第9話 加護の仮定
大通りの店を見て回って、生活に必要なものが売ってないかを確認する。
……これとこれは必要カ。宿住みだからこれは要らないナ。
宿住みなこともあって、必要なものは少ない。
長期滞在を考えて、消耗品で必要なものを購入する。
薬草やポーションも念の為に買い足しておく。
「荷物が多イ。荷物入れるものが欲しイ」
店を見渡して荷物入れを探す。
すると、少し大きすぎるがバッグを見つけた。
値も少し張るが、迷わず購入して買ったもの全部まとめて詰め込む。
……ひとまず、これで良シ。
買い物を終えて、宿に戻り荷物を床に置く。
必要な時に出せばいいと考えて、邪魔にならないようにバッグは端に寄せておく。
ベッドに腰掛けて、今日あったことの中で気になることを思い出す。
「神の加護がスライムには通じなかっタ」
今日の依頼の際に、アズサはスライムの攻撃を受けていた。
攻撃が直撃して、転倒していたのだ。
物理攻撃をしたスライムは一切焼かれず、障壁で防がれることもなかった。
ボクを焼いたあの熱があれば、スライムごとき焼き切れル。
身体に届く前に焼き尽くされるはズ。
熱だけでなく障壁も展開された様子はなかっタ。
どうやら、あの加護にはボク相手では発動するが、スライム相手では発動しない代物のようダ。
……条件発動、障壁は攻撃だと思っていたガ。
障壁が攻撃に反応なら、スライムの攻撃に反応しないのはおかしい。
熱が接近に反応なら、同じように体当たりをしたスライムに発動しないのはおかしい。
……熱と障壁の条件は別なのは確定だが、なぜどちらもスライムに対して発動しなかっタ?
握手の時に障壁は発動していなかった。
つまり、熱と障壁はそれぞれ別の条件で発動するのは確定事項。
スライムは、熱と障壁のどちらの条件もすり抜けている。
……スライムとボクで何が違ウ。スライムは魔物、ボクは……魔族。――対魔族の加護?
可能性はあル。
勇者は魔王を殺すために、召喚された存在ダ。
ならば、神の加護が対魔族に特化していてもおかしくなイ。
魔物と魔族は別物、例外は存在するガ。
対魔族ならボクが接近すると焼かれて、攻撃は障壁で防がれるのは自然。
スライムには発動しなかった理由にもなル。
確定ではなイ、けれどそう仮定すル。
新しい情報を得たら、また考えル。
……だとすると、加護は当てにならなイ。
魔族は、魔王軍とごく一部の例外魔族くらいなもの。
基本的に戦闘では、魔物と戦う方が多い。
レーア付近にいる魔族はボクくらいなもの。
アズサは聖剣の力も引き出せていないから、魔物とは一般人と同じように戦うことになる。
……魔族と戦う前に死ぬナ。
控えめに言って、現勇者は弱い。
確実に戦闘初心者。
1人でちょっと強い魔物と戦えば、すぐに死んでしまうほどに。
勇者暗殺を考えると、魔物の罠にはめることで殺せるということ。
むしろ、仮定が合っているなら今すぐに実行するべきものだ。
元々、ボクは勇者を殺すために派遣されたのだから。
「困っタ」
しかし、そういう訳には行かなイ。
ボクは魔王軍を裏切る予定ダ。
裏切るから、むしろ勇者には強くなってもらわないと困ル。
任務ついでに始末対象になってるボクが、勇者を殺すメリットがなイ。
逆にリスクがあル。
勇者を殺した後、魔王軍に戻ったとして殺されない保証がなイ。
弱い勇者を強くする計画が必要。
弱すぎて、相当慎重に計画を立てる必要がある。
下手に強い魔物に当たれば死んでしまう。
かと言って、弱い魔物だけでは強くはなれない。
「勇者強化計画を立てる」
ボクは計画をねり始める。




