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第四廻「呼ばれて落っこちた」


暗雲立ち込め、雷鳴が轟く。

辺りには草木一本生えておらず。

野生動物か、はたまた人間か、白骨化した死体が散らばる山。

異形の化け物が闊歩し、鴉が飛び回る。


そこにそびえるは重力に逆らう様な歪な城。



「ふぁっはっはっはっはっ!」



その城の玉座だろうか。

豪華でありながら不気味な調度品を揃えた一室に笑い声が響いていた。


王座に座って笑い声を挙げるのは、紫の肌をした、黒いマント、黒いスーツ、W型の髭の男だ。

彼は玉座からローブを纏った少女に話し掛ける。


「ふぁっはっはっはっはっ! 流石は我が魔王軍が誇る大魔導士ナタリー! まさか、人間共が勇者を呼ぶ前に我々が勇者を呼び出すとは、流石は天才大魔導士ナタリー!」


「……ん。当然、もっと褒めろ」


「褒美に我輩の事をパパと「……死ね変態」ナタリーちゃん酷い!?」


漆黒のローブを纏い、水色の髪の少女はゴミを見るような目で玉座の男性を見る。

何故か立ち位置は下からだが視線は上からだった。


「……ロリコンは殺した方が良い」


「ナタリーちゃん? いや我輩、魔王だから! 殺したらマズイから!」


魔王(自称)は咳払いをすると佇まいを直した。


「……して、ナタリー。聖なる力を持った勇者を我が魔王城に召喚しているのだな?」


「……ん。召喚したての勇者はザコ」


「ヤツが力に目覚める前に殺せば良いのだな?」


「……ん」


ナタリーと呼ばれた少女は小さく返事をして頷いた。


「流石はナタリーちゃん! 褒美に我輩とお風呂に(ズカンッ!)ナタリーちゃん!? ごめん! ごめんから、いきなり氷塊飛ばして来るのはやめて!!」


玉座に座る魔王の股には巨大な氷柱が突き刺さっていた。

片腕を突き出して佇んでいたナタリーは小さくため息をつく。


「……ズレた」


「当てるつもりだったの!?」


魔王の悲鳴にナタリーは首を小さく横に振る。


「……召喚位置がズレた」


「勇者か!? 確か召喚位置は部下が待ち構えている地下コロシアムだったろう!」


「……異物が三つ混じった。勇者と異物一つがここに召喚される。二つはコロシアム」


「なっ!?」


驚愕した魔王の目の前に魔法陣が浮かんだのはちょうどその時だった。




******




「うわああああぁぁぁぁぁっ!!?」


ドスンッ!


いきなり襲った浮遊感に叫ぶ事しか出来ない僕は受け身なんて取れるハズもなく背中から地面に落ちた。


ボスンッ!


「ぐえっ!?」


背中の痛みに悶える僕の上によし子さんが落ちて来る。

てか、よし子さん、幽霊なのに重たいんですね。

あ、ごめんなさい、顔面を掴まないでください。


「いってーなぁ、んだよ一体」


「いつつつ、も、もしかして他の怪談の仕業?」


僕は激痛の走る体を起こす。

突いた手から石のザラつきと冷たさが伝わって来た。

……あれ?

うちの学校は確かビニル系の床材の筈なんだけど?


「……き、貴様か?」


すると聞き覚えの無い声が掛かる。


視線を上げると、そこには豪華な椅子に座ったダンディーなおじさんが居た。

奇妙なのは肌の色が水色に近い紫な位か。

横には黒いローブを着た、小さな女の子が立っている、そっちは耳が尖っている以外普通の女の子だ、髪の毛が水色だけど。


てか、ここ何処ですか!?

なんか、ファンタジーで見る魔王城のラスボスの部屋みたいだけど!?


「よ、よし子さん! こ、この人も学校の怪談なの!?」


「知らねーよ、こんなおっさん」


よし子さんがどっこいしょ、と立ち上がるので僕も立ち上がる。


「フハハハハ、よく来たな勇者よ。ここは魔王城。我輩こそ、この城の主。大魔王ツェペッシュである!」


「……なに言ってんだコイツ?」


「よし子さん! 思ったけど声に出しちゃダメだよ!!」


「……ここは別世界。疑うなら『ステータス』と唱えてみるといい」


女の子がそう言った。


「なんだそりゃ、ファミコンじゃあるまいし」


「よし子さん……あぁ、その世代なんだね……」


僕はそう言った後、首をかしげながらステータスと呟いてみた。

すると……。



ーーーーーー


name:コウタ・ヒラサワ

Level:05

職業:舎弟(Lv.4)料理人(Lv.6)

属性:火・聖


ーーーーーー



僕の目の前に半透明なプレートが浮かび上がった。

まるでゲームの様だ。


「……舎弟が職業って何なのさ!!」


僕は思わず叫んでしまった。


「……職業は十段階、Lv.4なら一般人よりちょっと良い舎弟」


女の子が補足してくれるが。


「一般人よりちょっと良い舎弟ってなんなのさ!!」


僕は混乱するばかりです。


「フハハハハ! やはり聖なる属性を持っておったか! では我輩のステータスを見せつけてやろう! 絶望に沈むがいい!」


そう言った魔王ツェペッシュの前にステータスプレートが現れる。



ーーーーーー


name:ツェペッシュ・ツェッペリ

Level:2000

職業:魔王(Lv.MAX)

属性:闇


ーーーーーー



れ、Level.2000!?

それに魔王って本当だったんだ!


「よ、よし子さん!!」


こうなったら頼れるのはよし子さんだけだ!


「よし子さん?」


そのよし子さんは自分のステータスプレートを睨みつけていた。


「なぁ、ヒロ? これ壊れてんじゃね?」


「よし子さん、僕はヒロじゃなくてコウ太だからね?」


と、訂正しながらよし子さんのステータスプレートを覗く。


そこにはよし子さんの名前とLevelが……。


「Level.01?」


僕は唖然としてしまった。

まさか、よし子さんが僕よりレベルが低いなんて。


「……ふ、フハハハハハハハハ! まるで赤子ではないか!」


王座で魔王が笑い転げている。

でもこのステータスプレートなんかおかしい様な……?


しかし、僕が悩む暇は与えられなかった。

次の瞬間、よし子さんの目の前に魔王が迫っていたのだから。


「……まず貴様から、死ね」


魔王の振りかぶった腕がよし子さんを……。




捉えなかった。




魔王が迫ってきた瞬間、ヒユッ、という音と共に魔王が消えたのだ。


「……んだよ、隣町の番長のが骨があらぁ」


よし子さんは退屈そうに、タバコを吸っていた。


「……よし子さん!? ま、魔王は!?」


詰め寄る僕に、よし子さんは壁を指差した。




そこには上半身が壁にめり込んだ魔王? が、居た。

多分、気を失っているんだろう。


「よし子さん、ステータスプレート見して?」


僕のお願いに、舌打ちしながらよし子さんはステータスを出してくれた。



ーーーーーー


name:ヨシコ・イガラシ

Level:OI

職業:トイレの祟り神(Lv.9)喧嘩女神(Lv.限界突破)

属性:闇・神・トイレ


ーーーーーーー



「……これ、01じゃなくてローマ字のOとIだよね。文字化けしてるだけで……」


ちょっと深呼吸しようか。


「……どっからつっこめばいいのさぁぁぁ!!」


異世界の城に僕の叫び声が響いたようです。

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