第12話 最終話
ギルド前で解散して宿に戻る。
そして直ぐに通信石でアルルスに連絡を取った。
「早いですね。ついに殺しましたか?」
「まダ、それよりもレーア森林に魔族の魔力があっタ。援軍は送れないのでハ?」
問い詰める。
レーア森林に魔族を持って来れるのなら、援軍として借りれたはず。
「こちらにはそのような情報はありません。おそらくははぐれ魔族でしょう」
「はぐレ?」
「統率が取れず散った魔族。人間種へ攻撃を仕掛けることもしばしば」
確かにはぐれ魔族の可能性もあル。
魔族の数は多い、魔王軍だけで統率が取り切れず漏れた魔族が人間種の国の近くにというのもたまに聞ク。
ただ前線近くならともかく、前線からかなり離れた場所ではぐれが動いているのは不自然。
それもボクが来た時にはいなかっタ。
その後に来た魔族、偶然と呼ぶには怪しイ。
「なら協力を仰ぐことハ?」
「直属の上司ならともかく、前線に出ていない貴女の指示を聞くかどうか」
「わかっタ」
アルルスとの通信を切る。
ボクにとっては、リスクでしかない存在が近くにいるということ。
……始末するべきカ。
シンプルに邪魔。
何をしているか分からないが、騒動を起こされるのは勘弁願いたイ。
ボクに魔族に対する仲間意識はなイ。
明日にでも仕留めるべきだろウ。
時間が経ち、夜になった。
その瞬間、魔族の魔力を感じた。
……今のは魔法式の余波。
大規模な魔法の式の起動が始まった合図。
森で準備をしていたようだ。
「戦争を起こすつもりカ」
魔力の余波が起きるのは、かなりの高魔力を圧縮した魔法式。
それをレーアの近くで行ったとなれば、おそらく攻撃魔法か遠くの魔族を召喚する魔法。
どちらも発動されると厄介ダ。
宿から急いで飛び出して森へ向かう。
魔力の余波は強い奴か、探知に優れた奴しか気づけない。
「リアさん?」
「今の余波に気づいたのカ」
「余波? それは分からないけど、森の中のやばい気配が強くなったから」
「なるほド」
勇者は魔族の魔法や魔力の探知に優れているようだ。
「1人で飛び出しタ?」
「後で騎士達が来る」
「そうカ」
……間に合わないカ。
今は影一つ見えていない。
騎士が森に着くまで、時間がかかりそうだ。
魔法の発動までは長くても1時間。
下位の魔族なら、扱えるのは20分にも満たない魔法のはず。
騎士や他冒険者を待っている時間はない。
城門を抜けて森に入る。
アズサに怪しまれない程度の速さで走る。
撒きたいが怪しまれかねない。
「あれカ」
森の奥に魔族の姿が数個確認できた。
そして、地面に書かれた魔法陣も見えた。
手を出してアズサに止まれとハンドサインを送る。
通じたようで、アズサはボクの後ろで足を止めた。
「あれが魔族」
「下位の魔族ダ」
「あの魔法ってどれだけやばいの?」
「召喚の魔法だナ。魔物の大群か魔族がこの場に現れることになル」
「それって、あの街は」
「確実に襲われル。襲うための魔法ダ」
「発動を止めるには?」
「あの場の魔族を倒した後に、魔法陣に大きな欠損を与えル」
……ボクがやるしかなイ。怪しまれるが計画ガ全部破綻するよりはマシ。
ボクが計画を進めるには、この場の魔族には正体不明の存在に殺されてもらう必要があル。
魔力を刃のようにして、手に纏わせル。
「魔族はボクがやるかラ、魔法陣の欠損を、地面に切り裂けばいイ」
「わかった」
ボクは木の裏を経由して素早く近くに行く。
「これでレーアを落とせるな」
「大群の魔物を引き連れて引き潰す」
魔族は油断している。
背後から手刀で魔族の首を切り落とす。
首が地面を転がり、鮮血が飛び散る。
「なっ、貴様……」
隣にいた魔族を、返す刃で胴体をまっぷたつに切り裂く。
「何者だ!」
「気取られたか」
魔族は、素早く攻撃魔法を発動させる。
複数の土の槍が飛んできた。
腕を振るいズバッと切り裂いて、接近して心臓を貫く。
「しねぇ!」
別の魔族の手元に、炎の球が出現する。
魔力を増やして大きな刃にして、魔族ごと炎を縦に裂く。
魔法陣の方をチラッと見ると、アズサが聖剣で魔法陣を削っていた。
この調子なら、すぐに魔法が無力化される。
ボクは、魔族を狩る。
魔法を使うまでもなく、切り裂いて仕留めていく。
「こいつ、勇者か! ラッキー」
魔族の声がして、振り返る。
1人がボクではなく、アズサを狙っていた。
既に武器を振り下ろしていたから、ボクは間に合わない。
……問題なイ。
他の魔族の方へ視線を向ける。
アズサ自体が弱くても、アズサには神の加護がある。
だから問題がない。
「腕がァァ!?」
魔族が叫ぶ。
接近したせいで熱によって、腕を焼かれたようだ。
気にせずに残りの魔族を仕留め切る。
そして、腕が焼かれた魔族の元に行く。
「なんなんだお前は! それほどの力があって……いや、その姿」
魔族は目を見開く。
次の言葉を発する前に、首を突き刺して倒す。
姿を見て、僕の正体に勘づいたのだろう。
少し遅ければアズサに正体がバレていた。
「これで終わり?」
「終わリ、あとは騎士団がどうにかしてくれル」
「この状況はどう説明をするの?」
「……見知らぬ冒険者がやったということデ」
目立つわけにはいかない。
適当な言い訳を立てる。
森から出るとちょうど、騎士団に遭遇した。
口を揃えて仮想の冒険者を作り上げてその場を切り抜けた。
アズサは、騎士団の数人に護衛されながら帰って行った。
ボクは安堵すル。
今回の騒動はかなり焦っタ。
何とか無事解決して良かっタ。
これからも多くの災難に、巻き込まれそうだと思いため息をつく。




