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10話 バンドメンバーと紫葵の出会い

 私達は夜が濃くなる前に解散した。

「ねぇ白夜?葵は自分で姿を消したんじゃないかと思うんだけど、なんでだろうね」

「さぁ僕に言われてもね。日記には書いてなかったんでしょ?」

「うん」

「人の悩みなんてわからないよ。僕たちは他人にはなれないんだから。でも僕は早く葵が見つかるといいと思ってるよ」

 白夜はそう言って私の頭を軽く撫でた。

 

「ねぇ君暇なの?」

 またしても現れた木澄に若干引いている。

「もう夏休みなんでね」

 カレンダーを見ていなかったが、もうそんな時期なんだ。

 

「夏っていえばかき氷だよね〜」

 木澄がなぜかバンドメンバーを集めお疲れ様会を開いた。

「君関係ないじゃん。ってか誰なのよ」

 胡蝶が木澄に向かってストレートに言った。

「まぁまぁそこは置いておいて。みんなのかき氷揃ったしお疲れ様〜」

「う〜んおいしいわぁ〜」

 彩芽が一口食べて余韻に浸っているなか、胡蝶は携帯で写真を撮っていた。

 私と木澄くんと琥珀くんはその差を見ながら静かに食べ進めた。

「みんなに葵との出会い聞きたいんだけど」

 私が話をふると、胡蝶が我先にと話し始めた。

「お姉様と出会ったのは、お姉様が路上で弾き語りをしていた時です。お姉様の声は凛としていてでもどこか悲しそうでその時ちょっと苛ていた胡蝶は心が安らぐのを感じました。だからお姉様が弾き終わるまでずっと聞いていましたわ。私はピアノが弾けたので今度一緒に弾きませんかと言ったら、それならバンド組もうという流れですわ。それから私は」

 話が長くなると踏んだのか、彩芽が遮った。

「わたしの場合は、葵さんがどこからかドラムを叩いているのを聞きつけて、声をかけてきたんです。特定のバンドに所属していなかったのですが、葵さんの熱意にやられてOKしたんですの」

 琥珀くんが続けた。

「ボクは同じ施設にいるのですが、落ち込んでいる時に声をかけられました。本当はギターの方が得意なのですが、ベースがいた方がバランスがいいわと言われベースを押しつけられました。あっ別に恨んでるとかはないです。むしろベースの楽しさを知れたので良かったなと思ってます」

 それからスタジオに集められてバンドを組むことになった。バンド名も曲も全部葵さんが用意していた。練習場所についても葵がコネで安く1年借りたのでお金がかかることを気にすることなく練習することができたとのことだ。そしてライブは主催者へお金を払うことになっていて、客を集めなければいけないが全て葵さんが集めてきていたため、呼びたい人がいれば呼んでいいよと言われていたとのこと。

 葵にそんな行動力と知り合いがいたのだろうかと疑問はあったが、彼らもわからないとのことだった。それなら私にもわかるわけがなかった。日記にも集客については特に記載なんてなかった。

 彼らにも葵がいなくなる前おかしな様子がなかったか聞いてみた。

 しかしみんな変わった様子はなかったと一様に首を横に振った。


 あぁーわかんない。葵は何を悩んでいたの。もしかしてどこかで子供妊娠した?……いやさすがにそれはないか。学校以外に部活とバンドと忙しそうだし、そんな余裕ないはず……。

 葵の謎の人脈的に絶対とは言い切れなかった。わたしの知っている葵なら絶対そんなことはないと断言できるのだが、今の葵の姿があまりにわたしの知っている葵とは違うためなんとも言えなかった。


 白夜の家でどうしようかと頭を悩ませていると白夜に聞かれた。

「いつまでこっちにいるつもりなの」

「……」

 両親と揉めたばかりである。でも今後の進路のことも何もかも親がいないといけないのではないだろうか。昨日の今日でこちらから折れるのは違う気がした。そもそも葵のことで完全に悪いのは両親なのだ。私は話題を変えた。

「白夜ってどうして1人暮らししてるの?」

 これはずっと気になっていたことである。家に泊めてって言ったのは私だが、実家に住んでいると思っていた。

「別に」

 聞かれたくなかったようだ。

「お父様とお母様はお元気?」

「……さぁ?」

「さぁって最近会ってないの?」

「あぁ大学生なんてそんなもんだろ」

 その時は純粋な気持ちで聞いた質問だったが、後々白夜の両親がすでに離婚していることを知った。

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