問1 貴方は別の世界から来ましたか?
「あ、あの……」
不安げな少女の声に、スーツ姿の男が顔を上げる。
彼らのいる場所は机と椅子がある小さな部屋で、お互いが向き合う形で座っていた。
少女の姿は一般的なセーラー服姿で、女子中学生にも女子高校生にも見える。
対して、スーツ姿の男は年は40代くらい。眼鏡をかけており、穏和そうな雰囲気の極めて普通のサラリーマン姿だ。
「どうしましたか?」
「あの、これドッキリとかじゃないんですよね?」
「残念だけど、ドッキリじゃあ無いですね」
「いやでも……!」
スーツ姿の男にキッパリと否定された少女は、それでも納得できない様子で話を続けた。
「喋ってるの日本語だし、文字も日本語だし、テレビあるし、普通に車もバスも見たし、最初に会った人市役所の人だし、歩いてる人普通の人だし、私の住んでた場所と環境ほぼ同じにしか見えないんですけど!」
「どうも、君の住んでた世界と私達の世界はかなり似てる様ですね」
「っていうか、本当に異世界なんですかここ!?」
初めて会った時と同じ質問をぶつけられ、最初に会った市役所の人ことスーツ姿の男は苦笑いしながら頷く。
「異世界だよ。君は別の世界から来たことはちゃんと確認済みだから」
「異世界トリップって、もっと全然違う世界に行くもんだと思ってました。魔法とか使えたり、人間じゃない種族が生活してたりとか……」
「あー、そういうのもあると言えばあるんだけどねえ」
「え、あるんですか!?」
スーツ姿の男の言葉に、少女は途端に目を輝かせた。
「もしかして、私も魔法使えっちゃったりします?
エルフとか妖怪とか会えちゃったりします??」
「待った待った。その話は後回し。まずはこの質問に答えてからね」
いきなりテンションの上がった少女をなだめつつ、男は束になった用紙とボールペンを取り出した。
用紙には”異世界から来た方への質問状”という題から始まり、ずらずらと色んな質問が並んでる。
「答えを全部記入してから、この世界について説明します。質問は、分からなければ分からないと書いてもらっても構いません。はい、じゃあ“問1貴方は異世界から来ましたか?”から順番にお願いしますね」
男から用紙の束とペンを手渡された少女は、「筆記テストとか苦手なんだよなー」なんてぶつくさと呟きつつ、用紙数枚に書かれた質問に答えを記していった。
答え終えた後に待っている、異世界の話について思いを馳せながら――――。