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生徒会長――斉藤 恭介

「……そう、ですね」


 考える、思っていた通り内容は治安維持に関するもので。


「答える前にちょといいすか?」

「御堂君、何かな?」

「いや、何……なんでここに霧島がいないのかって思ってよ?

 てっきり女の子だからかっておもってたんだけどよ、そこにもいるだろ?

 ってーとどうしてか?とおもってな。

 こう言っちまうと情けないけどよ、俺よかアイツのほうが強いぜ?」


「私!非戦闘要員のか弱い女の子!」


 斉藤先輩、修介共に完全なる黙殺。


「……ふむ」


 斉藤先輩がこちらを見る……なるほどそういうことか。

 問題は何故斉藤先輩がそれをしっているかだが、生徒会長だから生徒の個人情報も知っているのだろうとしか考え付かない。

 伝えてないのかね?とでも尋ねるような視線に、俺は首を横に振った――修介を信頼していないわけじゃない、けれどアレは彼女自身が言うべき事だからだ。


「彼女には彼女の理由があるのだ……少なくとも、彼女はこの仕事には向いていない。

 いやそれでも彼女の能力は有用だが、しかし彼女自身が生徒会に入るのを望まないだろう」

「……なるほど、ちなみに理由とかは聞いちゃいけないんすかね?」

「本人に聞いてくれ、俺がそれを答えることは出来ない」

「……ま、そりゃそうか……了解した生徒会長殿――俺は入るぜ。

 別段目標とかもねえから時間もありまってるしな」


 至極あっさりといった修介に、斉藤先輩は安心したようにほぅと息を吐き、ありがとう御堂君といった後にこちらをみる。


「神野君はどうかね?」

「……そう、ですね」


 考えている、考えれば考えるほどこれは俺にとってメリットばかりだ。

 斉藤先輩は実力者だろうし、何より治安維持という名目上戦闘経験をつむことができるだろう。

 デメリットといえば時間をもっていかれることくらいか。

 問題はどのくらい時間をもっていかれるか、だけれども。


「……その、別に今すぐ答えを出して欲しいのではない。

 だからゆっくり考えてからで――」

「――いえ、入らせていただきます」


 遮る。

 どれほどの時間を持っていかれようが強くなれる可能性が目の前にあるのだ。

 ならばそれに乗るべきだろう。

 それにこちらは一年生である上に斉藤先輩の性格を考えてみれば時間とて出来る限りの融通はしてくれるだろう。


「……ありがとう」

「おう、二人ともよろしくなー!」

「よろしくねー」


「……ただし、条件というかお願いがあります」

「……それは、何かな?」



――斉藤先輩、俺と手合わせ願えませんか?



 一瞬の思案後、斉藤先輩は首を縦に振った。



――――――――――


 木製(ただし概念としての材質強化及び対魔術付与がされている)の床を踏みしめ入室する。

 体育館だ。

 思い立ったが吉日というわけではないのだろうけど、あの後すぐに行うことになり、ここに移動した。

 校庭は一般の生徒の訓練によって自由に戦える状態ではなく、だからこそここが選ばれたのだろう。

 もっとも一般開放されているわけではないらしく、職務上マスターキーをもっているらしい斉藤先輩がここを開けた。


――職権乱用というやつだからな、黙っていてくれると助かる……


 そういった斉藤先輩を結城先輩がお堅すぎるんだよと笑い、近藤先輩がそれにネーと賛同した。


「……さて」


 体育館の中央に移動すると同時、斉藤先輩はパチンと指を鳴らした。


「――顕現」


 空中に現れたそれは先ほどの日本刀。

 既に抜かれている状態のそれは、斉藤先輩の右手に納められ。


「――それを、使うんですか?」

「ああ俺の武器はこれだ」


 美しい黒と白二色の調和――俺には刀の良し悪しなどわからないけどもそれでもそれは良いものなのだろうと感じた。

 刃渡りは60センチほど、一般的な日本刀の長さは知らないが、それだけのリーチの差が出来るのだと思考した。

 それは近距離戦において確かな有利性だろう。

 しかしそれを考慮に入れた上でおれは疑問に思う。

 そんなもので戦えるのか?と。

 即ち――肉体強化をした当方に届きうるものなのかと。

 そんな俺の考えを読み取ったのか、水平に刀を握ったまま右手を突き出して斉藤先輩は語る。


「神野君、勘違いをしているようだから教えよう。

 これは君が思っているようなモノではないよ。

 確かにこれは日本刀で、なるほど君の強化魔術の硬度にこれは劣るだろう。

 しかしこれは君にとって最悪の相性とでも言うべきものだ。

 何故ならばこれは――魔法使い志木 徒有(しき ただあり)の作りしものだからな。

 君もしっていると思うが、彼の(ルール)は物に定義を持たせること。

 つまりこの刀――言い伝えでは斬魔刀というのだそうが、その定義は文字通り魔術を切る。

 故に強化魔術を切るこれに……君を切れないという道理はない」


――志木、その名前には聞き覚えがある。

 この国にすむ人間ならば皆しっているだろう。

 彼は魔術師ではなく、魔法使いで――その中でも特に異端だった。

 魔による法律――定義されたルール。

 それを扱うのが魔法使い。

 異端である――己が魔法に関する魔術しか扱えないということ、そもそもにして国単位で探したとしても数人しかいないほどであること。

 魔法使いとは天才なのではなく、異端なのである。

 そもそもにして違う存在と誰もが言う。

 ああしかし彼はその異端の中でも一際異端だった。

 魔法を、限定的にとはいえ物を通して作ることができたのである。

 彼の魔法使いとしての限界はそれを10作ること。

 そのうちの一つが目の前に……?


 しかし、そんなことよりも疑問に思うことが一つ。


「なんでそんなことを教えてくれるんです?」

 

 苦笑。


「出来るだけ対等な条件で戦いたかった、でいいかね?

 俺は君の戦い方を知っていて、君は俺の戦い方を知らない。

 それではまともな勝負になりはしない。

 何よりも、俺は君の実力を知りたいんだ。

 御堂君のようにわかりやすい強さを持つわけではない。

 正直、神野君が修介君に勝っていなければ俺は君に興味をもつことはなかったと思う。

 テストの結果についても君がだしたものでは無いと聞いていたのでね。

 しかし君は御堂君に勝った――強いんだろう、強いはずだ。

 だがそれは見て分かるような分かりやすい強さではない。

 正直に言うと、君が俺と戦いたいなどといわなくとも、俺から君にお願いしていただろう」


「勝った勝ったしつけえよ」


 後ろのほうから修介の声。

 若干すねた感じのするその声に、目の前の斉藤先輩と同じように苦笑してしまう。


「分かりました、斉藤先輩――その刀そ性質心に留めておきます」


 コクリと頷いた斉藤先輩が、しかし真顔で告げる。


「始める前にいっておこうと思うが、相性の問題だからな――君が負けるのは仕方がない」


――挑発、ではない。

 どこまでも真剣な表情でそれが本心なのだと分かり、だからこそ、


 ハッ、と息を吐き捨てる。

 拳を構え、距離を認識する。

 互いの距離は10。

 なるほど、確かに相性は悪いだろう。

 言葉の通りならば俺は攻撃がかすることさえも許されない。

 切られれば体を対象としたものである己が魔術は霧散するだろう。


「戦闘のことになると随分と饒舌になるんです、ねっ!」

「ああっ!よく言われるよ!」


 言葉と共に斉藤先輩は大きくバックステップを踏み、詠唱を開始した。

 時を同じくしてこちらも、踏み込みつつ詠唱を。

 吸い上げられる魔力はほぼ同じで――


「――肉体強化を開始する」

「――強化魔術を行使する」


 魔術が行使された。

 世界が遅くなっていき、しかし、俺と斉藤先輩だけの体感速度は変わらない。

 即ち同レベルの強化魔術。



 ここに戦闘は開始された。



書くたびに自分の作品はおもしろいのだろうか?と悩みます。

自分の好きな物語をかいているんですが、それをおもしろくするにはどうすればいい?と思いながら書いているのですが――やっぱり怖いですねー。

それが楽しくもありますが。

あ、毎度毎度申し訳ないですが感想はいつでもお待ちしています。

何気に今回いままでの中では一番ながいような(それでも短いですが)

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