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29A列車 田沢湖線

 仙台(せんだい)を発車した「こまち19号」は颯爽と北の大地を走って行く。新花巻(しんはなまき)を過ぎたあたりからだんだんと景色がはっきりしてくる。盛岡(もりおか)に着く直前にはもう雪は完全に止んでいた。

 盛岡(もりおか)から「こまち」と「はやて」に分かれる。E3系(イースリーけい)「こまち」はここから在来線を通って秋田(あきた)まで行く。解放には時間がかからない。「こまち」はただ発車していくだけで「はやて」と離れる。

「ここから田沢湖線(たざわこせん)に入るね。」

(もえ)が言う。

「そうだね。」

「こまち」は進路を西に変える。こちらから見る景色には新青森(しんあおもり)に向かって延びている東北新幹線(とうほくしんかんせん)の高架橋が見える。その高架橋はどんどん見上げる位置に上がっていく。こちらの走っている場所が下がってきているのだ。在来線を走るので、普段は通らない踏切もある。さらに「こまち」の通る田沢湖線(たざわこせん)は全線単線だ。途中の信号所などで東京(とうきょう)行きの「こまち」とすれ違う。白に染まっている中を走って行く。どうしても、鉄のレールの上を走っているという感覚がない。

 まだ盛岡(もりおか)を出てから一駅も通過していない。「こまち」のスピードが落ち始める。

「お急ぎのところ恐れ入ります。間もなく、東京(とうきょう)行きの「こまち号」との待ち合わせを行います。発車まで今しばらくお待ちください。」

どうやら、最初の「こまち」交換駅らしい。「こまち19号」15号車の乗車率は4割ほど。C・D席側がちょうどあいている。僕たちの座っている側にはホームがある。本来ならこのホームの向こう側に線路があるが、こっちはホームしかない。どこをどうやっても「こまち」がこちらにやってこないことは分かる。しばらく待っていると東京(とうきょう)行きの「こまち」が入線した。車輪の部分を除くと雪がこびりついて、ほとんど茶色の色を隠している。

「すごいねぇ・・・。雪の中走ってくとあんなふうになるんだ・・・。」

「・・・そうらしいね・・・。」

かくっと揺れて、こちらが発車する。今すれ違った列車は「こまち22号」だということが後で分かった。

 E3系(イースリーけい)は白銀の世界をかける。相変わらず、線路の上を走っているという感覚はない。サラサラと聞こえる行きの出す音が列車に乗っているという感覚を消していた。

 田沢湖(たざわこ)に到着。ここで車内のご年配の方のグループが下車した。この季節に観光にでも・・・。いや、別の目的で来たのだろう。田沢湖(たざわこ)の次の列車の表示を見てみた。それは「こまち24号」だ。次の列車が「こまち」っていうのもなんか新鮮な気がする。こういう在来線の駅なら次の電車は普通電車っていうのがほとんどだろう・・・。その「こまち24号」とは田沢湖(たざわこ)の次の駅で入れ替えをした。

 大曲(おおまがり)までの間に入れ替えた「こまち」は「こまち22号」と「こまち24号」。大曲(おおまがり)から秋田(あきた)までの間に在来線との併用区間を走行して、「こまち26号」とすれ違った。

 秋田(あきた)に到着したE3系(イースリーけい)・・・。往路はこれで終了だ。反対側のホームには残り少なくなったE2系(イーツーけい)と併結する「こまち28号」東京(とうきょう)行きが出発を待っている。E3系(イースリーけい)R22編成。

「・・・。」

「とんぼ返りで「これ」に乗りたかったね・・・。」

「・・・。」

「行こう。」

「まだ待ってよ・・・。」

「こまち19号」E3系R23編成。「こまち28号」E3系R22編成。ちょうど、姉妹でした。

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