事情を聞いてみよう
私が助けた彼女の名前はミーナというらしい。
両親は両方ともペルシャ猫というなんか血統書まである良い所の猫なんだそうだ。
そんな猫が外ぶらつくなよ・・とも思うが、彼女の飼い主は『猫は自由に生きるべき』
という考えの人間らしく、わりと自由にさせてくれているらしい。
勿論首輪には発信機が付いているし、長い間帰らないと大勢での捜索が始まるらしいが、まぁ、概ね自由に暮らせているそうだ。
この町に引っ越して来て間も無い頃、外を歩いていた時にこのあたりのボス猫、デンがミーナを見て一目惚れしたらしく、度々手下の猫達を寄こしてくるのだそうだ。
デンは猫にしては巨体で力強く、太っているのだが素早いらしい。どんな攻撃も脂肪で跳ね返す防御力も兼ね備えているチート猫らしい。
頼りがいは充分なのだが、ミ‐ナはデブが生理的に無理らしく、発情期の時にデンしかいなかったとしても一緒になる事はないと断言していた。
しかしそこまで言われているデンが少し可哀そうに思えてきた。
ボス猫と言う事はここら辺一帯を守っているいわば守護神だ。
きっとデンがいなければ他の町に狙われてしまっているだろう。
「友達くらいにはなってやればいいじゃないか。」
「それくらいじゃデンは満足しないんです。それで済むなら私も友達くらいにはなってます。」
ミ‐ナはため息を吐く。どうやら友達には最初になってるみたいだ。
「会う度にキスしようとしてくるし、お尻触られるし・・・もう嫌なんです。」
「なんか、ただのセクハラオヤジみたいなやつだな。」
「うぅ・・会うと絶対お尻触るんですよ?あり得ないです!もうっ!」
徐々に私にも慣れてきたのかミーナは地団駄を踏んでいる。
少しおてんばな感じがするこっちの方がミーナの素なのだろう。
「ところで、あなたの名前は何て言うんですか?」
そこで私はミーナにだけ名乗らせていた事に気付く。
これは失礼だったな。
「あぁ、名乗りが遅れてすまなかった。私はクロっていうんだ。まだノラになりたてで、この町にも来たばかりの新参者だよ。」