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 これは夢だ、否、夢で見ている記憶だ。

 その証拠に先生の輪郭は曖昧、背景は公園だがこれまた輪郭がぼけている。

 そうそう、あのときは夕方だったなと思い出すと、空のいっそう赤みが増した気がした。


「なあおい坊主――こういうのもあれだが、お前はよくがんばっていると思うぞ」


 訓練が終わったとき、先生が頭をガシガシと掻きながらそういった。


「そう、ですか?」


 嫌な予感がする。

 木にかけてあった白いコートを羽織りつつ先生はけどなと続けた。


「お前は俗に言う秀才ってやつなんだろうな、努力すれば努力しただけ強くなっていく」


「…………」


 間が空いた、沈黙だ。

 体感的には30分ほど、多分実際には2分かそこら――先生が気まずそうに口を開いた。


――言わせてはいけないと頭の中でこえが叫んでいる




「5年教えて、それでようやく分かった。

 お前に嬢ちゃん守るのは無理だ」




「お前が弱いんじゃあない、断じてだ。

 ああ、俺が保障してやるよ」

「なら――!」

「ならも何も無いんだよ、いいか坊主――いや神野」


「あの嬢ちゃんはな、天才だ。

 違うな、天才っていう枠組みにも入りきらない。

 強いて言うなら答え(・・)だ」


 実例をあげると、そうだな……と先生はいった。


「10段階評価の能力テストってのがあるだろう?

 あれはかなり優れているってところまで図るものであってそれ以上を図るものじゃあない。

 だからこそ(・・・・・)嬢ちゃんは今無名なんだろうけどな。

 それでも評価をつけるなら、だ。

 ああ、俺はてっきり嬢ちゃんは15段階とかそれくらいだと思ってた(・・・・)

 とてつもなくすごい、陳腐な表現だがそのくらいだと思ってた。

 秀才が努力し続ければいつかいたれるであろうくらいだと」


「あの嬢ちゃんはな、自分が異常なのだと理解できているから――それで加減をしているっていうのに15段階を取ってしまって(・・・・・・・)いるんだよ」


 そんなこと、ずっと前から知っていた。

 気づいていた、俺では彼女のいる場所まではたどり着けないということも。

 それでも面と向かって言われたく、気づかされたくはなかった。


 すぅと息を吸う。

 ゆっくりと吐き出す。

 思考する、思考する、思考する。

 答えは決まっていた。


「それでも、です」


 彼女を守るのだと。


「……ふん、ああそうだよな神野――いや坊主、お前ならそういうと思ってた!」


 はっははははは!と何がおもしろいのか先生は腹を抱えて笑っていた――殴っていいだろうか?


「ああ関係ない、関係ないよな坊主!

 男が女を守るのにそんなことは関係ないよなあ!」


 気に入った、いや違うな気に入ってたのだから目が確かだったとでもいうべきか?などど先生は訳の分からないことを言った後。


 ふむ、と不意にまじめな顔をして、


「嬢ちゃんの希望は崎守(さきもり)学園だったな?」


 確かにそこが第一希望だと聞いた。

 というよりも推薦ですでに受かっているのでそこにすすむらしい。


「なるほど……確かあそこは魔術師を育成する学校としては最高クラスの場所だ。

 10段階中8段階以上の高評価をうけるようなやつらが進むんだろうから評価の限度もあがるだろうな。

 14段階、15段階――細かい数値なんてものは知らないがまあそんなとこだろう。

 それが崎守学園の限界だ。

 ああ、だから坊主」



「とりあえず15段階になれ、無理とはいわないだろうし言わせない」



 俺はこくりとうなずいた。





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