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10:ろりこんふぇにっくす

 いかにも!我輩が漢塾塾長!江田島○八である!

 とてもいえばよかったのだろうか。いやそれじゃよけい可笑しいか、たんなる勘違いも其れでは他から見てもはなはだ可笑しい勘違いになってしまう。

 くそう!俺が第二次世界大戦時に10人いれば……。

 戦局とか別にどうにもならないけどね。

 死人が増えるだけだかっこ笑。


 まあお得意の冗談という事で、その場を宥めて、そうだす、わだすが変なしーなかずきです、なんて変なおじさん風に言う事もやめて、自重して、自粛して、おとなしく名乗った。


「あぁ、俺が……………………椎名一輝だ」


 溜めました。

 ダンシング走査線の室井さんのつもりで。

 俺が、の後の沈黙と重々しい雰囲気、そして厳しくむにむにする俺の顔を見ながら、ごくりと唾を飲み込み、汗を一筋、二筋と息を呑んで流した新一=コナンは緊張を高めすぎて、椎名と名乗る事には蒼白になっていた。

 なんでだろう~*2

 なんでだ、なんでだ、なんでだ、なんでだろ~~。

 あのジャージ10万スンだってよ。あほらしいよね!


 たぶんそれは息を飲み込みすぎたための酸欠だろうと言う事で放置しましたが、コナンの言う事にゃお嬢さんお逃げなさい、なんてもりのくまじゃなくて先ずはコナンの素直な挨拶だった。


「僕はこの横の建物の上に住んでいますので、何かあったらいつでも来てくださいね♪」


 にこやかに去っていったコナンの笑顔があまりに純粋でまぶしいと感じたのは、俺が汚れてしまっている所為なのかもしれない。

 とりあえずコナンに免じて、山積みの男共を一掃して、まあ痺れをといて、帰ってもらったんだけど。

 クモの子を散らすような感じというのはあんな感じなのかなと思うように、ばらばらに散っていったの。

 流石に心が痛んだね!吐き気を催す邪悪とは遠く離れているだろうけど俺の良心がちょっとね。しくしくと痛むのだよ。なぜなら。


「ぼうやだからさ……」


「心を読むなサチコ……」


 打って変わって、閑古鳥が鳴くように、まるでそこは猛獣の住まう危険地域であるかのように、虫の子一匹通らない、簡素な通路が広がっていた。


「よし、サチコ、とりあえず……」


「はい、マスターとりあえず……」


「「見なかったことにしよう!」」


 さすがサチコ。俺の心を汲んでくれる。

 さてどうすっぺ。


「とりあえず、だ。拠点は決まった。まずは周りを見てこようか。ただし漬物。てめーはダメだ」


「!?」by漬物


「まあ幾らマスターといえ、生活には物資が必要です。ユニットを生産するにしても……ですね」


「そういうこった。まずは……腹ごしらえだ!」


「世はグルメ時代……」


「俺のグルメ細胞に適応する食材はあるのだろうか……」


「マスターはひ弱ですから何でもいいんじゃないですか?」


「中々言うじゃないかサチコ……まあ平均はあると思うけどね。草食系なのは否めないな」


「今は創造系ですけどね」


「俺は強化系が良かったな。念は」


「えー変化のほういいじゃないですか。だってヒソカですもん」


「うわ、さちこまじ狂信者」


「数字の1!」


「正解だ……まあ行くか」


「そうですね。じゃあ私はここでお待ちしてます」


「え?マジで?」


「やる事がありますので……何か?」


「いやてっきり行くもんだと思ってたから……まあいいか。じゃあ留守は任せたぞ。せいぜいやり過ぎないようにな」


「ボンボヤージュ」


「なんかあったら……いや、出来れば使いたくないが……空気大砲までならヨシ!」


「どかんっ!」


「はえーよ!どあほう!」


「失礼、ぽちょむくれ」


「さすがキッドだぜ。まあ俺は行く。金は持ったからな」


「偽造ですがね」


「言うな。少しだけだから大丈夫大丈夫……大丈夫だよな?」


「さぁ?」


「神様スイマセン最初だけだから勘弁して……うん!オッケー!大丈夫だ問題ない。無問題。俺の屍を超えていけ。よーし天啓をもらった!逝ってくる!」


「さっさといけks」


「なんか久しぶりだなksとか言われるの……しみじみ……」


 そんなこんなで俺は拠点を後にする。

 サチコが残るといったのは意外だったが、それ以上に新しい世界を、現実的な面で生活区域を見てみないと何事も進まないと思ったのだ。

 ファンタジーな話を見たり聞いたりするのはどうでも良いが、実際に体験するとなると、平和な世界で生きてきた俺みたいな半分ニートな奴はきっとしんどい。

 それを何とかするために、この世界の常識を見なければいけない。

 まずは其処から何がよくて何がダメかを判断するのだ。

 どこかにひっそり引きこもって超科学を満喫するのも良いかも知れないが、俺は折角のこの世界を楽しむ事にしたんだから、一つ一つ知っていく事も楽しさだろう。

 いつかどこかで、ここを見切ったら見切ったで、引きこもれば良い。

 それよりも今は、新しいゲームを買ったかのように、読んだ事のない本を読んだときのように、見知らぬ世界へ思いを馳せるのだ。


 俺は拠点へと連れ去られ、連れて来られたときの道をなんとか思い出しながら、確かコッチだと大通りを目指して歩く。

 なんとか着いた頃には若干疲労の色が濃かった。

 なぜだ!

 坊やだからさ。

 いや、普通に迷ったンだよね。

 入り組んでるし、行き止まりばっかりだし、道行く人はよそよそしいし。


「はぁ、もう不安になってきた……」


 スラム街という事で若干怖い気持ちもあったのだが、まるで俺に興味がないように無視する人ばかりだった。

 別にそれはいいんだが、道を教えて欲しかった……。

 そうしてやっとたどり着いた大通りは、本当に人が多かった。

 何処まで人がいるのかわからないが、もしここが日本だったら祭りでもやっているのかと見紛う程の人ごみだ。

 それがこの町が都市である事、それなりの大きさの町であると言う事が実感できる。

 そしてその人ごみを進むこと数分で、鼻を擽る良いにほひが俺の脚をそちらへ運ぶ。


「あぁ、肉の焼ける匂い、焦げた何かの臭い……腹が、鳴るぜええ!」


 漂ってくる様々な、屋台から香る食べ物を焼き、炙り、混ぜ込む匂いが立ち込める。


「突撃隣のなんとやら……!」


 通りを埋め尽くす屋台の数々、見たことの無い食べ物に、それ以外の食べ物以外のものも幾らでもある。

 まるで子供の頃に戻ったかのように、何もかもを珍しく覗き込みながら、買い漁る。

 気分は子供!財布は大人!タチが悪いね!


「マモルの尻尾焼き!ナオキかおまwwwうほ!チョクボの手羽先とかFFか!wwwせみもぐらの包み焼きってオエーwwオレンジジェムwwMPかいふくすっぞww」


 なんだかんだいって気持ち悪いものも沢山あった。

 それよりも匂いがやば過ぎて、見た目がグロくてもつい買ってしまった。


「あんちゃん!金貨なんかで払われてもお釣りがないよ!?」


「大丈夫だ!問題ない!ここからここまで全部くれ!」


「ッセェー、アラッシャッスー!うーーーーい。(ォライッ、ォライッ」


 気分はブルジョア。買い漁る。まあ偽造だけどねテヘペロ。

 山盛りの食い物をとりあえず何でもBOXとなずけたアイテムカバンに突っ込む。

 ご都合?知った事か!!

 ある程度の大きさと質量であれば、ゲームのように収納できる魔法のポーチ。素晴らしいものを創ってしまった……。

 何が欲しいかと頭で考えながら手を突っ込んで引っ張り出すと目的のものが出てくる仕組みだ。

 具体的にはなにがどーなってるのかわかりませんが。

 四次元ポケットみたいなもんじゃないのかと思えば、万事オッケーッしょ!

 所持可能限界も超えたことだし、所持金がつくまで食い尽くす!



 無理でした。


「俺の胃袋は、普通だ……」


 どっかのフードファイターみたいに宇宙じゃねえんだよこちとら。

 屋台で一人分の串焼きに焼きソバみたいなのに、たこ焼き見たいなものとか、イカ焼きの様なものを2個3個と食べていくうちに、あっと言う間におなかがいっぱいになってしまった。

 そんでもって油の多いものを一気にドカ食いしてしまったために、胃もたれして、胸焼けして気持ち悪くなっちゃって、路地に入り込んでへたり込んでいるわけですね今。


「うっぷ、気持ちわるっ……」


 グロさも珍妙さもありながら、屋台の食べ物は非常に上手かった。

 どろりとしたソースが絡んだ尻尾焼きなんて俺今肉を食っているよ!なんて食い応えがあったし、オレンジジェムなんて大きなグミのように歯ごたえがありながらも、つるんとした咽越しがたまらなかった。

 買い込みすぎた奴らはサチコのお土産にしようと思い、残飯処理を確定した後、とりあえず落ち着くまでへたり込む。


「おら、これでも飲みな」


「あ、ああ、ありがとう……」


 手渡された鉄製のコップを受け取りグビリと飲み込む。

 滑らかで有りながら果物果汁の様な甘い、それで居ながら飲みやすい液体を咽を鳴らして飲み込む。

 驚いたことに嚥下した瞬間から、胃袋にそれが広まるような感触があり、そして徐々にと言うよりは早く、気分が晴れてきた。


「なんだこりゃ?すげえな……」


 飲み干したコップをマジマジと見つめて、そういえばコレはと思い見上げる。

 そこには俺を見下げ、右手をコレでもかと伸ばしてにこやかに笑う、フードを被った少女がいた。


「ふっふ、2銀貨だ!」


「金とるんかい!」


 思わず突っ込むのだが、まあ飲んでしまったからにはしょうがない。まあいいかとポッチから出して渡す。


「有難う。美味かったよ」


「へっへ、毎度あり!あんた中々いい食いっぷりだったが、組み合わせが悪かったな。そんな時はウチのポーション飲んでさっぱりしとこうや!」


 にこやかに笑う彼女は、微笑むとかそういうのではなく、実に現金な笑いだった。

 よく見ればちょっとしたはずれだが、確かに張りぼての様な屋台がある。襤褸を幕のように張ったお粗末なモノだが。


「いやはや、目をつけてて正解だった。兄さん、ここ初めてだろ?」


「まあ……そうだな」


 別に嘘をつく必要もないし、なんで彼女がこんなところで店をやってるかなんてどうでもいいが、まだ幼いことと、金にしっかりしている所、抜け目がない所が、余計にも危なく見えてしまった。


「おっとそんな目で見るなよ、別にやましい事は考えてないからな!でも兄さんが考えてるっていうなら1金貨くれるならやってもいいぜ?」


「んなっ!お、おれはロリコンじゃない!」


 目を見開いて彼女を見る。

 何を勘ぐったのかはわからないが、どうも勘違いされてしまったようだ。


「ひゃはは!冗談だよ!ここは食いモンを食う所だ、そっちはまた別な所でやっとくれ。んまとりあえずポーション買ってくれてアリガトな兄さん。気をつけて帰りなよ」


「ああ、有難う助かった。随分良くなったよ。さて帰るかな」


 長居するのも悪くないが、彼女はどうもそういった感じじゃない。


「おっと、兄さん唯一つ。あたしがここにいるのは内緒にしてくれよ?」


「おい、それはもしかしてやばいのか?」


「へへ、そういうわけじゃないけど……まぁ転々としてるからな」


 誤魔化そうとしているのが丸解かりだが、それは汲んでやって、とりあえずそこを後にする。度々礼をしっかりと言って。

 帰路で思うことは、子供が商売をする世界、それも明らかに無許可。

 ボロを纏い、付け入るようにして金を稼いだ点も、そうして彼女は生きてきたのかも知れないと思った。




「サチコ、戦争だ!」


「クリーク!クリーク!クリーク!!さてマスター何があったんでしょうか?とりあえずモチツケ」


「この店で一番良い杵と臼を頼む」


「あいよ!」


「とりあえず俺はこの町を牛耳る」


「あいやー。なにこのマスター気持ち悪い……」


「いやまあちょっと垣間見て来たんだけどな、ここな、貧富差がヤバイと思うんだ。とりあえずソレを無くす」


「……サチコはついて行きますよマスター……はぁめんどくさ」


「おいこらwまあまだ企画段階だがな」


 きっとコレはイベントなんだ、俺が何とかしないと。

 なんて正義感を気張っている訳じゃない。

 ただ、納得行かなかっただけだ。

 ならば、それも直していこう。


 俺にはその力があるはずなんだ、と中二臭くもどこか滾る心根に俺は心地よさを感じていた。


真面目か!

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