天才――御堂 修介
その言葉に驚くよりも、むしろ後ろで聞こえた言葉に驚愕した。
――最高じゃねえか、オイ。
今聞こえた声は修介、か?
特徴的な声だというのに断言できない、それほどまでに声色が愉悦を表している。
後ろの声が続ける
「けどよ、信一さんよォ?
俺ァはっきりいって他人や校舎を巻きこまねえ自信がまるでねんだよ」
ちょっと!と本気であわてたように聞こえる由井の声。
あの馬鹿――わざと先生相手にさんと強調して挑発しやがったな!?
だが、信一先生はくくっと笑い、
「なるほど、お前が御堂 修介か。
ふむ、構わんよ? 好きに巻き込めばいい。
何、たかだか学生の魔術くらい俺が受け止めてやろう」
「はははっ、おもしろい冗談だな信一さんよォ。
俺の名前を知ってて言うってことは、何か、俺が実技試験の成績が歴代二位だって知った上でんなこといってんだな?」
……歴代、二位?
崎守学園は創立32年目である。
学生のなかだけとはいえ、実技だけの評価とはいえ、32年の中で歴代二位、だと?
思わず笑いそうになった――こんな良い偶然もあるのかと。
天才が目の前にいる。
「勿論だとも……と、何か勘違いをしているようだから教えてあげよう。
君は歴代二位ではなく三位だ」
「アア?」
「まあ私にとってそんなことはどうでもいいんだがな。
ふむ、では歴代三位君――全力で私に向かって魔術をうちたまえ」
「……ハ、ハハッ」
御堂 修介は笑う、嗤う、嗤う。
嗤いながら前へと歩み出て俺を抜き去る。
「ハハハハハッ!アア、ァァァァ!おもしれえ、おもしれえぞオイ!?
ああ、ここに来てよかった――――今まで化け物扱いされててよ、んなこといわれたのは初めてなんだわ。
だからお言葉に甘えて――文字通り全力でいくぞ?」
きたまえ、と声が聞こえた。
――魔術とはイメージし、魔力を周囲からかき集め、詠唱で具現化するものである。
ハッ、と嗤う声。
――瞬間、世界が変わった。
枯渇したのだ半径10メートルほどの魔力が。
ありえないという言葉が聞こえた、一つではない、複数、いたるところでだ。
魔術を唱えれば周囲の魔力は減る――だが枯渇などという現象は、10人ほどの魔術師が同時に魔術を唱えでもしない限りは起こりえない現象である。
この段階でだれもが理解しただろう――御堂 修介が天才であると。
「我熾すは灼熱、地獄、即ち我が敵を滅するもの――」
也、と詠唱は締められた。
御堂修介の掲げられた右手、そこに顕現せしは業火――それは球状で、赤黒く燃え盛る炎で、連想したそれは5メートル台に縮められた太陽だ。
「アァ、クソ……今更聞くのはだせえってことは分かってるけどよォ。
――本当に受け止められるんだな、生憎と直前で止めるなんて器用な真似はできねえぞ?」
「それは良い事だ……受け止めてやったのに、直前で止めてやったんだ!などといわれては敵わないからな。
ああ、それと一つ聞きたい事があるんだが、」
――そんなものでかまわないのかね?と嘲るように信一先生は言った。
「ハハはハハハハッ!…………、いくぞ」
「――穿て」
詠唱は一つ、太陽が撃ちだされた。
双方の距離は20メートルほど、一瞬――瞬く間にその距離は埋められ0になるだろう。
その一瞬で信一先生は魔術を発動させるところに至ったのだろう、周囲から魔力が引き出された――極少量が。
「――断絶する」
詠唱は一つ、起こりえたのは何かを断ち切ったという事象のみ。
それは決して太陽ではなく――思考する間に太陽が信一先生へと直撃。
「な、に?」
しなかった。
直撃する直前――何事もなかったかのように太陽が消失した。
「物理干渉のない炎で何をしようとしていたのかね?
なるほど、確かにそれは強力な炎だったとも――それは認めよう。
ああだが君は何か勘違いしてないかね?
マッチ一本分の火が付かないようにするのと、その炎が付かないようにするのに差があるとでも?
無い、違いは無いのだよ。
なぜならば酸素が無ければ火は燃えないのだから――ついでにいうのならば空気を介さなければ熱も伝わらない。
ならば空気を断ち切り、分かち、人工的に真空をつくればいいだけだろう?」
苦笑をしたい、何をどうすれば一言の詠唱でそんなことができるかが分からないからだ。
――ハ、ハハと修介の笑い声が聞こえ、そしてぴたりとそれがとまり。
「……なるほど、理解しました信一先生」
御堂 修介は橘 信一にそういった。
あれ主人公のバトルに入れなかった?
おかしい、余裕で入れる感じだったんです。
というよりこのバトルが予定より伸びすぎましたorz
というかバトルもなんだか失敗した感じで……多分そのうち書き直すと思います。
深夜のテンションって怖いですね。