28A列車 トンネルを抜けると・・・
雨だったのは宇都宮ぐらいに差し掛かってくると雪になった。最初は車窓が白くなっているだけで、どこかに積もっているという感じは受けなかった。しかし、走って行くと高架橋の縁に白い筋が走るようになっていった。雪は少なくても積もっているのだ。15号車の真ん中あたりで話しに盛り上がっているご年配のお客様たちは外に雪に気付いて、そっちの話になっている。
「雪だぁ・・・。」
「ホント・・・雪だぁ・・・。」
「って、新快速で大阪に戻ったときだって見たじゃない。」
「でも、こんな風に降ってはなかったよ。」
確かに。こんな風には降っていなかった。安のあたりまでは雪がチラチラ舞っているのが分かった。でも、大阪には雪は積もっていなかった。結構惜しいところまで冬将軍は降りてきていたというのに・・・。
那須塩原までの間に雪がだんだんと積もっていく。「こまち」は線路の上を走っている感覚がだんだんなくなってくる。那須塩原を通り過ぎるとトンネルがやってくる。トンネルに入ってしまえば、しばらくの間雪景色はお預けである。しかし、トンネルを出た瞬間・・・、
「うわっ。」
二人でハモった。そこにはトンネルに入る前よりも雪が深く積もっている。さっきはコンクリートでできている起動のほとんどは湿った色をしていたのに、今度はうっすらとではあるが白になっている。周りの雪を深くなっている。その一瞬で、すぐにまたトンネルに入る。そして抜ける。
「わっ。」
「スゴイ・・・。」
さっきよりも雪は深くなった。そういえば下から聞こえてくる音が「サラサラ」と言った感じになっている。これって、もしかして雪を巻き上げている・・・。下を覗いてみるとほんの少し上りの線路が霞んでいる。
「・・・。」
こんな光景をじかに見るのが初めてだ。ネットにアップされている東北新幹線の雪のシーズンの動画を見てもすごいと思うが、やはり、リアルには勝てない。これを外から見たら、今どうなっているのだろう。それを想像する。
しかし、「こまち」はそう都合よく僕たちを余韻にひたらせてはくれない。またすぐにトンネルに入る。そして抜ける。ぬければさっきよりも雪の深くなった車窓が広がっている。前回新青森に行ったときは晩秋でほとんどの風景が茶色に近いような色になっていたのに・・・。今は一面真っ白である。そして、前に遠くに見えていた山は雪のせいで見えない。
トンネルをぬけるたびに深くなっていく雪。白く染まって行く眼下・・・。変わっていく走行する音・・・。全部が未経験だった。新幹線・・・いや。列車に乗ってこんな経験はしたことがない。函館にいったのは夏。青森に行ったのも夏。富山に行ったのも夏。新青森に行ったのは晩秋。でも雪はなかった。心が完全に高ぶっていた。自分はこのあたりの景色を覚えていない。このあたりから仙台に着くまでの間ちょっとうとうとしていたし、福島を通り過ぎてからは寝落ちてしまっていたから・・・。でも、今回は寝落ちなんて単語は出てきそうにない。今日は「こまち」が車窓と大いに楽しませてくれる。
「次はどうなってるのかなぁ・・・。」
萌がそう問いてきた。
「えっ。うーん。やっぱり、一面真っ白の世界でしょ。いいなぁ・・・。」
「子供みたい・・・。」
「別にいいじゃない。」
「こまち」は雪の深い世界へ猛進する。窓の下をうっすらを白く染める巻き上げた雪。これが・・・。銀世界をかける新幹線なんだ・・・。
私の住んでいるところには雪が降らないので・・・。一度でもいいから見てみたかった光景です。