学生寮
『ありがとうございます』
岬と声をそろえていった――というより声が揃っていた。
ふむ、といって微笑む斉藤先輩。
「では寮室へ案内しよう」
『ありがとうございます』
また声が揃った――お互いを見て苦笑、どうやら狙ってやってるわけではないようだ。
「行こうか」
ザッという音、斉藤先輩が歩き始めたらしい。
前をむいて俺も歩き始める。
歩きながら斉藤先輩が問うてきた。
「ところで君たちは付き合っているのかな?」
その問いに俺と岬はは向き合ってまたも苦笑。
「ああいえ、幼馴染っていうやつですよ」
ふむ、と斉藤先輩はつぶやき、
「自分で聞いておいてなんだが、その手のことには疎くてな……勘違いをしてすまなかった。
ただその、雰囲気というか行動というかだ、うまく言葉にできないんだが――それがとてもしっかりして見えてな」
「大丈夫です。決して不快ではなかったんですが、小学校のときからずっといわれてきましたから」
「そうね、むしろ私はうれしかったわ」
「どうしてお前は嘘でもさらっとそういうことを言えるんだよ」
「などといいつつ顔が真っ赤な神野森人でありました」
「本当だな」
顔だけこちらに向けて斉藤先輩。
「勘弁してください……」
ああ……隣をみれば岬がニコニコと笑っている。
俺をからかうのがそんなに楽しいのだろうか?
楽しいんだろうなあ……経験則から言うに。
「と、ここが玄関だ」
まるで学校の玄関だ。
違いといえばここでは番号で割り振られてることくらいか。
「おう、いらっしゃい」
……赤髪の馬鹿がいた。
長いす膝を付き、パイプイスに腰掛けて玄関の先でこちらを見据えている。
先ほど顔はみてなかったけれども、赤髪で長髪のやつなんてそんなにいるわけが無い。
むしろ体格や高めの声など他の条件すべてがあてはまる。
「新入生の生徒は自分の名前をいってくれよ?
ああ、名前がかぶったときには漢字もきくからなー」
「じ、神野 守人です」
「霧島 岬です」
「んーと、おお!あったあった、特徴的な名前で分かりやすかったわ。
323号室と322号室なー、って隣同士かよ」
それは喜ばしいことだ、けれど、そんなことよりも聞きたいことが、
「あの、先ほど公道で激走し――」
「だらっしゃあああああああああああああああああああああああ!」
赤髪発狂――頭に浮かんだのはその四文字。
長いすを押し倒しながらこちらに走りより、肩に手を載せ。
「頼む黙っててくれ、斉藤に殺される!」
小声で怒鳴るという高度な技を披露された。




