こんにちわ隣町 こっちに来るな厄介事
隣町には日が昇る前に辿りつく事ができた。
日の出を見ながらこれからの事を考える。
「まずは住み家・・いや、エサ場を探さないとな。」
走りっぱなしだったせいか喉もカラカラだし、小腹も空いている。
眠気も酷いがまずはご飯が先だろう、うん。
「止めてください!」
そう思いながら、しかし当てがある訳でもないのでフラフラ歩いていると何処からか女の声が聞こえてきた。
何か襲われている感じがする声だ。言い争いみたいなのも聞こえてくるし。
着いた早々面倒事は嫌なので無視しようとしたが、元撤の教えが頭をよぎる。
――女を実捨てる奴は葛、生きるのを止めるべきだと儂は思うな!――
向こうで「そんな風に育てた覚えはねぇ!」と怒っている元撤の顔が簡単に想像できる。
まぁこの町の案内も欲しかったし、助けた礼としてエサ場情報を貰えると思えばいいか。
私は声が聞こえた方へと走り出した。
どうやら声は塀の向こう側から聞こえてきているみたいだ。
もしかしたら襲われているのは家猫かもしれない。
マズイな。それだとエサ場情報が手に入らない可能性がある。
基本、家猫は餌をくれる人がいるから積極的にエサ場を探さないのだ。
うーむ、そうなったら助けた猫の飯を貰う事にすればいいのか?
悩んでいても仕方ないので私は塀の上に飛び乗り様子を見る。
そこには白毛のメス猫と茶毛と灰毛、2匹のオス猫がいた。
どうやらメス猫の方は家猫らしい。毛並みが全然違う。もし人間だったらアイドルになっているだろう可愛さだ。
対してオス猫二匹は間違い無く野良だ。毛並みといい体つきといい、汚れていて目も当てられない。そうだな、人間で例えたら良くて山賊だな、うん。」
私の失礼でありながら的確な考えを見抜いたのか、オス猫二匹が私の方を見て怒ったように睨んできている。
「てめぇ、さっきから失礼なこと言ってんじゃねぇー!」
「あ、もしかして声に出てた?ごめんにゃー。」
茶毛の方のオス猫が私の方を見てキレている。どうやら今の私の考察は声に出ていたようだ。
本当の事なんだが、申し訳ない気持ちで一杯になる。
本当の事を言って彼らを傷つけてしまった。もうちょっとオブラートに言うべきだったな、うん。