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炭酸が抜けていく

前回のあらすじ


今水さんの仕事を手伝って、良好な関係に戻れた僕は、彼女からもらった缶ジュースを僕を虐めるやつらに奪われてしまった。


 市村加戟(いちむらかげき)は中学時代の同級生で昨日僕とぶつかったやつだ。

それと今村亮太と松浦成喜、その側近みたいなやつだ。

僕はあいつらを許してしまっている。


 そんな中、僕の携帯がブルルと震える。

昨日、あの婚活アプリを開くと、僕の評価は2.9まで上がっていた。


また、前回のような六人グループの参加は一旦やめることにした。

普通に2回やってて、一人も可愛い子が来なかったからな。


 次に挑戦するのは1対1。婚活デートにすることにしたのだ。

今の通知を確認すると、どうやらマッチングしたらしい。


まぁそれも、昨日までの話だ。


          20:38


「一対一」の相手:美莉菜さん


美莉菜:こんにちは! マッチングよろしくです!!✨



カタカタカタカタカタカタ



          20:38


「一対一」の相手:美莉菜さん


美莉菜:こんにちは! マッチングよろしくです!!✨ 既読


洋太:僕みたいなゴミクズに関わるな



美莉菜:は?どうゆうこと? 既読


洋太:そのまんまの意味だ。話しかけるな。 既読


美莉菜:どしたの?話してみなよ。 既読


洋太:お前には関係ない。話しかけんな。 既読


美莉菜:分かった!じゃあ君が時間あるときにまた話そうよ! 既読



なんだこいつは。なんでこんなに引き離しているのに会話をやめようとしないんだ?

優しさだけのブサイクか。


 そう思うと、僕はスマホをベットにポイと投げた。


僕に2.9の価値などない。 ……明里(あかり)……。


 その日の夜は泣いてしまうような月が見えた。

治療の湿布を触り、横向きに縮こまって眠りについた。



 その翌日だった。

学校に着くと、朝からワイワイと今水さんの周りは賑やかだった。

だが、少しの違和感を感じた。


彼女が首を振って隣の友達を見る際に、目が合った彼女は黒目でロボットのような顔をしていた。

でも、友達の方を見るといつもの笑顔の今水さんに戻った。


朝のホームルームのときも一番前の窓側の席の僕に強い視線を送っていた。



 授業が終わって、トイレに行っていた僕が教室に戻ると、今水さんだけがポツンと残っていた。

僕はその背中を通り過ぎ、自席の荷物を掴むと、今水さんが話しかけてきた。


「ねぇ、洋太郎くん」


「ん? どうしたんだ?」


「私のあげた缶ジュース飲んでくれた?」


僕は彼女の方向を見ずに、嘘で誤魔化した。


「あー本当にありがとね。僕、あの味めっちゃ好きなんだよね」


「嘘でしょ」


そもそもこんな質問がおかしかった。

なぜ、わざわざあげた缶ジュースなんかの感想を求めようとしたのか。


「私、廊下に出たときに踏み潰された缶ジュースを見たの」


拾っていたのはあいつらじゃなくて、今水さんだったのか……。

今すぐ弁明をしようとした。だが次の瞬間、


「ねぇ、ほんとっっっっっっにキモいね」


「え?」


声すら、出なくなってしまった。


「ただでさえ、あんたみたいなんかと関わってあげてんのに、『自分は関わりたくないですって?』」


何を、、言ってんだ、、、……。 、、、今水さんは、、こんなこというはずが、、


「本当にクズだったのね。だから嫌われてんのか。最低野郎」


その瞬間から彼女のことを見られなくなって、ただ地面を眺めていた。

彼女がいつ帰ったのかも知らない。


「僕が悪いのかよ」


僕が市村に怯えたからか? 怯えることの何が悪い。

今日も明日も昨日も、誰だって人というのは何かに怯えてんだろ。


僕の唯一の味方だったのだぞ? 昨日までは普通に喋って、接してくれて……。

いや、彼女は最初から僕を利用してただけじゃないか。


僕は誰よりも弱い人間なんだ。

昔から、調子に乗るとすぐに怪我をする。


だから、いつもは行動を控えていた。

嬉しいときも悲しいときも、楽しいときも、怒っているときも。

感情は見せなかった。表には出すことがなかった。


だから、、道化を演じてきた。

わざと、感情を呼び起こし、痛い目を見るというエンタメ。

婚活もそうやって、人々に見せるエンターテイメントにしようとしていた。


でも今水さんと出会ったのは僕のキャラが変わるときだと思った。

彼女がヒロインで前田が主人公でもいい。でも友達役の一緒に幸せになる存在になりたかった。


そんなのは僕から見た考え方でしかなかった。




「君! なんで泣いてるのよ!」


出会いは突然だ。

今やマッチングアプリなどで簡単に得れるものかもしれないが。

運命。まるで前世でも在ったかのような奇跡の出会いというものがある。


これには僕にも分からない。

どこからが運命なのだったかについてなんて。



「まったく! 早く立ちなさい!!」


「君は……」


「「月葦見兎…(よ!)」


「なんだ。名前を知らないのは私だけだったか」


「どうしてここに……」


「別に君を助けるためではないぞ? たまたま通りすがっただけ。君の名前は?」


当然、彼女の目すらも見れなかった。


「…………あなたも僕が醜いと思いますか?」


「ん? 私は君のこと知らないけど」


醜いと思うね


「やっぱりそうですか。では」


「私が言ったのは容姿ではない」


ー「君のその心だ」ー


「なんですか? 急に」


「そうやって絶望していく人間を私は見たことがある」


……。


「だいたい、少し自分に自信があるやつで、今まではその自分に頼っていた。だが転機が訪れた。

自分は他の人より劣っていて誰もが君の能力を否定した。そうやっていって、崩れていった」


「あなたに何がわかるんですか?」


「違うよ。私は君を知りたいんだ」


さて、もう一度聞く。


ー「君の名前はなんていうんだ?」ー



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