入学式――この世界に、魔術に幻想はない
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「……あれ?先輩たちも学校にいくんですか?」
玄関まで降り、靴を履いていると向かいで斉藤先輩と結城先輩が同じように下駄箱から靴を取り出していた。
「ああ、俺も出席するこになっているからな――と、神野君と霧島君だったね?
よかったら一緒にいかないか?」
「え、と」
いいつつ岬の方を確認、岬はこくりとうなずいて、
「喜んで――ところでどうしてカバンをもっているんです?」
斉藤先輩がもっているのは学校指定の黒カバンである。
確か入学式で必要なものはなかったとおもうのだけれど、やはり上級生だと違うのだろうか?
いや、結城先輩は何ももっていない。
「少し、もっていくものがあってな……」
そういう斉藤先輩の顔に浮かぶのは焦り?
その後ろで結城先輩はにやにやと笑っている。
「まあ今更あがいても仕方ないよなー、なあ生徒会長どの」
はっははは、と笑う結城先輩。
対照的に苦虫でも噛み潰したような斉藤先輩。
……はい?
「あの、斉藤先輩は寮長じゃなかったんですか?」
ふむ、といつつ苦笑しながらも斉藤先輩が言う。
「寮長と生徒会長を兼任している」
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ではこれにてという言葉とじゃあなー後輩!という言葉をいただきつつ俺たちは分かれた。
当たり前のことだけれども先輩たちは新入生側にはこない。
それにしても驚いた、斉藤先輩が生徒会長だったことに。
いやそれ以上に驚いたのは結城先輩が副会長だったことか。(そう告げた結城先輩にあははーと冗談だとおもって笑ったら叩かれた)
「いきましょ、神くん」
岬の言葉に頷きつつ、体育館へと足を踏み入れる。
中を見ればパイプイスが規則正しく並んでおり、その大半がうまっている。
保護者と思われる方々もちらほらと見受けられる。
俺は一番後ろ、右側の席に二つ空きがあるのを見つけ顎でそたりをさした。
こくりと岬が頷き、俺たちはそこに座ることにした。
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しばらくして入学式が始まった。
静まり返る会場。
「――第32期崎守学園入学式を開幕いたします」
初老の男性が壇の上にあがり、マイクを通してそう宣言した。
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式は滞りなく進み、学園長挨拶へと進んだ。
壇へとのぼる初老の男性。
皺や白髪が彼を初老だと証明しているのにもかかわらず、俺はそれが信じられなかった。
黒いスーツ越しにも分かる引き締められた筋肉、背筋は伸び、眼光はするどく、そして、
「学園長の橘 功だ」
肉声で体育館中に深く響く声――それが彼が初老であることを否定していた。
(まるでスーツを着た軍人だ……)
暫くの沈黙の後、学園長は新入生の皆さんと続けた。
「この世界に、魔術に幻想はない」