戦ってみよう
私は塀から降りて二匹のオス猫から白いメス猫を護る感じに割って入る。
白毛のメス猫は私の登場にビクリと震えてたものの、何も言ってくる事はなかった。
代わりに目の前にいる二匹のオス猫に物凄く睨まれているがな!
正直勘弁してほしい。私は先日まで殆ど猫と接していなかったのだ。
ずっと元撤に修業させられてきたため、猫と接する機会がゼロに近かったのだ。
うーむ、どうしたものだろうか?
悲鳴が聞こえたからメス猫を守る形で飛び込んだものの、もしかしたらこっちの方が悪い事をしたのかもしれない。
ここは確認しなくてはいけない。眼の前にいるオス猫達がこんなに殺気立っているのは何かされたからかもしれないからだ。
元撤も言っていた
―女は平気で騙してくるからな!慣れない内は気を付けろよ!―
その時の元撤の寂しそうな顔は忘れることができない。
一体なにがあったんだろう?いや、今はそんな事どうでもいい事だ。取りあえず事情を聞いてみる事にしよう。
「なぁ、あんたら何で2人でこの子を襲おうとしてたんだ?」
「なんだお前よそ者か?こいつが我らがデン様のお気に入りだから連れて行こうとしただけだ!ケガしたくなかったら退いてろや!」
何故か怒られてしまった。理不尽だ。
確かに私はよそ者だし事情を知らないで割り込んできた空気が読めない奴なのかもしれない。
だけどこの子は嫌がってるじゃないか。助けを求めていたじゃないか。
「あー、なんていうか、あんた達が悪者ってのは良く分かったよ。」
「なにいってやがっ・・!?」
もう聞く事もないだろうと思った私は茶色の方の首に後ろ脚を挟みこみ、縦方向に一回転する。
茶毛のオス猫は突然の事だったせいか何の抵抗も出来ないまま私と一緒に回転して最後には頭から地面にキスをした。
これぞ元撤直伝『地獄車』である。
「おい、ダマ!おいしっかりしろ!」
思い切り叩きつけられた茶毛はダマというらしい。灰毛の猫が起こそうと体を揺すっているがあの様子じゃ、しばらくは起きないだろうな。
「覚えてろよ・・お前の顔はもう覚えたからな。」
結局灰毛のほうは下っ端ぽいセリフを残して去っていった。
茶毛もしっかり持っていくあたり最低限仲間を思いやる気持ちはあるみたいだ。
ただ茶毛の体は灰毛よりも大きいため思いっきり引きずる形になっていたが。
多分茶毛が目を覚ます頃には体半分の毛が抜けているんじゃないだろうか?
そう考えると笑いが止まらなかった。