323号室
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「ここが君たちの部屋だ、それと鍵はこれだ」
緑色の板に323と書かれた鍵を渡された。
ありがとうございますと岬と一緒に返すと、斉藤先輩はでは何かあったら下にいるので呼んでくれといって下へと降りていった。
「じゃあ神くんまたあとで」
「ああ、またあとで――と待って、入学式にいくのに何時ごろに集まろうか?」
「……そうね、食事も考えて12時30分でどうかしら?」
最近ではほとんど時計の役割しか果たしていない携帯電話を開き、時刻を確認。
11時であった。
「OK、それじゃ今度こそまたあとで」
「ええ、またあとで」
鍵を差込み扉を開ける。
ズッズッズっと床をこすりながら扉は開いた。
「……なんというか、殺風景だな」
扉を開けるとそこにはダンボールが三箱無造作においてあり、これは実家から事前に送っておいたものだが部屋の中にはこれしか俺のものがない。
他には物干し竿が窓側にあり、デスクがあり、ベッドがあり、クローゼットがあった。
どれも色は白く個性というものがない。
6畳ほどの部屋のはずなのにずいぶんと広く感じる。
「って、んなことよりも荷解きしないとな」
さてまずは毛布やシーツとかの大きいものを優先しますかね。
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「どう神くん進んだ?」
暫くすると岬が開け放たれていたドアの間から声をかけてきた。
「……んー、いくつか細かいものが残ってるけど大体はおわったかな」
答える俺、ふうと息を吐きダンボールの前で立ち上がりつつ時間確認。
12時15分だ。
「あれ少し早いな」
「ええ、でももう私荷解きおわっちゃったのよ」
「そっか……んーなら先に食事にしちゃいますかね」
いってダンボールの中を覗き込む。
さて、と。
「気にしないで作業を続けてくれていいのよ?」
「いや区切りもよかったし、どうも時間までに全部はおわりそうになかったからね」
「そう、ありがとう」
努めて岬の顔をみないようにしながら俺はお目当てのものを手に取り、岬に訪ねる。
「こちらの乾パンでよろしいでしょうかお嬢様?」