異世界における日本人召喚事情
それは学校の帰り道でのことだった。
唐突に光る足元に、私は目を見開く。何だ?! 不発弾か?! 私、死ぬのか?
大慌てで逃げようとするが間に合わず、目の前は白一色に塗りつぶされた。
「神子様。ようこそ、おいで下さいました」
そして白く塗りつぶされた世界は、次の瞬間見慣れた道路から一転する。
屋外にいたはずなのに、私は石造りの室内にいて、更に銀色の長髪の男が目の前で膝を折り頭を下げていた。そして私を囲むように、他にも数名人が立っている。
全員が全員、ファンタジックな色合いの髪をしており、更に西洋系の顔立ち。服はコスプレですか? と聞きたくなるような、ずるずると長いローブをまとっていた。……もしかして、映画の撮影?
そんな風に思う程度に、日本とはかけ離れていた。
「あ、あの。すみません」
私は大慌てで頭を下げると、何でこんなところに迷い込んでしまったんだと頭を抱えつつ、扉の方へ向かう。今はリハーサル中なのかカメラは無いようだけれど、迷惑をかけて学校に連絡を入れられたくはない。
「何処に行かれるのですか?」
私が扉の方へ向かおうとすれば、腕をつかまれた。振り向けば先ほど頭を下げていた男が私の腕をつかんでいる。どうも外国人の見分けがあまりつかないので、この人が誰でどんな役者さんなのかどうなのかはわからないけれど、雰囲気的にモブではない役柄な気がするし、多分結構有名な人なのではないだろうか?
「ええっと。撮影の邪魔をしてしまって本当にごめんなさい」
「撮影?」
私の言葉に、髪と同じ色をした眉毛を顰める。
日本語が通じていないというわけではないようなので、言葉の意味の部分で引っかかりを覚えているようだ。あれ? もしかして、撮影じゃなくて、コスプレイベントだった?
最近は、外国で日本のアニメがもてはやされているとテレビでやっていたし、その影響でコスプレする外国人も多いと聞く。
「映画の撮影かと思ったんですけど……。すごく貴方が綺麗だから」
「ああ。エイガですね。大きな画面で、過去の映像を見る事ができるという。神子様、これは映画の撮影ではありませんし、私より神子様の方がずっときれいで可愛らしいですよ」
……何にか説明が変な気がするけれど、あれか。役になりきっているのか。
彼のコスプレしている作品は、女子高生が神子か何かの役なのかもしれない。
「はあ。ありがとうございます」
私が可愛いというよりは、その神子キャラが可愛いんだろうけれど、綺麗な人にリップサービスでも褒められてうれしくないわけではない。
「えっと。ただ、私はコスプレ参加者じゃなくて――」
「コスプレとは、なんですか?」
……あれ? 英語だとコスプレって何て言うんだっけ? 英語の授業では出てくるような単語ではないので、困ってしまう。
「いや、その。えっと、今回のイベントの参加者ではないという事で」
「神子様は、私がお呼びさせていただいたので、この儀式の参加者ですよ」
「は?」
儀式?
そういえば、私の足元には、悪魔召喚でもするのかというような魔法陣らしき模様が描かれている。どういう設定なんだと私は首をかしげた。
「神子様、エルドの世界へお越しいただきありがとうございます」
異世界召喚されたことをこの時点で理解しきれていなかった私は、エルドなんて漫画知らないし、日本人は漫画なら何でも知っていると思われても困るんだけどというずれた感想をこの時抱いたのだった。
◇◆◇◆◇◆
コスプレ会場に来てしまったと勘違いしていた私だったが、数日もすれば、異世界に召喚されてしまったという現実を理解した。
というのも、もしもこれがコスプレ会場だとしたら、どれだけ大規模なんだというセットである。私が召喚された教会自体も広く凝った作りであるが、その建物の外側の町もあからさまな異国だった。時折日本語の看板もあるけれど、基本的には英語とも違う文字が使われてており、普段の会話も同じだ。
人は皆カラフルな髪色と目の色で、茶色や金色だけでなく、青や赤や緑など戦隊モノでもやる気かという色の人も多い。最初に出会った、シルフィルからは魔力の性質によって、髪や目の色が変わり、親子だからといって同じ色を持って生まれるとは限らないのだと説明を受けた。これだけ全部かつらやカラコンを用意して、外国人を集めると大変だろうなと思うので、やっぱりここは異世界なのだろうなと思う。
「神子様、こちらに見えたのですね」
教会にあるベランダの一角で、町を見下ろしていると、シルフィルがやってきた。私を召喚したシルフィルはこの国での私の身元引受人であり、私を無事に元の世界に返すまでの守り人でもあるそうだ。
どうやらこの世界――もしくは国という単位なのかもしれないが、とにかくここに住む神官がご神託をもらうと異世界人を召喚するようになっているそうだ。この信託が結構定期的にあるそうで、私以外にも異世界トリップをしている人が滞在している。
異世界から召喚された人は、役割を終えたらそのまま住んでもいいし、元の世界に帰っても問題ないようだ。元の世界に帰る場合は、時間調節までしてくれるので、安心異世界への旅となっていた。異世界に連れていかれ、ひどい目に合う小説を読んだ事があるので、それに比べるとかなり恵まれている。
「こちらの生活にはなれましたか?」
「なんとか……」
慣れたといえば慣れたと思う。
日本人を召喚することが多いようで、教会の生活環境は結構現代に合わせてくれている。トイレや風呂の設備も、日本ほどとは言わないけれどちゃんと整っていて、不衛生だと思うこともない。中世ヨーロッパ的な世界だと、糞尿が窓から捨てられて悪臭が――的なことも考えられるのだけれど、上下水道はしっかり完備されていた。
「それにしては、浮かない表情ですね。何かお困りのことがあるのでしょうか?」
シルフィルは、とても私に対してよくしてくれている。彼は一方的に協力を求めてしまって申し訳ないと言い、私がこの世界にいる間は快適暮らせるようにしてくれるのだ。ちゃんと元の世界へ返してくれるとも言っているので、彼に対して文句は何もない。
その点は大丈夫なのだけれど――。
「私の役割はなんなのだろうと思って」
そう。呼ばれる召喚者の役割は、特に決まっていないそうだ。ただ召喚された者は何かしらこの世界に祝福をもたらし、それが確認されれば神子としての役割も終わるそうだ。
でも、祝福って何?
魔王を倒せとか、何か浄化しろとか、そういう具体的なものなら解りやすかったけれど、そうではないから心配なのだ。
「大丈夫ですよ。必ず神子様にもその時になればやるべき事が分かると思います」
「だといいんですけど」
時間調節して元の世界に戻してくれるとはいえ、あまり長期間になれば、私自身が成長してしまい、ちぐはぐになってしまう気がする。できるだけ短期決戦でいきたいのだけれど……不安だ。
「では、明日は町をご案内しますよ。神殿でご神託を受けられなかった神子様でも、町を見てご神託を受けた神子様は多いと聞いておりますので」
「ありがとうございます」
今のところ、神様の声も何も聞いていないけれど大丈夫なのだろうか? むしろ私からしたら、この世界の人たちの方が不思議人間だ。戦隊系カラフル頭というだけでなく、ここは魔法が存在する世界なのだ。魔法などない、普通の日本の女子高生に何かできることなどあるのか。
不安に思いつつも望みをかけて、シルフィルの言葉に頷いた。
◇◆◇◆◇◆
「何故、すし屋があるの?」
教会から町に出て、ジャパニーズ、ソールフードの一つである寿司屋の看板を見た瞬間、思わず疑問が口からこぼれ出た。
いや。うん。
服装や建物は中世ヨーロッパに近い気がするけれど、上下水道完備だし、衛生的には近代社会に近い環境だと思う。だから、生ものを取り扱っても食中毒などは起きないんだろうけど。でも、違和感がぬぐえない。
そもそも日本語看板が見えている時点で違和感を持てだったのだろうけれど、日本人の召喚が多いと聞いていたので現地の方が色々やってくれたのだろうと思っていたのだ。でもまさか、異世界ですし屋とぶつかるとは思ってもいなかった。
「流石神子様。すし屋を知って見えるんですね」
「私の国にもありますので」
むしろ、日本発祥だと思っています。時折海外で、自分のところが発祥だというのもあるそうだけれど、寿司に関しては日本だと思う。元々発酵食品である鮒寿司のようなものを寿司と言っていたが、江戸時代に生ものを使った江戸前寿司が出てきてこちらが全国に広がり、現在寿司の定番に輝いている。
寿司は江戸っ子発明で異世界から輸入されたものではないと思うのだけれど、名前も同じなのでどうなのだろう。
「やはり、そうでしたか。実は、これは三十年ほど前に召喚された神子様の提案でできた遺産なんです」
「えっ」
「当時、この国では生のものを食べるのは野蛮だと言われていました。しかし神子様はむしろ生で食べられるのは新鮮な魚が手に入ることが前提な上に、衛生状態もいい環境でなければできないと言い、これは文明の食べ物だと豪語なさったそうです」
うん。
あれだね。日本人の食に対する、妥協できない悪い癖が出たんだね。
30年前だと、私が生まれる前だから、ちょうどその神子は親か祖父母ぐらいの人になるだろう。だとすると、この国の郷土料理である洋風の味はあまり味覚に合っていなかったのだろう。そうでなくても、白い米ラブ世代だ。和食が恋しくてたまらなかったのかもしれない。
「そこで、どうやったら寿司を安全に食べられるか試行錯誤なされ、今ではこの国でも愛される食べ物となりました」
「そうだったんですね」
なんか、同胞がすごい我儘言ってしまってすみませんと思ってしまう。寿司がこの国で愛されるようになったのはうれしいが、きっと当時はとても迷惑をかけたに違いない。
「そして彼は寿司が完璧に提供できるようになるのを見届けた後、元の世界に帰りました」
「えっ? 帰ったんです? せっかく作ったのに」
「はい。どうやらラーメンが食べたくなったそうで。当時はまだラーメンはこの世界にありませんでしたから」
そうだよね。中世ヨーロッパな雰囲気の中で、ラーメンはない。あるなら、パスタとかな気がする。
「でもそれから、2年後にこの国でラーメンが食べられるようになりました」
「はい?」
「ほら、あちらにみえる、とんとん亭は豚骨ラーメンが人気の店です。この国では、豚骨ラーメンが一番人気なんですよ」
……なんでやねん。
関西人ではないけれど、心の底から突っ込みが湧き上がる。異世界中世ヨーロッパにあったよ、ラーメン屋。しかも豚骨だよ。うん。外国人は醤油より豚骨を好むって聞いたことあるけれど、なんかオシャレから遠ざかっている。
「えっと、もしかしてあれも……」
「はい。神子様が開発なされました。旨いラーメンを食べたことがないなんて可哀想だとおっしゃられ、麺やスープを開発されたのです。そして皆に振舞われた後に元の世界へご帰還されました」
本当にすみません。食い意地の張った国民性で。
やっぱり食に関しては譲れなかったらしい。少しの辛抱なら我慢しろよと思うけれど、確かにある日ふと食べたくなるのが、ラーメンというものだ。我慢できなかったのだろう。私もできたら是非食べたい。
「なんだかここまで来ると、カレーとかハンバーガーとかありそうですね」
「ありますよ」
「……あるんですか」
もう、何も言うまい。
仕方がないのだ。長期滞在なのだもの。食べたいものを我慢するのは体に良くないと思っておく。特に神子なんて何をすればいいのか分からないから、暇な時にそういうものを開発をしてしまったのだろう。
「神子様がもたらした食べ物ですと、卵かけごはんがこの国の一番の革命でした。寿司よりさらに前の神子様からの提案でしたので、生で卵を食べるというのは色々波紋を呼びましたね。今では、家庭でも食べられていますが」
「あはは……」
うん。その人も、きっと文明的ではないと生の卵なんて食べられないのだと屁理屈こねて、頑張ったのだろう。卵は鶏のお尻の穴を通って出てくるから、本当に気を付けないと食中毒との戦いになるのだ。
まあでも、そのおかげで私が今快適に暮らせているのだから文句は言えない。
飲食店系は歴代神子の食い意地の所為で日本語看板が多いのかぁと思いながら、私は町を散策する。しばらくすると、公園のような広場に出た。魔力で動いているらしい噴水は、虹色に輝ききれいだ。時折水がはねて、竜の形やハート、星などが飛び出るので、日本の噴水よりもずっとすごい。
やっぱり魔法がある世界を舐めてはいけないなと思う。
「そういえば、あまり子供の姿を見かけないですね」
公園といえば子供が遊ぶ場所だと思うが、小学生ぐらいの子を見かけない。さらに小さい子供が親と一緒にいるのは見かけるのだけれど。
「今は学校の時間ですから」
「ああ。この世界にも学校があるんですね」
なんとなく勝手に中世ヨーロッパなんだから、庶民の子は家の手伝いをしているのかなと思っていた。でも色々文明が違う発展をしているのだから、日本より遅れていると思うのは侮りすぎか。
私は勝手に見下してしまっていた事実に反省する。
「はい。こちらはかなり昔の神子様が始めたものです」
「えっと。神子がですか?」
また出てきた神子という単語に私は目を見開く。
「はい。文字と計算。これは庶民でもできなければいけない。そうでなければ、借料書などで騙される者も出てきてしまい、治安が良くならないと言われました」
うん。そういえば、日本には寺小屋文化があり、庶民でも結構識字率が高かったはずだ。
この世界に学校を作った神子は、そういうことに関わっていた人かもしれない。
「そうだったんですね。でも学校なんて概念がない場所で唐突に始めようとすると、きっと大変だったんでしょうね」
進んで自分から始めるのと、誰かに強要されるというのは違う。これだけ子供を見かけないとなれば、今は半強制っぽいけれど、そこまでいくのに時間がかかりそうだ。
「ええ。学校を作った神子様は校舎やカリキュラムが出来上がるのを見届けた後帰ってしまい、中々上手く学校を活用できない状況が続きました。一応貴族の生まれの者が使ってはいたのですが、そうではない者は労働力が減るという事で嫌がられましてね」
「そうですよね」
なんか、それっぽい事を学校の社会で聞いた気がする。
寺小屋文化はあったけれど、やっぱり行けない子は行っていないわけで。農家では子供一人ひとりが貴重な労働力なのだ。
「でもその後、別の神子様が引き継ぎ、人を集める為に給食という方法を使われました。貧しい家の子は、食事を食べる為に通うようになり、また子供の栄養失調が減ったことで、死亡率も下がりましたね」
おっと、またもや同胞が頑張ったんですか。
食べ物大事は、どこの世界も変わらないらしい。
「後は、運動会、文化祭などを学校の視察に見えて広めた神子様もみえましたし、剣闘士などの野蛮なものではない、様々な運動や格闘技などを広めて下さる方もみえました。学校は、神子様からもたらされる文化の発祥場所であり、多くの神子様が知恵を貸して下さる場所となっています」
文化の発祥場所って。
なんだか大げさだなと思うけれど、歴代神子がこの国を色々魔改造していったのはよく分かった。
「えっと、歴代の神子が結局魔改造……じゃなくて、色々この国に対して情報提供をしたのは分かりました。それで結局、神子の皆さんはどんな祝福をされたんですか?」
自分の知っている情報を使って俺TUEEEをしていたのは分かったけれど、私がしなければいけないのは祝福だ。
町を歩いたけれど、やっぱり神様から声がかかることはなく、何をすればいいのかさっぱい分からない。このまま何もわからなかったらどうしようと不安になる。
「ですから、今話したことですよ」
「へ?」
「異世界は、私達が暮らすこの世界よりとても発達しています。実際にまだ召喚はできていませんが、忍術という凄い技を使える者が存在すると聞いた事があります。さらに二足歩行で歩く機械仕掛けの巨大人形がいて、科学の発展で生まれた、巨大モンスターもゴ○ラもいると聞きました。この辺りはこの世界のどこにもないので比べられるものではありませんが、剣一つとっても違うんです。日本刀というのは1000人を切り殺せるほどの魔剣だそうで。私達が使う剣はとてもではないですが、そんなには使えません」
うん。たぶん日本刀も同じだと思うよ。
そもそも現代日本だと銃刀法違反で捕まるから。そして、そんな魔剣は漫画の中にしかないと思う。
「それにあそこを走る、魔道車はえんじにあと呼ばれる神子様のおかげで、最近ようやくできたものなんです。まだ馬車が主流ですが、これからはあのタイプが普及すると思います」
「えっと、魔道車ですか?」
「はい。体内魔力を使って走る四輪駆動の車です。これなら、たいきおせん? というものもないから、夢の車だひゃっほいと叫ばれ、その神子様は先日帰られました」
うん。今のところ、日本はガソリンが主流で、ようやく電気や水素などのエネルギーも考えはじめられたところだからね。
日本にはない魔力というもので動く車というのは、まさに夢の車だろう。きっと、魔力で動くってすごくね的な感じから始まった魔改造な気がする。ひゃっぽいとか言っちゃってるあたり、開発はさぞかし楽しかったのだろう。
「神子様は、代々真面目で、一つの事に集中してやられました。朝早くから夜遅くまで働き、時間厳守。むしろ私達の方から休憩するように言わなければ休まれないほど勤勉で、そんな姿に感銘を受ける者たちも大勢見えるのですよ」
うん。あれだね。日本人の悪い癖。ワーカーホリックだね。
それとオタク気質が混ざり合って、とことんまで突き詰めてやってしまうのだろう。仕事が趣味なんていう人も実は結構多いと思う。だからブラック企業ができてしまうんだ――と話が脱線した。
「祝福は、こうやって神子様が、神の住む理想郷からもたらしたものを指すのです。この世界が理想郷と同じレベルへ到達する為にも、我々は誠心誠意神子様が暮らしやすいようにサポートさせていただきます」
えーと。
つまり歴代神子は、現代知識TUEEE的な事をやって、それが祝福扱いになっていると。
そして、色々問題もある日本が、この世界では神が住む理想郷イメージになっていて、神子なら何でもできると思われていると。
「ですから、神子様も、何か思いつかれたら、是非申し付けて下さい」
「……ははは」
おーい。歴代神子ども。
お前らが皆してオタク気質丸出しで、どんどん文化レベルを上げているから、既に色々追い越されている部分がチラチラ見えるんですけど!
そして私ってば、特に特化型じゃない、普通の女子高生なんですけど!!
色々無理ゲーなんですけどっ!! どうしてくれるんですか?!
「もしも発言が許されるなら、個人的には二足歩行の巨大人形が気になっております。神子様と同じぐらいの年齢の方が乗られ、操縦するんですよね」
ええ。そうですね。でも、それアニメの世界ですから。
お台場に行けばあるとか、実はすでに完成しているとか嘘ですから。だから、きらきらした目で見ないで下さい。
勘弁して下さい。そうでないと――。
「……善処します」
作るしかなくなるじゃないですか。
一応工業系の学校には通っているけれど、巨大ロボとか無理だから。はっ。でも、二足歩行のロボットなら、もしかしたら――。
私は頭の中で、魔法と機械の融合はできないだろうかとチラッと考えた。
その後、モ○ルスーツができたかどうかは、神のみぞしる話だが、私が無事日本へ帰れたことだけは伝えておく。
だから私より後に召喚された人、頑張れ。超頑張れ!
日本人の勤勉さがあれば、きっとなんとかなるはずだ。ちなみに工業系の皆さん、シルフィルは、今ネコ型ロボットが持っている四次元ポケットに興味を持っているようですよ。