prologue
「……合格してるぞ、おい」
俺こと神野 森人はそう呟いた。
校舎の玄関口に張り出された合格発表者一覧を二度確認し、いやそれでも信じきれなかったので三度確認し――ようやく本当に合格できたのだと確信できたときにはガッツポーズをとっていた。
「いよっしゃあ!」
――俺はやりましたよ先生!
瞳を閉じて強く拳を握り締め感慨にふけっているとトントンと肩を叩かれた。
「神くん神くん、あのね?」
振り返ると頬をほんのりと朱に染めてはにかんで笑う幼馴染の霧島 岬がそこにいた。
「公衆の面前で恥ずかしいから死んでくれない?」
訂正しよう。
振り返ると(罵倒された結果落ち込む俺を予想し)朱に染めてはにかんで笑う腹黒幼馴染の霧島 岬がそこにいた。
「……ん、んっ」
軽く咳払いをし、引きつりながらも微笑んで返す俺。
ご、合格できたんだし多少の暴言には目をつむろうじゃないか。
「その表情気持ち悪い」
笑顔のまま毒を吐かれる、当方引きつった笑顔のまま固まる。
「あ、ははー」
漏れ出した笑い声のなんともまあそらぞらしいこと。
「……あ、そのごめんなさい」
と、突然岬が笑顔を曇らせ、本当に申し訳なさそうに言う。
整った容姿――というよりは大人の容姿だろうか――をした岬が申し訳なさそうに表情をゆがめるのは、正直いってほんの少しドキリとした。
「表情じゃなくてそもそも顔が気持ち悪いわ」
「ポニーテール引っ張るぞこの野郎」
「ご、ごめんなさいっ、でも私嘘はつけなくて」
さきほどの表情はどこにいったのやら、口の端を吊り上げてしつつニヤニヤと笑う岬。
ああくそ――――その表情が苦痛どころかむしろうれしいと思える俺がいやになる。
なぜならすべてこれは、
「……頼むから照れ隠しはそれくらいにしてくれ」
「あら、やっぱり分かる?」
「わからないでか、だってさ」
『幼馴染だから』
ポリポリと頬をかきながらいった俺と、
満面の笑みでそういった岬と、
数秒見詰め合って、やがてどちらともなく右手を上げハイタッチ。
――これからもよろしく、と互いに言った。
「ああ……言い遅れたけれど、合格おめでとう」
さあ、学園生活の幕開けだ。
初投稿です、どうかよろしくお願いします。
感想お待ちしています。
あ、私は短めの文書でこまめに更新するタイプです。