Prologue End――考える
俺は考えていた。
清潔な保健室のベッドの中、カーテンで区切られたそこで天井を見上げて。
先ほど保険室にきた岬の言葉、そしてそれに対する答え。
――神くん、私なんかのためにがんばらなくていいのよ?
――岬はこういう言い方嫌いなんだろうけど、俺はさ、俺は、さ。
――そういう存在なんだよ。
そう言った俺の発言――それが果たして本当なのかと考える。
正しいか正しくないかなんてものはどうでもいい。
本当なのか?
俺の存在、たった一つの目的のため。
理解している、吐き気がするほど理解している。
どうにかしたい、けれど俺にはどうにも出来ない。
理解している、泣きたいほどに理解している。
あるいは自分が死ねば岬を救えるかもしれない――そう考えた、けれどそれは無理で。
だけど、同時に。
俺が岬を守る戦いの最中に死んでしまうことが岬にとって最も救いのある終わりなのではないかと、そう思う。
だから本当なのか?と思う。
何故ならば、
――――自分を、どころか校舎を囲んでいた魔力が消えた。
岬がやったのだろう、そう思う。
むしろ岬以外の誰かができる行為だとは思えない。
岬の体を案じると同時、もう一度思う。
何故ならば、霧島岬はだれよりも才能があり、俺が戦うよりも明らかなまでに勝率があるからだ。
守るなどとおこがましい。
ただの魔術師でしかない神野森人はむしろ守ってもらうものの立場だ。
何故ならば神野森人こそが霧島岬の弱点なのだから。
だからこそ、俺は自分を守れるだけの力をつければいい。
霧島岬のかわりに戦うなどということは自殺行為だ。
分かっている、分かっている上でこう思うのだ。
――霧島岬を守りたいと。
間違っている、こんなにも間違っている行動をとっているのにどうして俺がそんな存在だと言えるのだろうか。
本当なのか?
俺は本当に、
―――を――にして――――が――ために守る存在なのか?
思考してはいけないことを考えて穴だらけになっても考えた。
分からない、分からなかった。
両手を見る、治療魔術をかけてもらい、回復が促進されているとはいえ爛れたままだ。
痛い、本当に痛い。
けれど、それで分かった事がある。
どんなに痛かろうと辛かろうと、岬が苦しむよりはいいな。
それだけだ。
それだけで、ああ、とつぶやけた。
自分がどんな存在だろうと関係ない、目的も関係ない、正しいかどうかも関係ない。
どんなに痛かろうと辛かろうと、岬が苦しむよりはいいのだ。
それだけだ、それだけなんだ――そう自分に言い聞かせるように思考して、そういえばと思った。
授業は終了かな、と。
何故ならば、あたり一帯の魔力を岬が使い切っただろうからだ。
だからこそ彼女は時間ぎりぎりまでにここにいたんだろうなあ。
……少し、疲れた。
自覚すると同時、眠気がおそってくる――それに身を委ねて眠りに落ちる直前、俺は最後にこう思った。
――どうして俺が魔法使いじゃないのか、と。
タグに入れておいた魔法という言葉をようやく使えました。
神野と岬の間の関係の複線は今出すつもりのものは大体出し終えました。
想像できているかたもいるのかなーなどとおもいつつ感想をお待ちしております。
2万PV突破しました、ありがとうございます。