第7話 勇者の戦闘
平原へ向かう道中、加護で焼かれないようにギリギリの距離で歩く。
離れすぎては怪しまれるため、ギリギリを把握する。
……ここは焼かれなイ。あと2歩近づくと焼かれるナ。
最初に調整を失敗して、チリチリと少し腕が焼けたが、服で隠れているし軽傷だったため問題はない。
レーア平原は、北の城門の先にある開けた平原。
スライムやレーアウルフのような弱い魔物が湧く危険性の低いエリア。
魔物狩り初心者が戦うに適した場所。
ボクが泊まってる宿は、東の大通り。
北の大通りは、酒場で情報集めをした時くらいしか通っていない。
……あんな店あったのカ。
情報収集の時は、はっきりと見ていなかった景色を見渡す。
大通りを超え、北の城門を抜けて平原に着いた。
目的の魔物を目視で探す。
「スライムとレーアウルフ……あっ! あれスライムじゃない?」
「どコ」
「あそこの青い物体!」
アズサがある方角を指さして、声を上げた。
その方角を見ると、薄青色の塊がゆっくり動いているのが見えた。
とても生き物のような姿はしていないが、立派な生き物。
スライムだ。
……薄青色のスライム、ここのスライムはそのタイプカ。
スライムには複数の色がいて、それぞれ特徴が変わる。
薄青色のスライムは、一番多いスライムであり特徴は弾力が高い。
「確かにスライムダ。やル?」
「やってみる」
アズサは腰に付けている鞘から、ゆっくりと武器を引き抜く。
白銀に輝く刃が光を反射する。
アズサの持つ武器は剣。
ただの剣ではなく、勇者が扱えるという聖剣ダ。
魔族であるボクからすると、嫌な気配がすル。
しかし、神の加護ほどの脅威とは感じられなイ。
……力が弱イ?
「その剣は聖剣?」
「そうだよ。魔を払う聖なる剣! らしいけど、その力はまだ使えないんだよねぇ」
「まだ使えなイ?」
ボクは、アズサの言葉に首を傾げる。
聖剣の力は手にした時点で、扱えるものだと思っていた。
聖剣は勇者以外が扱えない。なのにその勇者すら使えないのは設計ミスに思える。
……扱うには条件があるのカ。
「どうやら使えるようになるには資格が必要らしくて……王様曰く、先代の勇者も苦戦したとだけ」
「代々引き継いでるのに、マニュアルはないのカ」
「ないみたいだね」
アズサは困ったように笑う。
アズサからしても聖剣の力は使いたいが、肝心の扱い方が分からず困っているようだ。
「聖剣の力を使えなくても、勝てる相手だヨ」
「うん、頑張る」
アズサは、急がずゆっくりと近づく。
スライムが剣の間合いに入った瞬間、大振りで剣を振るう。
軌道はスライムを捉えている。
しかし、ぴょんと跳ねられ避けられた。
そして、カウンターでポヨンと一撃を胴体に食らい地面に倒れ込む。
「ぐはっ……思ったより痛い」
……思ったより弱イ。強くするのは骨が折れル。
素人とはいえ、スライムのカウンターが直撃する者は珍しい。
スライムは動きが遅い。
カウンターは、あの雑な大振りでなければ避けるか防ぐことはできただろう。
先が思いやられる。
「大振りすぎるネ。スライムは柔らかいから力要らないヨ」
袖からナイフを取り出して、軽く速く振るう。
スライムに一筋の切れ目が現れ、切れ目から液体が外側に溢れ出す。
スライムはしぼんでいき力を失い、その場で動かなくなる。
「おぉ……」
アズサは小さくボクに向かって拍手をする。
なんの変哲もないナイフの攻撃が、凄技にでも見えたのだろうか。
「今ほどの速さは必要なイ。その剣なら剣の重さで切れル」
「なるほど、軽く振ると……やってみる!」
アズサはすぐに立ち上がって、近くのスライムに近づいて剣を振るう。
先ほどの大振りとは違い、短く軽い振り。
スライムを完璧に捉えて、スライムの表面を切り裂く。
……ボクの攻撃を模倣しタ?
身体の動きは全く違う。
しかし、刃の向きや切る方向は、ボクが先ほどやったものに酷似している。
ただの真似にしては上手い。
「勇者なだけあっテ、戦闘の才を持つカ」
アズサが依頼最後のスライムを同じように倒した後、ボクはレーアウルフをナイフでさっさと倒して依頼を完了させた。




