第五廻「食べ物の怨みは怖い」
プチキャラクター紹介
平澤 広太
主人公。
16歳。
悪霊、トイレのよし子さんの舎弟でもある。
実は勇者の素質を持っていた為に異世界に召喚されてしまう。
五十嵐 良子
通称、トイレのよし子さん。
歴代最強のスケ番、ただしトイレで転倒して死亡、享年17歳。
学校のトイレに取り憑いた悪霊さん。
ステータスが異常。
波井沢 麻実
通称、這いずり女。
夜の学校を徘徊する悪霊さん。
階段から落ちて死亡、享年17歳。
佐田 鏡子
通称、演劇部の大魔鏡の元凶。
いじめっ子を祟り殺した悪霊さん。
病死、享年16歳。
大魔王ツェペッシュ
異世界の大魔王。
広太が勇者として召喚される前に殺そうと魔王城に召喚した。
極度のロリコン。
天才魔導師ナタリー
魔王直属の魔導師。
氷属性の魔法と異世界から広太を召喚するほどの魔法を使える。
「ま、魔王様! た、大変で……こっちの方が大変だーーーっ!?」
状況を説明しよう!
プリンを食べていたよし子さんは最後の一つを食べるというところで異世界に召喚された。
プリンをお預けされたよし子さんは元凶であるナタリーちゃんをボコボコに……できるわけもなく。
見た目小学生のいたいけな少女の代わりに上司であるダンディなおっさん(魔王である)に殴る蹴るの暴行を行っている真っ最中である。
「おらっ! このっ!」
ドカッ! バキッ!
「…………」
ゲシッ!
「ごめんなさい! ごめんなさい! ありがとうございますっ!」
……うん、僕の見間違いじゃなければ、ナタリーちゃんも一緒になって蹴ってるよね?
んで、なんでナタリーちゃんに蹴られた時だけ全力で嬉しそうな顔するの?
「き、貴様ら、何をしている!! ってナタリー様も何をしてるんですか!?」
「…………」
ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ! ドゴッ!!
「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! ありがとうございますっ! ヘブン状態っ!!」
そこで僕は頭が牛の怪物が居るのに気が付いた。
「うぇっ!? いつの間に!!」
「さっきからおったわ! 貴様っ! 魔王様から離れ……」
牛男がそう言った時、彼が入って来た扉から恐ろしい殺気が放たれた。
僕と牛男はそろって壊れたおもちゃの様に扉を振り向く。
よし子さんとナタリーちゃんはまだ魔王を蹴ってるけど。
片方だけ開け放たれた扉の向こうは闇、黒いペンキをぶちまけた様な圧倒的闇。
ヒタッ…… ヒタッ……
そこから段々と近づいて来る、不気味な足音。
やがて足音は閉じられたもう片方の扉の前で止まり……。
ギイイィィィィィ…………。
【み”ぃ〜つけ”た”ぁ〜……】
真っ白な不気味な腕で扉を押し開け、真っ黒な髪を垂らして、血走った目でこちらを睨む……。
「ギャアアアァァァァッ!!!」
「うああぁぁぁっ!? ……って、麻実さん?」
学校の怪談、這いずり女の波井沢 麻実さんが居ました。
「……って、なんだ、広太じゃない」
「なんだって、酷い言われようだね」
僕は得意のブリッジをしながら扉を開けた麻実さんを見下ろす形で苦笑しました。
「麻実さん、鏡子ちゃんは?」
「それなら……」
麻実さんは僕の後ろ、よし子さんとナタリーちゃんが魔王を蹴っている辺りを指差した。
「私様にあんな木っ端妖怪をけしかけて、ざまぁありませんわね! お〜っほっほっほ!」
「誰だ貴様……お、お嬢さん、我輩と夕食「……フンッ!」あいたぁーっ! ナタリーちゃん! 尾骶骨はっ! 尾骶骨はやめてっ!!」
一緒になって魔王を蹴ってました。
「あ、そう言えば牛男は……」
「く、黒髪……長髪……ば、バケモノ……ぶくぶく……」
泡吹いて気絶してらぁ。
「麻実さん、何したの?」
「ちょっと追いかけてやっただけよ。いきなり襲い掛かって来た奴らは鏡子の呪いで今頃は自分の幻と戦ってるわよ」
鏡子ちゃんって案外強いんじゃ。
「そんな事より、ここは何処なのよ?」
「なんか、異世界の魔王城に呼ばれちゃったみたい……」
「なによそれ? スーファミじゃああるまいし」
「いや、よし子さんもファミコンとか言ってたけどマズくない?」
いや、見えない力とかが。
「なに言ってんのよ。ファミコンって言ったらファミリーコンぴゅう太の事じゃない」
「混ざってない!?」
なんでこんな感じの人しか周りに居ないんだろうと頭を抱えたくなるも、何とか我慢して、魔王をボコボコにしている三人を止めに入った。
「はいはい、またプリン買って来てあげるからその辺にしときなよ」
「おい、だってよ? 世界の半分くれたら見逃してやってもいいぜ?」
よし子さん、それバッドエンド!
「……な、ナタリーちゃぁんっ!」
するとうずくまって蹴られていた魔王が涙目で叫んだ。
直後、僕たちはついさっき経験した浮遊感に襲われたのであった。
******
「……はぁ、はぁ、ナイスである、ナタリーちゃん」
「……ん」
「くぅ〜! よし子とか言ったかあの女! 魔王軍の全戦力を持って葬り去ってやるからな〜!」
「……しまった」
「なんか不吉な言葉が聞こえたような気がするが? ナタリーちゃん?」
「……捕らえていた姫も一緒に飛ばした」
「ナタリーちゃぁぁぁぁん!!」
******
「うわぁっ!」
「いでっ!?」
「よっ!」
「ひゃうっ!?」
「きゃあっ!?」
ドサッ!
ゴッ!
シュタッ!
ポスッ! パッ! ドサッ!
トサッ!
僕たちは各々が様々な音を立てて落下した。
僕はお尻をさすりながら辺りを見回。
どうやら草原に飛ばされた様だ、真上にある太陽、心地よい風、まばらな雲。
見れば、よし子さんは岩場に落ち、麻実さんは華麗に着地し、鏡子ちゃんは麻実さんにキャッチされた後落とされ、ドレスを着た女性は……ドレスの女性!?
と、とりあえず状況を整理しないと!
「み、皆大丈夫!?」
「ギャアアアァァァァ! ケツがぁぁぁぁ!」
「私は大丈夫よ」
「私様が大丈夫ではありませんわよ! なんで離すんですの!?」
「いたたた。……こ、ここは?」
よし子さんは転がり周り、麻実さんは佇み、鏡子ちゃんは麻実さんに掴みかかっている。
そして、例の女性も居る。
「えーっと……「「「誰?」だ?」よ」ですの?」
僕たちの視線はピンクのドレスを着た金髪ロング髪の女性に集中していた。