表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/142

第1章⑧:チーム「BE-COOL」結成

 閉店間際のVelforia。

 先ほどの騒動で客のほとんどが帰った後のフロアは、どこか寂しげな空気に包まれていた。


 清掃スタッフが散乱したグラスの破片を片付けている横で、三人はVelforiaの支配人に感謝されていた。


「本当に助かりました」

 支配人は深々と頭を下げる。

「あなた方のおかげで、被害が最小限で済んだ」


 クインシーは得意げに胸を張る。

 その表情には、どこか企みめいたものが潜んでいた。


「照れるなぁ。でも俺たちのチームワーク凄かったよね?ハロルド、お前とならいい相棒になれそうだぜ」


「いや、たまたまだよ」

 ハロルドは照れくさそうに頭をかく。


 しかし、その表情には微かな自信も窺えた。

 工房での作業とは違う領域で、自分の判断力が役立ったという事実が、ハロルドの中で新しい自信となったのだ。


「たまたまじゃないわ」トリアが優しく微笑む。

「ハロルドって、本当に困ってる人を見ると、黙ってられないタイプでしょ?」


「そう!それだ!」

 クインシーが突然、大きな声を上げる。

「それだよ、トリア!」


「え?」

 ハロルドとトリアが同時に首を傾げる。

 フロアの照明が暗くなり始め、掃除スタッフの姿も見えなくなっていた。


「俺たち、このコンビネーションを活かさない手はないよね?」


 クインシーの目が輝きを増す。


「ハロルドの冷静な判断力と俺のアクション。これって正義の味方にピッタリじゃない?」


「は?正義の味方?」

 ハロルドは半ば呆れたように言う。

「お前、歳幾つだよ」


「いいじゃん!」

 クインシーは二人の反応も気にせず、勢いよく続ける。


「今日から俺たち三人で、チームBE-COOL(ビー・クール)の結成!」

「BE-COOL?」


 トリアが困惑した表情で繰り返す。

 その響きは、どこか子供っぽくも聞こえた。


「そう!常にクールであれ!BE-COOL!」

 クインシーは得意げに説明する。

「かっこいいだろ?このネーミングセンス!」


「はあ?」

 ハロルドは開いた口が塞がらない。

「お前、本気でそれかっこいいと思ってんの?」


「もう、ハロルドったら」

 トリアが思わず吹き出す。

「でも、なんだか楽しそうじゃない?」


「トリア、お前まで……」

 ハロルドは溜め息をつこうとしたが、どこか楽しそうな表情を隠せない。


「よーし、決まりだな!」

 クインシーは二人の反応を肯定的に解釈したようだ。


「これからは俺たちBE-COOLで、この街の平和を守るぞ!」


 真夜中のVelforiaに、クインシーの声が響く。

 ハロルドとトリアは呆れながらも、なぜか微笑んでいた。


 半ば強引に、しかし不思議と自然な形で、三人の新しい活動が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ