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24

私は今も、アルベニア王国の神殿にいる。


「大聖女」という肩書きは、すでに返上した。

その代わりに、新しい役職が作られた——「王国医療顧問」。

聖なる力ではなく、医療の知識を持った実務者として、正式に働く立場だ。


ルカスが私の助手になった。

私は自分が知っていることを全て教えた。

薬草の使い方、傷の洗浄、感染の予防、産後ケア——現代医療の基礎を、この世界の言葉に置き換えて。

「先生が積み上げてきたことを、私たちが引き継ぎます」とルカスは言った。

先生、と呼ばれた時、少しだけ泣きそうになった。


魔族との協働も少しずつ進んでいる。

魔族側は王国よりも医療面で進んでいたらしく、看護人と呼ばれる者たちと医療知識の交流をしている。


*


ヴィルとは、月に一度は会っている。


交渉の場で。あるいは、中立の街の小さな食堂で。あるいは、野原の真ん中で、二人でただ話すために。


夢の庭園には、今も行く。


でも今は、現実でも会えることを知っているから——夢の中の時間は、焦りではなく、純粋な喜びに満ちている。


「今日、ルカスがまた薬草を間違えかけた」

「懲りない男だな」

「でも、気づいて自分で止めたの。成長してるわ」

「カオリの弟子だな」

「うれしいような、複雑なような」

「複雑というのは?」

「私の悪いところも、ちゃんと受け継いでそうで」

「——悪いところとは」

「考える前に動くところ」

「それは悪いところではない」とヴィルは言った。

「少なくとも、君においては」

「魔王様にそう言ってもらえると、光栄ね」

「魔王様と呼ぶな。ヴィルと呼べ」

「ヴィル」

「……なんだ」

「ありがとう」

「何の礼だ」

「全部」


彼はしばらく黙って、それから静かに言った。

「……私もだ」


*


夢の庭園の薔薇が、今までで一番美しく咲いていた。

「きれい」と私は言った。

「そうだな」とヴィルは言った。でも、彼は薔薇ではなく私を見ていた。


「薔薇を見てよ」

「見ている」

「私を見てるじゃない」

「どちらも、きれいだから同じだ」

私は呆れて笑った。


「——そういうこと、さらっと言うのね」

「事実を述べているだけだ」

「魔王様はそういうことだけ饒舌になる」

「それほど、事実が語りかけてくるということだ」


夜風が吹いて、薔薇の花びらが一枚、テーブルの上に舞い落ちた。


「カオリ」

「うん」

「来年の追悼の日——一緒に、丘に行きたい」

「……二人で?」

「そうだ。私の民と、君が助けた人間たちの、両方のために」


私は花びらを見つめた。


「うん」と私は言った。

「一緒に行こう」

「約束だ」

「約束ね」


庭園の月が、今夜は特別大きく見えた。


夢の中の時間は、いつか終わるかもしれない。

でも、現実の時間は——これからも続いていく。


それでいい、と思った。

夢の中でしか会えなかった人と、現実で隣に座れるようになったのだから。


偽者の聖女は、本物を手に入れた。

それは奇跡ではなく——ただの人間が、泥まみれで、嘘をつきながら、それでも正直でいようとして、ぐちゃぐちゃのまま前に進んだ結果だった。

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