ニッコリと笑いました。
それから、冬の女王様に向き直りました。
「冬の女王様、もう一度、僕に謝らせてください。」
ウィリーは冬の女王様の手を握りました。
「僕は、あなたに酷い事を言ってしまいました。でも、本当は君が優しいことを知ってる。だって、優しくなかったら、こんなに雪ん子たちが、あなたの事を心配したりなんかしないもん。」
ウィリーは冬の女王様と目を合わせました。
「ごめんなさい。あなたを傷つけて、ごめんなさい。」
ウィリーの言葉に、冬の女王様も言いました。
「私の方も、ごめんなさい。心配をかけたわ。」
冬の女王様は少し迷ってから、ウィリーに聞きました。
「ねぇ、ウィリー。また来年も、こうやって遊んでくれる?」
「もちろん!」
ウィリーの言葉に、冬の女王様は思わずウィリーに抱きつきました。
「ありがとう、ウィリー!」