お祖母ちゃん、VRMMOで余生を謳歌する! 外伝Ⅱ 『ツバメ』
お婆ちゃん、VRMMOで余生を謳歌する!の外伝です。
1話完結です。
ツバメとハルさんの出会いの話です。
あれは、まだ私が1人で『NLF』を遊んでいた頃だった。
義父が取引先の方から頂いた、世界初のフルダイブマシン『ガイア』。そして、同じく世界初のフルダイブVRMMOゲーム、『ニュー・ライフ・ファンタジー』
私は現実の様に身体を動かせる『NLF』で初めてゲームという物にのめり込んだ。
現実で全力を出せば驚かれ、気味悪がられる忍びの力も技もこのゲーム、『NLF』の中では素晴らしいスキル、身体能力としか見られないからだ。
私は他のプレイヤーに比べたらレベルは低かった。ゲームも殆どしてこなかったので、知識も少ない。しかし、忍びとしての経験が他者を圧倒していた。
第一異界、第二異界とソロで戦っていた私だったが、その第二異界の途中でとあるパーティに懇願され一緒に行動した事があった。
第二異界、第七階層。中央の街『ネデリナ』から東に進み、東の町『ナエルナ』から南東の大きな森を抜けた先にある沼地にボス【グラプス・リーパー】が居た。
このグラプス・リーパーを倒す為に手を組まないかと言うことだった。
一緒になったパーティのリーダーは慎重な男で、全員の装備を整えていたが私は何時も通り。
ランクアップした蟷螂の小刀と初心者セット雑じりのデザインがちぐはぐな防具だ。
武器は攻撃力より斬れ味を優先した。防具は手持ちの素材で作れる物を適当に作った所為だ。
本来は付属するスキルを考慮して、装備を揃えるらしいのだが私は其処をあまり気にしなかったのだ。
リーダーの男性に言われて、初期装備のままだった防具だけ新調して、私達はボスに挑んだ。
準備は万端、私以外は装備も弱点属性の武器とグラプス・リーパーの水属性の攻撃に耐えられる様にと防具も揃えたのだ。
それでも、私達は苦戦した。いや、苦戦したのは私以外のメンバーだけだった。
グラプス・リーパーの攻撃に対しての反応と対応が遅かった。何よりレベルが低かったのだ。
余りに動きが悪かった事に驚いていた私は、仲間が2人やられた所で連携するのを止め、1人グラプス・リーパーの攻撃を躱し、攻撃を与え、最後にはたった一人で倒した。
「ツバメすまん、俺達・・・」
「いえ、私も助かりましたから」
これは嘘だ。私はこの時何一つ仲間に頼らなかった。連携を無視し、ただ自由に戦った。それはパーティでは無くソロの戦いだった。実際流れ弾で1人死に掛けた。
流れ弾を受けた女性プレイヤーは「大丈夫、私がちゃんと出来なかっただけだから」と言っていたが、目はそうは言ってなかった。
正直この時の私は他のプレイヤーをお荷物に、ううん、見下していたんだと思う。
私は自分が力を隠す事無く技を使える事が嬉しく、御爺様から受け継いだその力を認めてくれるこの世界(NLF)が楽しかったのだ。
自分では気が付いていなかったが、その力を連携という名の鎖で縛られるのが嫌だったのだ。
これ以降、私は勝手に他人と一線を引いていた。
誘われればパーティも組んだが親しいフレンドは作らなかったし、パーティにも入らなかった。
そんな私が1人、まだ来たばかりの第三異界の第三階層でピンチに会っていた。
たかがゲームと侮っていた、自分の身体能力を遺憾無く発揮出来るのなら、御爺様から受け継いだ技を遺憾無く使えるのなら、こんな遊びぐらい一人でクリア出来ると。
がだ、その考えは甘かった。人外の化物を相手にした生死を掛けた戦いに私の技や身体能力だけでは事足りず、私はそれがゲームで有る事も忘れ怯えたのだ。
「この!」
小さな子蜘蛛の群れから逃げながら、私は始めて敵に悪態を吐いた。
森の中、直径が3m程もあるクモの巣に絡まっていた小さな妖精を助けようとした。
すると木の影からわらわらと子蜘蛛が現れて、あっという間に囲まれてしまったのだ。
子蜘蛛といってもお腹だけでハンドボール位の大きさがある。
『リトル・トラップ・スパイダー』
ただの子蜘蛛数匹なら問題なかったのだが、軽く50を超えるその数と強さに悪戦苦闘していた。
最初、無策にも飛び掛ってきていた時はまだ良かったのだが、途中から糸を飛ばしてくるようになり、近付いてこなくなった。
(火遁でも使えれば・・・)
私は一旦距離を取ろうと茂みに飛び込んだが、それが不味かった。
「わっ!?」
茂みを抜けたその先に別の蜘蛛の巣が有り、迂闊にも私は蜘蛛の巣に捕まってしまったのだ。
「そんな!?」
右腕と上半身は蜘蛛の糸が絡み動けない。無理に動けば更に絡みつくだろう。
私は後ろに下がりこれ以上絡まないように蜘蛛の巣を引っ張った。そして、残った左腕で小刀を抜くと蜘蛛の巣の糸の縦糸を切る。
が、2本切った所で私は回りに集まった子蜘蛛の群れに始めて恐怖した。
私の身体を数匹の子蜘蛛が這い回り、周りにいる40匹程の子蜘蛛が私に糸を巻き付けていく。
私は無駄だと頭で理解しながらも、どうにか抜け出そうと抗った。抗ったが状況はどんどん悪くなる一方だった。
これがパーティーなら仲間に助けて貰えたのだろうが。
そんな泣き言が頭に浮かんだ時、足に傷みが走った。
圧迫感と2箇所の痛み、かまれたのだと頭は冷静に判断し、バーチャルだと分かっていても心は恐怖に刈られた。
もうダメだと諦めの心が侵食され、知らず知らずの内に涙が滲んでいる。
ライフゲージがゆっくりとだが確実に減って行く。
ツバメが冷静に対処すればステータス表示にドクロマークが確認出来、毒状態だと知れたのだが。
そんな冷静さは既になく、バッグの中の解毒剤に思考が向くことは無かった。
そもそも、もがき苦しむ事で更に糸が絡まり身動きが出来なくなっていたのだ。
(なんて無様な・・・)
更に噛まれて、ライフゲージの減る速度が上がる。
もうダメだと思った時私は1人の少女に助けられた。その少女はたった1人で私が敵わなかった怪物を倒し、蜘蛛の糸から私を解放して、更に解毒薬と回復薬を呑ませてくれたのだ。
そして、微笑みながら私に手を差し伸べた。
理解出来ない感情がチクリと胸を刺した。
「大丈夫かな?」
私はその時涙を流していたのだろう。ゲームと分かっていても初めて命の危機に怯えてしまい、動けなかった自分を恥じた。
そして、目の前で手を出したまま困っている少女に、私は何か親近感の様な物を感じていた。
私を落ち着かせようと、色々話をしてくれているその少女はパーティ強化の為に、新戦力を捜しているとも話していたので私は、自分を大いに売り込んだ。
戦闘スタイルはその女性と被るがそんなのはどうでも良い、いやそこが良い!私はその人に付いて、色々と教えて欲しいと、そしてその人の事を知りたい思ったのだ。
年の頃は私より幼く見えるが、アバターの外見なので当てにならない。
そんな事よりも私を助けた時の美しい動きに私は魅了されてしまったから。そして、自分もあんな風に戦いたいと。
私はその少女の参加しているパーティ【春雷】のメンバーに紹介され、【春雷】入れて貰い、その少女ハルさんを自然に師匠と呼ぶ様になっていた。
パーティの皆はとても仲良く、師匠の親族らしいリーダーのシンさんやオズさんを始め、皆さん良く訓練されたプレイヤーさんだった。
身体能力は素人だったが、ゲーマーとして優秀だったし、連携が素晴らしかった。
ただ、その中でもハルさんの動きは別格で、ハルさんの事を忍者と呼んでいる人達がいると聞いた時は流石だと自分の事の様に嬉しくなった。
ただ個人の動きがどんなに良くてもゲーマーとしてはまだまだらしく、偶にシンさんに注意を受けているのが少し腹だたしくも有り、面白くも有った。
そんなある日、他のクランからの依頼で【春雷】は現状最も難しい敵の1つと戦う事になった。パーティの人数制限と戦力バランスから私が外されたのは、正直残念で少し悔し、いや、かなり悔しかったが、イレギュラーが有ったにも関わらず皆が無事に敵を攻略した時は本当に自分の事の様に嬉しかった。
私もいつか師匠と一緒に強敵と相対したい、今回の様な大きなイベントでパーティーに貢献したい。
「そう、いつか皆と・・・本当の仲間と・・・」
其の為にも私は、今シンさんとハルさんに連れられて新しい装備の為に、未開のエリアに足を踏み入れるのだった。
お疲れ様でした~!
最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。
まぁ、無理せず楽しんで書いて行きますので、気長にお付き合いしてくれたら嬉しいです。
それでは、また次回作で。
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