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10巻

四月十七日


 本日も朝からポカポカと温かく、初鶯が鳴き始めました。

早朝にもかかわらず陽の出る前から活動を始める三太さんの寒風摩擦に付き合わされて、僕は鼻水垂らしながら屋上で寒い中体をゴシゴシト洗い半端な風邪を引きました。

朝から御飯を残してブリッツエン兄さんから白い目で見られ、プランサー兄さんとの凄絶なトイレ戦争に敗北し、コンビニで用を足す破目になり、大分ご機嫌を損ねたのか、三太さんは今朝も例に漏れず朝からやんごとなき雰囲気を身に纏い、路地裏で血気盛んに発奮しておりました。

相手は三毛猫に斑模様の猫です。みゃあみゃあ。と大口開けて鳴く警戒心が強い野良猫は脅えて路地裏の物影に隠れています。鳴き声に気づいた三太さんも同じく大口開けて鸚鵡返しで、うみゃあうみゃあ。と優しげな口調で猫撫で声を発しながら、厠を借用したので律儀にコンビニで買った菓子麺麭を投げ投げし、猫が気を許したところで菓子麺麭からやおらに拾った小石を猫目掛けて投手顔負けの豪快なフオームでぶつけて追い散らします。見たかコメットあの野良猫は我に恐れ戦いて逃げ去ったぞ。と僕を相手にし自慢気に高笑いします。猫が大嫌いな三太さんは野良猫を見つけると情け容赦なく苛めるのです。

――本当に最悪な人ですね。

まぁ因果応報で投手顔負けの投法するもんですから筋肉痛になり腰を摩り始めます。

――ざまぁみろです。

すみませんついつい口汚くなりましたね。青息吐息で逃げた猫を見詰めながら荒い鼻息飛ばし最後に菓子パンの残りを再び豪快に投げつけて部屋へと戻る三太さん。僕はその後姿を窓越しから見詰めながらまんじりとも動けませんでした。ですが知っていますよ三太さん。小石じゃなくてあれは金平糖ですよね。本当に素直な人じゃないです。

逃げ出した猫が匂いに気付いたのか集まりだしペロペロと舐めては鼻を動かして食事に齧り付き始めました。相変わらず不器用な人ですね。

――コメット


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