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3 里の秋





「それでは、お母さん、僕たちはこれで」




 義理の息子が明子の娘と2人の子どもたちと共に、声をかけた。




「母さん、これからはのんびりしてね」




 娘の里沙もそう声をかけて、娘家族は、地下鉄の駅の方に向かった。






 今日は、明子の夫雄一の四十九日の法要で、その後、家族は、このショッピングモールのレストラン街の和食店で予約を取り、食事を済ませた後だった。






 1人になった75歳の明子は、とぼとぼと私鉄駅を目指して歩いた。






 しばらく歩くと、ピアノのメロディが明子の耳に入ってきた。






 この曲は……






 明子はハッとして懐かしさでいっぱいになり、ピアノの音が聴こえてくる方向に歩いて行った。






 すると、そこには女子大生くらいの人が軽やかにストリートピアノを奏でていた。






 曲は、里の秋。 






 今の季節にちょうど良い曲だった。でも、それ以上に、明子には、特別な想い出があった。






 たーたたたーたーたたたー


 


 たーたたたーたたたー♪






 里の秋のメロディとともに、明子の想い出が甦る。








 55年前ー






 20歳の明子は、保育園で保母さんをしていた。明子は田舎から都会に来て働くのが自分の夢だったが、秋になると、田舎の実家を思い出していた。




 そして、保育園に子どもが殆どいなくなると、実家を思い出して、ピアノで里の秋をよく弾いていた。






 ある日、明子がいつものようにピアノを弾いていると、1人の男性が現れた。




「あのー、太郎を迎えに来たのですが」




「あなたは? 見かけない顔ですが、どちら様で?」




 明子は用心のために確認した。




「僕は、田中太郎の母親の弟です。姉は今日は用事がありまして、僕が太郎のお迎えを頼まれたのです。でも、先生が弾いている曲は里の秋ですか? ババくさい。もっと、華やかな曲はさがあるでしょう?」




 明子は、




 初対面で、どうして、そんなことを言われなければならないの?!




 と、カチンときたが、それが、亡き夫、雄一との出会いだった。








 明子は、女子大生が奏でる里の秋や旅愁など、唱歌のメロディで、雄一のことが、溢れてきた。






 口は悪くて、不器用だったけど、とっても温かい人だった。






 雄一の看病で長い間病院に通ったりしていたので、最近では、ピアノの弾いていなかった。






 雄一さんは、また、私に、ピアノを弾いたら?って、あの世から、言ってくれているのかしら?






 明子は、偶然、通りかかったこのストリートピアノの里の秋は、天国から、雄一がそう語りかけてくれたんだと、ほっこりした。







以前短編で投稿した再掲載です。


短編の方はこのシリーズに投稿したら削除しています。


AIなしで書きました。

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