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昼休みに

――――――――――


「斉藤先輩、申し訳ないのですが体育館をお貸しいただけませんか?」


 頭を下げて頼む。

 シンと静まり返った生徒会室。


「……構わんが、今日にどうしたんだ?」


 視線だけを上げると、すこしだけ渋い顔をして斉藤先輩が。

 ああ、この前職権乱用っていってたっけそういえば。

 なるほど悪い事を訊ねた――けど、必要なことだ。

 しかし、これは言わば斉藤先輩に抗するための技を復習するためで――なんと言ってごまかせばいいのだろう。

 そう考えていると、後ろにいた修介が。


「なんてことはないっすよ、ようするに軍祭の練習ってやつですよ」

「――っ!?」

 

 直接的にはいってはいない、いってはいないが――その意味を悟られないだろうか?

 いやそんなことよりもまずは己の表情を整えるべきだ――動揺を見取られてはいけない。

 ゴクリとつばを飲み下し、表情は平静かと自問し、そして大丈夫だろうと判断を下した。

 そうして顔を上げた。


「なるほど、良いだろう存分に使ってくれ」


 そう苦笑していった斉藤先輩の表情。

 まるで仕方がないなとでもいうべきそれに、こちらの意図したことを汲み取られたかどうかを読み取ろうとして。


――出来るだけ対等な条件で戦いたかった、でいいかね?


 そう言った斉藤先輩を思い出した。


「…………」


 カタンと小さな音を立ててパイプイスから立ち上がる斉藤先輩。

 ズボンの右ポケットに手を入れ財布を取り出し、それを開き緑のプレートがつけられた鍵を取り出すと、こちらへと歩み寄ってきた。


――強いんだろう、強いはずだ。


 差し出される鍵、手のひらに載せられたそれを手に取ろうとして止まる。


 情けない。

 自分の手札をさらけ出した斉藤先輩に比べて俺は何を考えている。


「――斉藤先輩」


 手を伸ばす――鍵をつかみ、


「今度は勝たせていただきます」

「……ほう?」


 ニッと笑ってそう答えた斉藤先輩、おもしろいとでも言いたげに。

 宣戦布告はここに完了した。


「おーおー、青春ってやつか?」

「いやー、若いわねえ」


 と、ここで冷やかしを入れてきた二人に、はあと同時に嘆息をついた。


「……おっと、言い忘れていたが今日は放課後に巡回がある。

 時間が大丈夫ならば参加してもらえないかな?

 出きれば二人に仕事の内容を紹介したいのだが」


「あ、はあ……俺は問題はないですが――修介は?」

「ハッ、あるわけねえだろうが」

「だ、そうです」


 では放課後に鍵を返してくれればそれで構わない、といってくれた斉藤先輩に一礼して俺たちは生徒会室を退出した。


――――――――――


 体育館に修介と二人で入り、鍵を閉めた。

 先導するように歩く修介についていくと、修介は中央につくなり振り返り尋ねてきた。


「――で、練習に付き合ってくれなんていったんだから、なんかあるんだよなァ?

 何も無いなんていわさねえぞ?

 あるんだろ切り札が、自信をもって勝てるだなんていう以上はよォ?」


 その言葉に首を横に振る。

 切り札、か。

 切り札といえるものは己が格闘術と16へいたる魔術のみ。

 そのどちらも斉藤先輩には相性が悪い。

 格闘術はいわずもがな。

 魔術は――恐らく唱えている間に切り捨てられるだろう。

 だから、切り札というべきものは――ない。

 ない、ないのだが。


「切り札なんて上等なものはない。

 だけど一つだけ使えるものがある」


「ア?」


 そう斉藤先輩がいった通り、相性の問題なのだ。

 だからこそ使えるものがある。


「ハイリスクだけどさ――代わりに正面切って戦えるようになる」


 肉体を強化することだけが強化魔術ではない。

 一部を組み替えることも強化魔術なのだ。


……ああ、それともっと大切な事。

 霧島流を使うからこそ、だ。

いつも通り感想、誤字脱字おまちしております。

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