間章――王子
――――――――――
――5年前
斉藤恭介は首都の大和に住んでいた。
己が住むは父の邸宅。
大和城に近い場所だというのに数百メートルに渡って続くそれは、斉藤恭介の父――斉藤 恭司のもつ権力を示していた。
中将である父――恭司を恭介は嫌っていた。
だが、父は絶対で逆らえない――だから今日も父に命じられた通り大和城へと足を運んだ。
(国王陛下が私になんのようなのだろうか)
石垣が続く中、石垣の上、視界の先ぎりぎりに見える天守を見据え恭介は考える。
分からない、分からないが、事前に逆らうなと父に命じられたことから、まともなことではことだけは想像が付いた。
「考えていても仕方がないか」
そう見切りをつける恭介。
何故ならば考えれば考えるほどマイナスな思考が思い浮かび、不安になるだけだったからだ。
ふむ、とつぶやいて視界を前に戻せば、視界の奥に正門が見えた。
おおよそ2キロにわたる石垣の終わりを見た恭介はようやくかと思い、同時、片側で1キロということは合わせて4キロ。
直径が4キロで正方形なのだから、石垣も含めた城の面積は16平方キロメートルといったところか。
それだけの面積を囲む高さ10メートルほどの石垣、そのすべてに対魔術加工をされている――などと大和広しとはいえここだけではないだろうか?と恭介は考えた。
――――――――――
恭介が正門に入ると、迎えのものが来ており、すぐさま国王の間へと案内された。
「やあ、斉藤の」
だがそこには国王はいなく、畳の先、上座にいたものは、
「殿、下?」
胡坐を組み、頬杖を書きながら恭介を見据えているのは――君島 大和王子。
歴代で唯一の国と同じなを持つ王族で、歴代で唯一の白髪の王族で、そして歴代で唯一の――
「あーあ、斉藤の――かたっくるしい挨拶をその先続けようってんならいらんぞ?
そういうことのために呼んだんじゃあないからな」
「……では、失礼します」
そういう大和に対し、なるほどと思いつつ恭介は畳の上に正座した。
下座であり、距離は10メートルほど離れている。
若干話しにくい距離ではあるが、だがこのくらいの丁度いいのだろうと恭介は思う。
距離感だ、と。
背筋を伸ばし、しっかりと大和を見据えつつ――恭介は大和を観察していた。
そうしてもう一度なるほどと思った。
――確かに同い年には見えないな
あちらもこちらと同じく12歳であるはずだ。
だが既に大人ほどに伸びている座高、人を食ったような表情、何より肩まで伸びた白髪が12歳であることを否定している。
「くくっ、白髪が珍しいのか?」
「いえ、そんなことは」
「ふむ? 表情は嘘はいっていないな――まあ、隠すのが上手いだけかもしれんが。
はてさて、ならば何故俺のほうを必要以上に注視していたのかと考えれば。
くくくっ、まあ簡単すぎてアホでも分かる答えだわな。
なあ斉藤の、魔法使いというものは珍しいか?」
――そう、君島大和は王族で初の、そして唯一の魔法使いである。
「希少な才能だとは思います」
「くくっ、物はいいようだな。
素直に言えばいいだろう異端だと。
それともあれか?化け物と呼ぶのが正しいのかな?」
「……そのようなことはりません」
大和の言う言葉はすべてが正しい。
魔法使いとは、魔術では実現できないものを生まれながらに行使できるものを指し。
それを人は異端だと、化け物だという。
もっとも恭介がそうおもっているのかは別問題で、むしろそれが本題なのだが、
「ま、そんなことはどうでもいいんだがな。
本題に入ると、だ」
だというのに大和はそう言い、そして、
「なあ斉藤の?」
「――は、」
訊ねた、とある人物のほうへ視線をやりつつ。
「女性を待たせるのはどうかと思うぞ?」
そういう大和の視界の先、5メートルほどの距離。
恭介から見ても同じだけの距離があり、しかし恭介と同じように中央に座っていたのではなく、恭介からみて右手側に座っていた少女がいた。
だからこそ恭介はおそらく自分はここがいいのだろうと判断したのだが。
「失礼しました、私は――」
「――斉藤 恭介君、だよね?」
恭介の声を遮り、少女がそう呼んだ。
「はい、その通りです」
頷いた恭介に、少女は体育座りから立ち上がり、薄い胸に手を当て、
「私は、遠藤 黒百合」
名乗り、そして、
「わ、私と友達になってくれませんか?」
少女はそう言った。
お盆ですこしだけ実家に帰っていました。
携帯で投稿するから問題ないかなーと思っていたのですが充電器を持っていくのを忘れてできなくなりました(あ
一週間の休載、本当申し訳ないです。