決着
――霧散し、体感時間が戻っていく。
――現状を把握する
左腕を振り払い、燃えていた炎を消し去る。
左手はもはや使い物にならないほどのダメージを受けている。
己の周りに残存する魔力も希薄。
だが、俺の勝ちだ――そう断言できる。
「……降参、してくれ」
なぜならば修介の周りの魔力は枯渇しているからだ。
移動するか暫しの時をまたなければ魔術は使えない。
そして俺は移動する時間も回復するだけの時間のどちらも与える気は無い。
「ハッ、拒否する――そんなしまらねえ決着は嫌だね」
ゲホッ、と口から血を吐き出しながらも修介は笑って続ける。
「アア、クソ……魔力がねえ……ハハハッ、なら最後はテメエの土俵でやってやらァ」
少しずつ、修介の周りに魔力が集まっていく。
――掻き集めている、のか?
収束させる魔力を広範囲にではなく遠距離のみから――俺にはできそうにもない。
その上で僅かな魔力では俺を倒せないと見切りをつけ接近戦、いい判断だ。
拳を構える――まだ終わっていないと。
「――身体活性化」
「――肉体強化を開始する」
後を追う形で詠唱、ここにお互いの手札は出尽くした。
周囲の魔力は完全に枯渇し、お互いが移動しなければ魔術は使い得ない。
判断する――当方は技量と強化魔術の完成度においてあちらを圧倒している。
だが、左手は使い物にならなく、打てたとしても力の無い打撃が精精。
結論――問題はない。
「来いよ、神野」
「……行く、」
ぞ、という言葉を置き去りにして加速した。
踏み込む、瞬く間に距離は0となる。
突き出される左拳――遅い、掻い潜る。
交差する――こちらは右拳を極限まで引いた状態で。
狙いは側頭部。
修介の視線――一撃はもらってやるという覚悟。
「甘い」
一撃で終わるとおもっているのか?
思考と同時拳を打ち出す。
狙い違わず側頭部を打ち抜く――硬い、流石だと思った。
轟音。
グラりと修介の身体が揺れ、だがそれだけだというように口を開き、
「――ハッ、耐え」
言い切れずさらによろめいた。
「な、に」
「だから甘いと言った!」
揺らしたのだ脳を。
これにより止まる時間は1秒程度――間髪いれずに鳩尾、心臓を穿つ。
――止まれ
呼吸を奪い、血を止めた――既に修介は死に体であるはずだ。
だがそれでも倒れない、こちらを力強い瞳で見据えている。
意志の力だろう。
ではどうするか。
思い浮かぶは一つの技。
打とう、打つべきだ。
判断は一瞬――いくぞ。
「霧島流近接格闘術――」
左手を前に、腰を落とし、右手を極限まで引き戻し、放つ!
胸部へと衝掌を打ち込み、衝撃を皮膚ではなくその内へ――!
「崩衝!」
全衝撃を修介の内部へと叩き込んだ。
内部破壊である。
先生曰く、これをうけてたっていられる人間はいない。
「ガッ……」
そして修介がゆっくりと崩れ落ち、こちらの肩へとしなだれかかった。
こういった感じの物語を書くのは初めてなので感想アドバイスをお待ちしています。