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冬の物語  作者: 柳 空
3/10

二頁目 「冬という少女」

雪ん子は雪だるまだからスノーマン。

なんとも安直な名前になってしまいました。

これから、他にも雪ん子が出てきたら、なんという名前にしようかと、悩んでいます。


楽しんで読んで頂けたら幸いです!

その日は、本当なら久しぶりに学校へ行く日だったのですが、まさかの大雪。

一階の半分が埋もれてしまうほどの雪が積もっていました。

これにはお母さんもお父さんも、ウィリーもビックリしてしまいました。

「こんな事、初めてだわ。」

とお母さん。

「冬はもう終わったんじゃないのか?」

とお父さん。

ウィリーは友達に会えない事にガッカリして、部屋へと戻ってしまいました。

「なんだよ!」

カバンをベッドへ投げました。

そのまま自分もベッドへと飛び込むと、窓の外を見ました。

もうすぐ四月、春の温かい風が鳥たちとともにやってくるはずだと言うのに、まだまだ外はたくさん雪が積もっています。

「冬なんて嫌いだ!」

ウィリーは布団をかぶって寝てしまいました。


いつの間にか眠ってしまっていたのでしょう。

ウィリーが目を覚ますと、空はどんよりとした雲のせいで真っ暗になっていました。

一階からは、お母さんとお父さんの話し声が聞こえてきます。

しばらくボンヤリと外を眺めていると、

「ウィリー!」

と下の方からお母さんがウィリーを呼ぶ声が聞こえてきました。

ウィリーは急いで一階へと下りて行きました。

「どうしたの?お母さん。」

ウィリーがたずねると、お母さんは困った顔をしながら笑って、

「ごめんね、ウィリー。しばらくは学校へは行けないの。」

「え?」

ウィリーはたずねました。

「どうして?だってもう、冬の女王様は隣の街へ行ってしまったんでしょう?なのに学校へ行けないの?友だちに会えないの?」

ウィリーの問いかけに困ってしまったお母さん。

お父さんはそこに助け舟を出しました。

「ウィリー実はな、冬の女王様が季節の塔から出てこなくなってしまったそうなんだ。」

ウィリーはその言葉にビックリ。

「どうしてなの?」

思わずお父さんの近くに走り寄って、そうたずねてしまいました。

「分からない。こんな事、今まで無かったんだ。ウィリーには悪いけど、冬の女王様がこの街を出るまで、絶対に外へ出ては行けないよ。」

「なんで?僕、友だちに会いたいよ!」

ウィリーは駄々をこねました。

「言うことを聴いてちょうだい、ウィリー。冬のお外は危ないのよ。道は凍っているし、雪と風は冷たいし、おまけに外は暗いのよ?大切な私のウィリーを、そんな外へなんて出せないわ。」

その言葉は、お母さんがいつも言う事でした。

「お母さんの言う通りだ、ウィリー。大丈夫さ、四月になれば、きっと女王様も次の街へ行ってくれるさ。」

お父さんはそう言って、また新聞を広げました。

「分かったよ。」

ウィリーはそう言って、トボトボと部屋へ戻って行きました。

「ごめんね、ウィリー。」

お母さんがそう言っていたのが聞こえたが、ウィリーは返事もしませんでした。


その夜、ウィリーはコンコンと窓を叩く音に目を覚ました。

カーテンを開けると、窓の向こうには雪ん子が一人いました。

『ウィリーさん、ウィリーさん。窓を開けてください。お話があります。』

ビックリしていたウィリーは雪ん子のその声に、慌てて窓を開けました。

「こんばんは、ウィリーさん。」

「こ、こんばんは。ねぇ、君は雪ん子だよね?」

ウィリーがたずねると雪ん子はうなずきました。

「はい。僕は冬の女王様にお使えする雪ん子の一人で、名前をスノーマンと言います。」

「スノーマン?」

「はい、スノーマンです。」

ウィリーが聞き返すと、スノーマンはニコリと微笑みました。

「えぇっと、スノーマンはどうして僕の所にいるの?それに、ここは二階だよ?どうやって登ってきたの?」

ウィリーがたずねると、スノーマンは、

「その事でやって来たのです。」

と言いました。

そしてスノーマンは自分の下を指しました。

「見てください。」

スノーマンに言われてウィリーが窓から下を覗いて見ると、なんと雪はウィリーが手を伸ばせば触れるところまで積もっていたのです。

「わぁっ!!」

思わずウィリーは雪に触りました。

しかし、

「つ、冷たいっ!!」

雪は指先に刺さるような冷たさを持っていました。

「ウィリーさん!雪は手で触ってはいけません!!霜焼けになってしまいます!」

スノーマンは慌てて、自分の手にはめていた手袋をウィリーに差し出しました。

「ウィリーさん、これを付けてください。」

「スノーマン、これは何?」

初めて見る手袋に、ウィリーは首を傾げました。

「手袋です。これを付ければ、雪を触っても平気ですよ。」

スノーマンはウィリーの手に手袋をはめました。

ウィリーはさっそくその手で雪を触ってみました。

「本当だ!冷たくない!」

ウィリーは大はしゃぎです。

しかし、これはスノーマンの物、ウィリーはハッとしてスノーマンを見ました。

「ス、スノーマンは平気?冷たくないの?」

「はい。僕は雪でできていますから、雪を触っても冷たくはありませんよ。」

スノーマンは微笑みました。

「さて、ウィリーさん。僕がこうしてあなたをたずねた理由ですが、ウィリーさんは数日前の朝にお会いになられた少女の事を、覚えていらっしゃいますか?」

スノーマンの問いかけに、ウィリーはうなずきました。

「うん、覚えてるよ。ソリに乗っていた子でしょう?あの子が、どうかしたの?」

「実はですね、彼女が今、この街に冬という季節をもたらしている冬の女王様なんです。」

ウィリーは思わず、

「スノーマンは、冗談が上手いね。」

と言ってしまいました。

しかし、スノーマンは大真面目な顔をしていました。

「いいえ、冗談などではありません。彼女こそが、偉大なる冬の女王様で、私達雪の精霊に、雪ん子としての体を作ってくださる優しいお方なのです。」

「優しい?冬の女王様が?」

ウィリーがスノーマンにたずねました。

「冬の女王様が優しいの?冬の女王様って、冷たい人なんじゃないの?」

その言葉にスノーマンはやれやれと、肩をすくめてみせました。

「それは冬が寒いから、街の人達が勝手に言っているだけのお話ですよ。女王様はとてもお優しい方です。」

「でも、今こうやって、たくさん雪を降らせて、みんなを困らせているじゃないか。」

「それは、みなさんのせいですよ。」

スノーマンの言葉に、ウィリーは黙ってしまいました。

スノーマンは続けました。

「いいですか、ウィリーさん。冬の女王様が季節の塔にひきこもられてしまったのは、数日前、あなたが、女王様に酷い言葉を投げつけてしまったからなのですよ。」


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