素晴らしき生徒会
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コンコンとノックを一つ。
昨日岬に今日のことを相談したら、頑張りなさいとそれだけを言われ、はてどういうことだろうと思いつつも答えはでないままここにきている。
「どうぞ」
木製の扉の先から聞こえた斉藤先輩の声、それをうけて開く。
先に俺が、続いて修介が中に入り、一礼。
『失礼します』
「……よく、来てくれた陣野君、御堂君」
視界の先、書類を長いすにおいてからこちらに向き直り微笑む斉藤先輩。
中は長いすを四つ正方形上に並べ、そこに2台ずつのパイプ椅子を置いただけの部屋だった。
イメージしていたものとは違うもので、それに少しだけ驚いて、しかし右手側に座っていた人物をみて驚愕した。
――なんで赤髪発狂がっ!
にやにやと笑いながらこっちを見ている赤髪――いやまて落ち着こう、結城先輩、だったはずだ。
しかしまたなんでここに?
「よう、後輩!」
「……あの、なんで、結城先輩がここに?」
結城先輩は、あーあー、やっぱ守人も似合わないって思うか?といいつつカカカッと笑って。
「こいつ、寮長兼生徒会長。
俺、副寮長兼副会長」
斉藤先輩、自分自身と交互に指をさした後、にっあわねえよなあともう一度繰り返して、笑いという言葉を通り越し爆笑する結城先輩。
それに斉藤先輩はこめかみをひくひくと動かしつつ、一瞬眉間をもむような仕草を見せ、こちらの視線に気づいたか若干赤面しつつもコホンと咳を鳴らし、俺たちから見て左手側にいる女性を手の平で差し告げる。
その苦労しているんだなあという仕草に妙な親近感を得たのは置いておいて。
「会計の近藤 美香さんだ」
茶髪の短い髪の――日焼けしたその肌もそうだけれど勝気な表情といい、文字通りの意味でボーイッシュな人だ。
「ヨロシクー」
パイプ椅子の背もたれにもたれかかったままいう近藤先輩。
「よろしくお願いします、えと神野です」
「アー、よろしく」
ニシシと鼻頭をかいて笑う彼女。
そして斉藤先輩が驚愕の言葉を告げた。
「……以上が今期の生徒会役員だ」
「……え?」
「……ハア?」
……はい?
え、いやだって三人?
「おいおい恭介、それじゃ説明が足りネエぞ。
いいか?ここ重要だからしっかりと覚えていてくれよ?
俺研究者志望、すなわち非戦闘要員。
ラヴ&ピースが信条なのよ」
いやいや愛と平和とかどの面下げていってるんですか赤髪さんっ!?
アンタどうみても戦闘要員でしょ外見が、主に髪とか髪とか!
驚愕する俺たちを置き去り、近藤先輩がハイハイと勢いよく手を上げて告げる。
「ワタシもワタシも非戦闘要員!
軍人志望だけど、その、ね?
ワタシってか弱い女の子だし?」
そこらへんの男をなぎ倒すのが趣味ですといわれたところで何の疑問もわかないのですが……
「……オイオイ、冗談だろ?」
修介の言葉に全面的に同意したい、そうこれが冗談なのだと。
一縷の望みを信じて斉藤先輩を見つめ、
「……以上が」
今度は眉間をもむことを隠そうともしない斉藤先輩。
希望はなかった。
「以上がっ……以上が今期のっ、生徒会役員だっ」
カッカカカ。
二シシシシ。
嗤う二つの声が生徒会室を包む。
……、
…………、
「いい加減にしろ、俺の言いたい事が分かるな?」
どこから取り出したのか、日本刀を片手に斉藤先輩が宣言する。
腰には鞘、右手に持たれた日本刀は当然抜き身であり。
「あははー、い、いやだな恭介!
これはあれだ、後輩の緊張をとろうとした俺たちの粋な計らいってやつだ!」
「そ、そうよ恭介君……いやねえもう!」
はははっとかすれたように笑い、そして沈黙が訪れた。
やがて斉藤先輩がはあと盛大にため息をつき、パチンと指を鳴らした。
瞬間僅かな魔力の集中と共に日本刀が、腰にすえられていた鞘と共に消失した。
「というわけで、主に風紀的な面を支える人員が不足しているんだ。
いや、正確には去年まではこれでもなんとかなっていたのだが、流石に新入生もとなると俺一人では難しいものがある。
だから、出きればっ、君たちには生徒会に入りその手伝いをしてもらいたい」
出きればというその声が、ものすごく悲痛なものに聞こえたのは気のせいじゃない。
頑張りなさいっていうのはこういうことだったのだろうか……
戦闘にはいれ、ないorz
次話でははいれそうですが……
これで1章の主人公サイドの登場キャラクター、及び立ち位置は大体が出揃いました。
と毎度毎度しつこいようですが感想お待ちしております。
あえて主人公たちの立ち位置を書くと……
神野――熱血兼弄られ系主人公
修介――天才兼不器用系幼馴染
斉藤――クール兼苦労人系生徒会長
なんでしょう男キャラだけでもこのカオスっぷりは。
……、
…………女性キャラ全員に弄るという言葉がつくのは確定でしょうね。