天才と異端
――距離を詰める!
静から動、構えを引き寄せて姿勢を前のめりにかえ一気に加速する。
こちらの武器は肉体のみ、故に接近戦にしか活路はないっ。
「ハッ、アメェ!――術式再演!」
現れる氷のつらら、数は3。
先ほどの魔術、だと?
「同じ魔術が通用すると思うなっ!」
叫び、だが修介の唇が釣りあがり、
「――再度繰り返す」
さらに出現したつらら――だと!?
新たに3、合わせて6かっ。
打ち砕けるかと思考する――瞬断、4つか5つが限界だ。
残ったつららが無防備な身体に直撃し、致命傷を受けるのは確実だ。
「――はっ」
呼吸を吐き出し、訓練を思い出す。
俺の霧島流近接格闘術の真髄――それは、判断だ。
判断をするのだ、避けるか、打ち砕くか、あるいは……
「――全弾を同時射出、穿て」
打ち出された6つのつらら。
射出地点と方向から判断する――狙いは胴体4と両手、かっ。
ならばと右へステップを踏み身を翻す。
4つの攻撃はよけたものと判断し、だが残るは2。
崩れた姿勢で打ち砕けるものではなく。
「おおっ!」
故に捌く。
胴に向かって飛来するつららを右手の甲で払い、左脇腹へ飛来したつららを左の掌底で押しのける!
一瞬の静止、だが止まってはいられない、前へ前へだ!
再度の加速。
距離がつまり残りは10。
修介の表情に浮かぶのは賞賛――だが同時にこれならどうよと瞳が告げている。
「――炎よ、在れ!」
浮かぶは1メートルほどの球体の火球――あの太陽の劣化か!
「――穿て穿て穿てエエエエエエエエエエェェェェェ!」
はや、い!
今度は速度を優先した魔術かっ。
体感速度はさきほどのつららの倍――避けられない、炎である以上は打ち砕けもしない!
「おっ、」
左足で大地を強く踏みしめ加速する。
両手を顔の前で交差し、さらに加速。
避けれない、撃墜できない、捌けない。
ならば最小限のダメージでそれ受けきる。
炎に最速で自ら突っ込み。
(ぎっ、)
抱いた悲鳴はそこまで続きは気合で押し込める。
――焼ける焼ける妬けていく、腕はただれ制服は燃え始め、だが、
――冷たい空気
交差した両手を解く――目の前に修介がいる。
構える――同時に殺ったと核心し、
「ア、アア!――大地よ!」
魔力の集中、悪あがきだと予想し――驚愕した。
魔力の集中した場所が俺だけでなく修介も含んでいるだと!?
驚愕は一瞬、俺と修介の中間に土の柱が生まれ、それが俺の突進を止め――同時に修介を後ろに吹き飛ばした。
「づうう、ア、アアアアアアアアアアア!」
こちらを見据え、衝撃で口から血を吐き出しながらも天才がほえた。
そうして気づく、驚きに飲まれて足を止めていたことに。
踏み出そうと地を蹴り、声が聞こえた。
――死んでも恨むなよ
瞬間、魔力が枯渇した。
「我熾すは灼熱、地獄、即ち我が敵を滅するもの――也」
生み出されたものは太陽。
理解した、不可避であり、捌けるものでもない。
突出してダメージを減らそうが死に至るだろう。
ならば、ならば、ならば、ならば、ならば――思考する、そして答えを導き出す。
「我望むはことを成す身体、払いし対価は己が未来――也」
イメージして告げる――周辺の魔力を吸い上げる、否、吸い上げ続ける!
身体に魔力を通し、左手を突き出し、大地を踏みしめる。
――とりあえず15段階になれ、無理とはいわないだろうし言わせない
太陽を見据えつつ、言葉を思い出す。
思うことは二つ、一つ目、現状を鑑みて思う、至れなかったのだと。
二つ目、未来を鑑みて思う、至るのだと。
なるほど、現在おれは修介に劣り、この状況に至る。
「……いくぞ、神野」
「……来い」
だが、俺はあれだけで15段階に至れると、そう思っていたか?
否だ。
冷静に判断する、修介が15ならば俺は13か14だろう。
前情報、戦闘経験がすくないないしは皆無であろう俺のスタイル。
それを差し引けばそんなものだろう。
「――穿て」
撃ち出される太陽。
見据え、思う。
これを凌駕すればいいのか?と。
――俺に許されたのは限られた種類の魔術、故にたった一つだけを鍛えた。
打ち出された太陽は速かった――速度において先ほどの火球と同程度であろう。
つまりはこれこそが正真正銘修介の全力だ。
――一瞬、一瞬だけだ。
それだけでいい。
万物に死をつげるであろう太陽が迫る。
「おっ……」
息を吐き出す。
「おおっ!」
つむぐは気合。
踏み込むは左足。
太陽を見据え、咆哮!
「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」
左、打ち出した一撃は神速――さきほどまでのいかなる攻撃をも凌駕し、太陽へと迫る。
魔力をこめられ打たれた拳は炎をも殴りつけ――瞬間体感する世界が止まった。
打ち放った魔力を吸い上げる。
拳を引き戻す――加速する。
左、加速、左、加速、左加速左加速左加左左左加左。
加速し続ける、同時に太陽がその存在を薄れさせていく、だが代償に太陽を殴り飛ばす拳が焼け爛れ否燃えていく――構わないと判断した。
――一瞬だけでいい、15を超越し16に至るのだ。
左、左左、左左左左、左左左左左左左左、左左左左左左左左左左左左左左左左左左、左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左、咆哮左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左左!
太陽が一撃加える度に揺らぎ薄れていく。
揺らぎながら薄れきった太陽を見据え、おおおっ!と俺は最後の気合をのせる。
大地を踏みしめ腰を落とし、己が体重と魔力をすべて乗せ右拳を打ち出す。
――この瞬間、神野森人は御堂修介を確かに凌駕した
戦闘にスピーディーさが無さ過ぎるorz
感想、アドバイスをお待ちしています。
なお投稿して5分ほどは誤字脱字を必死にさがしていたりしますorz
それがおわってから読んだ方がいいかもしれません。
また誤字脱字報告もお待ちしています。